人形

「何故、あなたを倒さなくてはいけない?」

「お前がサイールに付いた。それだけ。」

光り輝く目を持つ人。

その後ろには青髪の青年。

あきらかに、形勢不利。

強くても、負ける。

だけど。

こいつらに少しでも爪痕残せば

あの子は喜ぶ。

「知って、いますか?」

「何をだ?」

こいつらにも残してやる

「この船が、誰に作られたか。」

破損したデータのバグは酷かった。

精神システムの暴走により、言葉が出てくる。

「私の博士が作りました。4億年ほど昔。無の神も共に。」

目の前の奴らに博士よりも辛い気持ちを。

「私の博士は、不老不死なんです。」

彼が私の開発の時に言っていた言葉を思い出す。

「博士は自分の死の実験をしてるんです。」

お前は壊れるな。

「この船旅で100人の生贄が揃うんです。」

お前は狂うな。

「これで博士は死ねるんです」

俺より先に。

「博士の名、わかります?」

死ぬな。

「ノア。この船の名は、ノアの方舟。」

だから。

「…悪しきものは食べられなければ。」

リンゴを食べたのは。

「私の本来の目的は、天秤。」

私なのだから。

「あなた方の罪の重さを、思い知れ。」

博士。

あなたに健やかな死を。





「目からシュッと出しましょー!」

「蒼氷、こういうのはじわじわ虐めるものだよ。」

アルテミス教の1人に捕まった。

「あの?アルファくん?蒼氷くん?」

「僕のアルテを…」

あわわわー。

怖い怖い。

「アルテミスを幸せに出来るのか!?」

あ、そっち!?

「俺が11の時に出会った。幸せに出来ない奴にやるか!?」

何このお義父さまポジ。

「…俺を傷つけた時みたいに、虐めない?」

「…え?」

思い出した?

「お前のこと俺、ずっと忘れてなかった。俺超能力使えるからその後のお前のとった行動も知ってる。」

「なんで、俺、忘れられたんじゃ…」

パシッ

頬、叩かれた。

「お前のこと、信じてたから。だからずっと、また、ここであった時も。今度はちゃんと友達になれると思ってた。…お前は違うのか?」

あの時。

あの路地裏で見た。

アルファの泣き顔。

今でも同じ顔、するんだ。

「違わない。俺だって!!」

また、仲良しになりたい!!

そう言おうとした。

だけど。

言えなくなってしまった。

後ろから、恋人の声がする。

「奪…?」

ああ、なんてことを。

「アハハハハハハハハ!」

あぁ、なんでこんなことが。

「…ベータ!!うそ、やだ。」

「システム、エラァー。システムエラァーア」

ガガガッゴゴゴッ。

ロボットらしい音がする。

「アハハハ!やっぱり君はロボであり、ロボで終わる。親不孝もんだあああ!」

アルテミスが、駆ける!!

「アハハハハハハハハ!お嬢ちゃんやっぱり馬鹿だ!!」

銃を、発砲する気だ!

「やめろ!!ラニア!!」

「嫌だよ!!アハハハハハハハハ!」

好きな人を守れないで幸せになれない。

生きる死ぬ痛み苦しみ

全てを忘れて愛のためだけに

守るためだけに

アルテを抱きしめ

鉛玉を受けた。

アルテ。

アルテミス。

お願い。

お願いだから。

「その…力を…使わない…で…。」

赤く染った互いの目。

少し不安だったことを確かめることが出来た


彼女は、本当に愛してくれたんだ。


俺の一族のためじゃない

逃げるためじゃない

本当に

本当に愛してくれた。


「…愛して、くれて。ありが…とう。」

泣かないで。

血の味がする。

悲しい味がするキスをした。

「約束、破っちまった。」

クリーム色の柔らかい髪の毛が頬を撫でる。

旧友の方を見た。

「もう一度、が無くなっちゃった。ごめん。」

聞こえてるかな?

「馬鹿。ばーか。」

あの時と同じ泣き声。

「アハハハハハハハハ!裏切り者!!!」

高笑いをする元同士。

もう一度アルテミスの方を見た。

「なん…で。」

お願い

「私、あなたと共に居たい。」

駄目だ

「みんなで帰るって言ったのに。」

ごめん

「愛しい、貴方に永久の愛を捧げたかった」

俺も。

「…みに。」

ぽたぽた涙を落とす愛しの人。

「う、うう。」

愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる

「奪。私治すよ?だから。」

「だ…め…。」

かすり声で伝われるかな?

「俺は…好きな人に…娶られたい。」

さらに涙を流した。


そして覚悟を決めたみたいだ。

海は橙色に染っていた。

もう、おしまいの日。

もしも願いが叶うならおねかいします。

彼女を

幸せに…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る