人間として、生まれたかったよ…!
一向に伸びない爪
髪の毛も伸びない
メガネだって意味なくつけてる。
私は、なんで?
蒼氷みたいに人造”人間”だったら?
アルファ兄みたいに改造”人間”だったら?
私は、何?
ロボットって何?
私はちゃんとメンテナンスさえすれば永遠に生きられる
私は何年、生きれば良いのでしょうか?
父さんは何年、生きられるのでしょうか?
ひとりぼっちは嫌だ。
誰か、誰か私を…
織火は暗い海を見つめた。
状況の把握ができていない。
船長はどこに行ったのでしょう?
海の底でしょうか?
助けに行かねば
そう思いふと空を見上げた。
未だに月は紅い。
自分が初めて彼にあった時。
その時普通の人間じゃなく月下人だということを、知ったんだ。
捨て子忌み子いらない子
そう呼ばれて5年間育った。
白毛は天の使い、青毛は悪魔の落し物。
青毛の子供は捨てられそして悪魔に食われるとかなんとか。
蹴られ殴られ踏まれて育った。
だから強く育った。
そしてとある施設に連れられて行った。
寂しさとかもなく、逆に不思議に思うことが多かった。
蹴られも殴られも踏まれもせず、温かいご飯をもらってふかふかの布団に眠ることが出来る。
大人達は甘えていいよとか、抱きしめてあげるだとかいう。
だけど、自分は甘くないし、枕じゃないし、なんでそんな事言うのだろうと思った。
愛だとか夢だとか希望だとか絶望だとか何も知らなかったからだ。
そして2年ほどたったある日、海に出会った。
その時、大人達は自分のことをジャックと名乗れと言われた。
だから名乗った。
「海、君?」
「うん、僕は海だよ。海で拾われたから。」
海は少し笑って
「でも本当は森の奥の泉なんだけどね」
「それじゃあ樹海君だね。」
と言うと腹を抱えて笑い始めてしまった。
「あら、ジャックが笑ったわ!」
「マジかよ、うわ、ロボじゃねんだ。」
皆に顔を覗きこまれた。
少しだけ鼓動が早くなった。
「わた、僕の名前はクラブ。よ、よろしくお願いします」
蒼氷色の瞳、少し長い女郎花色の髪を持つ可愛らしい男の子がやってきた。
自分と海は施設内の年長者であるため彼を案内し、親睦を深めてゆかねばならなかった。
「ここでは僕らがちゃんとしなければならない。君も多分同い年くらいだろう?」
「どうだろう。僕は他の人よりも成長が遅いんだ。」
この施設は海で囲まれていた。
皆が船で流れてくる。
ここに来るものは皆昔の居所は好きじゃない人がほとんどだが、彼だけは違った。
「兄、さん…。」
自分の話をするとすぐにムール方面の窓を眺める。
それが僕からすればとても不思議でたまらなかった。
年齢が2桁を超えると、僕らは『本当の学校』とやらに通わされた。そこで久しぶりに自分の名を聞くことが出来た。
ついでにクラブの名前もだ。
「ムールの孤島クリスタル出身の、水晶 蒼氷」
「は、はい!」
「ザハール、ドルフィン地方出身 入江 織佳」
「はい。」
大人達は静かに笑った。
「ザハール軍へようこそ!さぁ、我国の姫君救出へ精を出してもらう。」
「…なんで?」
……
「お前はザハールで育っただろう?その恩を返すつもりで…」
「あまり良い思い出がないよ。」
………
「ム、ムールからの支援がほとんどだったけど?」
……
「とにかくうちの軍で働いてもらう!いいな!!」
「…海くんは?」
「あれは知らん!」
やはりどの時代でも大人は適当だ。
髪の毛ぐらいで差別を行い、生まれた国で軍に入れられる。
馬鹿な世の中だ。
「海くん、どうした…」
「俺、船長だって。海鳥の新しい。名前、今日からオーシャン=バードだって。」
すごい動揺している。
こんな海を見たのは初めてだ
「俺、お前らのこと、守れるかな。」
「大丈夫だよ、きっと。」
そう言って彼の頭を撫で用とした時ふと昔の彼の言葉を思い出した。
「大丈夫だよ!俺はお前のこと信じてる、だからお前も俺を信じて欲しい。」
そうだ。僕はあの時から海に…。
「僕は、海のこと信じてる。だから海も僕のことを信じて。頼って欲しい。」
自分だって副船長になるのだから。
「一緒に正しい海を作ろう。」
こう言ったのはいいが既に僕はザハールに洗脳されていたためあまり良い思考をした気がしなかった。
かなりぼーっとしていたようだ。
もうすぐ、夜明けじゃないか。
全てを終わらせなければならない。
今日中に。
「船長、僕はもう少しここに居るからね」
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