お前は、何を貰った?

2人が船の外に出て行った。

ラニアはまだ笑ってる。

「…龍。」

「イキタイイキタイイキタイイキタイ」

壊れてしまった。

「ワタシハアノヒトニアイタイ」

「お兄ちゃん」

「ベータ。」

兄弟が駆け寄った。

彼に蒼氷は祈り、一時的にエラーを落ち着かせた

「俺だけ、帰れなくなるのは、嫌だ!!」

「大丈夫だよ。兄さん。私、治すよ!!」

アルファは、超能力を使い俺とラニアを動かなくさせている。

「なん…で!?どうして治らないの!!」

「やっぱり、俺がロボだからだ。」

ロボだから。

そう何度も呟く。

「人造人間でも改造人間でもないんだ。俺は、俺はただの…」

「やめて!!兄さん!!」

アルファも叫んだ。

「ただの、無機物じゃないか。」

顔を引っ掻く動作をした。

「こんなことやっても痛みだってないし、血も涙もでない。ガードデータを外さない限り、感情も無い。」

動かない胸に手を置く。

「鼓動もない。」

兄弟ふたりは泣き始めた。

「兄さんは…生きてるよ!だから…」

「それなら何故!!」

めを、赤くしている気がした

「何故俺は命あるものしか治せないお前の力が効かないんだ」

2人は無言になった。

ベータは…あぁ。

なんて、美しい笑顔なんだ。

「お前達だけ、帰るなんて、ずるい。」

「兄、さん?」

うるさかったエンジン音が小さくなった。

「お願い。これを、父さんの元に。」

ハーフアップにしていた髪の毛を解いた。

アルファの手に結んでいた髪留めを渡した。

「これ…メイン装置じゃないか。」

「父さんに、1人にして、ごめんって…」

言ってくれ。

その声は人に届くことは無かった。





あぁ。

俺はなんでここに居るんだ?

人を殺すためだったか?

いいや。

守るために乗ったんだ。

誰を?

兄弟、姫。

あと、

そうだ。

仲間を守らなくっちゃ。

その為には。

犠牲が必要になる。

アルファの力が弱まったところでラニアの元へ向かった。











ああ。

面白いな。

弾が当たるだけで倒れるんだもの。

機械であれ人であれ、死ぬポイントは同じなんだ

アハハハハハハハハ!

ねぇ、トラップ。

あの二人もやっちゃおうよ!

アハハハハハハハハ!アハハハハハハハハ!ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!

ねぇ、ねぇ!!

トラップ…

ヴア”ァ!!!




「すまない、ラニア。俺はこれしかお前を救う方法を知らないんだ。」

「ア”ァ…イギィィィ」

痛いよな。

痛いよな。

でもこれでもう。

お前の罪は、なくなる。

「吸血鬼だからってもう、人を殺す必要はないんだよ!!」

胸に刺さっている刀はもがく度傷口を広げ苦しくしているるようだ。

「オマエモカァァァ!!」

その顔は、もう人の顔ではなかった。

刀を胴体に挿したまま、可哀想であったが、窓の外の海の下に投げ込んだ。

あれはもう助からない。

助けられないからだ。






「兄さん!!」

「…黒蝶。」

片目の色を変えた弟。

あぁ。

ごめんな。

「頼む、俺を…」

「嫌だ!!」

…‼

「黒蝶、頼む。」

「なんで!?なんで兄様まで、俺の手で…」

4色の目がこちらを見た。

「俺の手で殺さないといけないんだよ!!」

アルファ達もラニアを海の外にだして驚いていたのだが、それ以上に黒蝶の泣き叫ぶ姿に驚いていた

普段ベータより無口な、死んだ目を持つようなやつが、

泣き叫んでいるのだ。

「白蝶も殺してこれからどうしようって!兄様に話して、いっその事殺してくれって言おうとしたのに…!」

黒蝶は、泣きじゃくっている

ああ、俺は。

「どうしてっ…」

「お前は、白蝶から何を貰った?」

あの時のような優しい兄さんになれないけれど。

「白、蝶?」

「そうだ。その目から、何を貰った?」

白蝶が、耐えられたなら俺だって…

覚悟をして右目を取り出し黒蝶に飲ませた。

「う…がっ!!」

「飲め。」

涙を流しながら無理やり飲み込ませた。

目の色が変わる。

左に白蝶

右目に黒蝶

両目に淡水

全ての色がぐるぐる変わる。

「お前にしかもう、これは出来ない。」

頭をポンポンなでる。

「兄、様…。俺。」

あたたかい涙が頬を伝う。

「俺、2人から、大事なもの、貰ったんだ。」

初めて見た。

黒蝶の優しい笑顔。

初めて知った。

家族のあたたかさ。

初めて感じた

少しだけの恐怖。

「俺、白蝶から、涙を教えてもらった」

泣くって恥ずかしいことじゃないんだね。

照れくさそうに話した。

からっぽの目に瞼の上から触れられる。

「兄様からは、正しい愛を教えてもらった」

瞼にキスされる。

「これが、正しい愛だったんだね。」

右目から温かなものが流れた。

それは、血なのだろうか?水なのだろうか?

「2人のおかげで俺は、純潔になり、俺に欠けていたものも集まった。」

弱い腕力で抱きしめられる。

「兄、様…」

「…。」

無言で愛を受け止めた。

2人で静かに震えた。

「あなたを殺すことが愛ならば、俺は、あなたを殺しましょう。」

「それをお前の罪にならないように地獄の門番に話してやるよ。」

龍の血筋から最期の挨拶は決まっていた

「Adios mi hermano」

「Adios mi familia」

愛に充ちた刃は少し、ほんの少しだけ

痛かった

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