紡がれる世界に祝福を

私は赤毛の彼の家へ向かった。

「はじめまして。ブルルガン様の館でしょうか?」

「…はい。」

窶れた顔をした人々。

「私はアルテミス。あの人の、奪の、妻となったものです。」

「奪、妻…!!あんたアクアリウムの姫様か!!」

静かに頷いてみせると泣いて喜んだ。

「あの人は海に還りました。私を、庇ったせいで…。本当に、ごめんなさい。」

「そんな、我々はあなたを利用しようとしただけです。謝るなんて、とんでもございません」

あの日からずっとつけているガーネットのイヤリングを見せた。

「最期の時に、交換したんです。」

「…それは、船に乗る前にやったやつだ。」

赤毛の男が現れた。

どこか、彼に似ている。

「奪の父。サーフラーと申します。」

「サーフラー様。あと人と同じ赤毛の髪なのね。」

もしも、あの時私が動かなくて、奪と無事に戻れていたならば…。

サーフラー様と同じような姿になる彼と共にいたのかしら。

「彼を、本当に、愛していただいたのですか?」

「はい。とても。」

あっ。

涙を流してしまった。

それ以上に気がついてしまったことがある。

涙を拭うその指が、

あの人の指みたいで。

「だ…つ…。」

思い出したらダメなのにな…。

「本当に、愛していただいたのですね。」

優しく笑う顔。

本当に彼そっくりで。

「彼を、愛してくれた人があなたでよかった。」

止まら、ない…

「今だけ、泣くことをきっと海鳥は許してくれるはずですよ。」

「あぁ、奪、奪!!!」

ここに来て、初めて私は普通の少女に戻った気がした。









そして、私はアクアリウムに帰った。

もう人はいない。あと80年もすれば神殿とか言われそう。

私はそんな故郷を横目に深い森に入っていった。

兄と入ったこの場所。

名は、回復の泉、宝石の泉、月夜の泉、不死の泉などなど。

月の形によって泉は姿を変える。

三日月の夜は命無きものに意志を芽生えさせ

半月の夜は会いたいものに思いを届け

満月の夜に願いは叶う。

今宵は、新月であった。

新月は真の泉の姿を見せる。

私は特に何も考えず泉に入った。

泉の底は深く、水は冷たい。

どこまでも落ちる。

彼らの最後はこんな感じなのだろうか?

そう思っていると底に見慣れたものがあった

軍艦海鳥、又の名をノアの方舟。

それに吸い込まれるように落ちる。

そこで、見たものは

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