月と目。海と船。

「ラーズ、何で私が月下人ってわかったの?」

「最初から知ってた。みんなに言わなかっただけ感謝してよね。あー怯えんな。それから、俺は、ラーズ・ブルルガンじゃない。本名は奪だ。」

アルテ、だっけこのこの本名。

たとえ兄が中にいようと、彼女は長い間孤独と戦ってたんだよな。

…俺と似てるな。

「なぁ、俺これからお前のことなんて呼べばいい?」

「…本名でいいよ。私もラーズのこと奪って呼ぶから。」

月の光がさっきよりも穏やかになってる。

「アルテミス、これからどうしたい?」

「弟に会いたい…いや、お兄ちゃんでもいいんだよね、あなたの前なら。」

優しく微笑んだ。

「あと、アルテミスじゃなくていいよ。アルテって呼んで。」

長いでしょ、アルテミスって。

そう照れくさそうに笑ったアルテの心を少し見た。

お兄ちゃん見たいで安心する。

そう心の中で呟いていた。






「んでホワイト。」

「有でいい。」

片目を隠していた髪をヘヤピンで止めた。

「オッドアイなんだなお前。」

「うん。兄貴が嫌がるから隠してた。」

後ろ髪も結んだ。

「一応、ティスも王族だから守ってあげる。」

「えー、お前弱そうで怖い。」

ドヤ顔でこちらを見た。

「僕は結構強いよ。この船で4番目ぐらい。まあ、兄貴達には隠してるけど。」

「ふーん。じゃあ期待しといてあげるけど、覚醒月のから何か力もらったの?」

両手以外でと言いかける前に有は綺麗な目をこちらに向けた。

「魔力、かな?」









「ラニア。」

声をかけると彼は肩を震わせた。

やっぱり俺のことは誰が見ても怖いのか。

「トラップ?」

「…あーお前にはやっぱりトラップって呼ばれてたいなー。」

青い目が涙を浮かべていた。

「トラップは、敵?」

「お前…いや、零には、もう、居なくなっちまったのか、味方は。」

零は、俺を抱きしめた。

「血をくれる人いない。乾いて乾いて苦しいんだ。」

こいつめ……

「よしよし、お前、吸血鬼になったんだっけ?苦しいよな。」

「トラップ、飲んでいい?」

上目遣いされるとほんとに、ねえ。

「お前いつから知ってたんだ?」

「奪に聞いた。まあ、俺は元々だったけどさ。」

ゆっくり押し倒される。

「お願い、トラップ。」

「…いいよ、好きなだけ飲めよ。」


俺はこの覚醒月のせいで、同性愛者になった。

それでもいい。

零といられるなら。




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