まだ、まだ…

生まれた時、自分はこいつに負けていることに気づいた。

よく分からなかったけど赤ん坊でありながら負けたと思っていた。

片腕の龍。

己の手に父さんも母さんも喜んださ。

あいつは目の色のせいで忌み嫌われてたが。

だから兄として、片方一緒に隠そうと言った。

その時からだろう。

あいつのご飯に薬を盛り始めたのは。

健康じゃなければ、今回の目の時のように尊敬されるのかもしれない。

あははは。

ひひひひ。

この頃から、壊れた。






あいつはどんどん病弱になった。

それがとても嬉しかった。

あいつはどんどん俺を頼った。

そうでなくては。

俺が兄なのだから。


「俺に、兄が?」

「えぇ。楽様。光という跳躍に異常な程の力を持つ人がいるのです。」

俺が1番ではない。

「明日にでも宝物庫へ向かい我らのものである竜の秘宝を取り返し、歓迎の儀を執り行うのです。」

「分かりました。母様。」

もちろんすんなり取ってきた。

儀式の時の光という人はその、怖かった。

「初めまして、えっと楽くんでいいかな?」

「は、はい。えと、光兄様」

片腕の龍を触られる。

とても美しいてだ。光兄様は。

「綺麗な手。」

「その分ほら、足がゴツゴツ。」

跳躍のために足が龍化している。

「龍の体はこの家柄特有。だから俺はこの家に来た。」

「楽兄さん、その人は誰?」

来てしまった。

末弟が。

「有、外に出ても大丈夫なのか?」

「うん。今日は調子がいいんだ。」

兄は弟を舐めるように見た

「お前は、…いや、何も言わないでおくか」

と弟には聞こえない声で呟く。

「有、こいつはもって5年だ。今のところ海鳥には俺たちだけだが、こいつも連れてった方がいい。」

「5年?」

5年、5年か。

今俺は13、海鳥に乗る歳は18。

…人質くらいにはなるか。

「光兄様は、今おいくつなんですか?」

「んー知らん。俺には誕生日は愚か親すら居なかったからな。」

寂しい顔をしていた。

彼の目の色は一定ではないことに気づいた。

白か?シルバーになった。

あ、クリーム色?いや、ゴールドか?

ブルーだ。あれ、グレーになった。

この家は目について気にするのに。

「俺の目は、怖いか?」

「えっ!いや、綺麗だなーと思っていました」

鋭い八重歯を出しながらガハハハと笑った

「有、楽。お前らの目も実は変わってるんだ。」

まずは有だな。

そう言って前髪を寄せ、両目を出した。

「片方の目は正反対のものをつなぐ、グレー。もう片方は朝日のゴールドだ。お前は朝と夜をつなぐ希望なんだ。」

弟が嬉しそうにしている。

あんなに、嫌がっていたのに。

「しかもグレーはすごく透き通った色をしている。これはシルバーって言った方がいいな。」

ついには涙を落とした。

「次は楽だ。」

俺の目は、変なのか?

「お前と有は双子か?」

こくりと頷いた。

「白い肌と白い髪は有のものか。」

奇跡的なふたりだな。

そう呟いた意味がわからなかった。

「お前らは、アルビノって言う古代の祝福にかかっている。」

祝、福?

「元々はひとつの体になるんだ。有の白い肌と白い髪、楽の紫の目、日光への対応。」

それをアルビノと言う。

「大抵赤の目なんだがこれまた珍しい紫。」

しかもだ、と言われた。

「有はオッドアイだが、お前はそれ以上に珍しいダイクロイックアイ。」

綺麗なダークグリーンが入ってる。

そう言われた。

「そりゃ、楽は宝石だとか愛でられるわけさ。」

宝、石?

愛でられてたの?

「俺は名前が無い病がかかっている目だから詳しくは言えない。」

ただ、嫌いじゃねーんだ。

そう言われると何故か自分まで涙が出てきた。

「俺だけ何も言わねーのもあれだから、ひとつ、秘密を教えてやる。」

2人とも聞き逃すんじゃねーぞ。

「俺の、本当の名前は淡水だ。」

あわみず。

予想以上に可愛い名前だった。

「タンスイじゃなくあわみず。」

水に広がるさまざまな淡い色の絵の具。

そんなことを想像した。

「僕は本当は白蝶って言うんだよ。」

後ろから声がした。

有は本名を口にしたのだ。

「シロチョウ。そういうんだ。覚えておく」

「…俺は、黒蝶。」

悔しくなって言った。

「お前はクロチョウか。見た目にあった良い名前だ。」









「ペルラ三兄弟よ、ザハールへ姫君を!」

『はっ!』

18になった。

俺らはペルラ三兄弟と呼ばれるようになった。

正式に姫の奪還を命令された記念に

古代から愛されていたと言われる秘宝の3種に俺らの名前がつけられた。

淡水パール、白蝶真珠、黒蝶真珠。

何もしていないのにもう英雄だった。

この時からだ。

弟を守るようになったのは。

ああ。俺は。

俺はただ。

アレが、

アレが欲しい。

月カ?

違う

力?

違う

何が?

何が欲しい?

俺は、俺は………!!












あ、れ?

ここどこだっけ?

あぁ図書の間だ。

白蝶、君は今どこにいる?

兄と帰ろう。

みんなで帰ろう

姫と帰ろう

船の戦いは

「ザハールの勝利に違いない」

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