食人鬼

今の自分なら、彼と本当の友達になれる気がする。

ラニアは、倒れている。

俺は友達の元に走った。



「…姫確認。有、いける?」

「任せて。」

片目隠しの同士にアイコンタクトを入れた。

ロビーには涙目の姫がいた。

「セイレーン様。帰りましょう?」

「……帰るってどこに?」

「パール地方でもシャーク地方でもどこへでも」

手を繋ぐ。

「それ、全部ザハールじゃない。」

「それでいいんです。さぁ、帰りましょう?」

嫌よと首を大きく振った。

「何も怖くありませんよ。」

駄目だ、このままだと話が進まない。

「セイ…!」

「……お兄ちゃん!」

クソ。

「おい、ホワイト、俺の妹に何する気だ!」

「お国に帰るだけですよ。」

あぁ、姫の前立たれてしまった。

「可愛い可愛い妹ちゃんと帰る場所はアクアリウムしかねーよ。」

「…そうですか。しかし我々はあなたを求めていません。」

お互いの殺気を感じる。

しかし背後にも敵が迫っていた。

「あははー。随分楽しそうじゃねぇかよ。なぁ、俺も入れてくねぇか?」

赤い髪に、赤い目。

長くて美しい髪は今はバラバラに切らていた。

アトランティスも、自分も動くことが出来ない。

「よぉ、姫さん。あーあ、こんなに目赤くして…。一旦離れるよ。それから、ベータは無事だよ。」

気がつけば姫様は食人鬼の、腕の中に収まっていた。

そして、赤色の美しい彼は猛ダッシュでどこかに行ってしまった。

兄さん達に話そうと思っていたが、そこに、兄さん達は居なかった。

また、1人にされてしまった。





「ゴホッゴホッ、兄さん達、もう行っちゃうの?ゴホッゴホッ」

「あぁ、無理するなよ有。大丈夫、眠って目が覚めたらすぐに会えっから。」

昔から僕は体が弱かった。特に上半身の内蔵が弱かった。

「…いいな、兄さん達は。」

そう何度も思った。

僕が今船に乗れていることは奇跡だ。

それに、あの子と会った時から…

「ホワイトさん…?」

「これ、ご飯。」

初めて自分が守れそうなものを手にしたんだ。

あぁ、そうだった。僕は元々兄さんを尊敬なんてしてなかった。僕は、守りたいものが欲しかったんだ。



「おい、有。……!お前」

「何、ティス」

今の瞑想が、どうやら僕の中の何かを変えていった。

「ねぇ、ティス。僕と手を組まないかい?

「え?」

ニヤリと笑った。

「兄さん達を……ね?」






「あの、もしかして、ラーズ?」

「ん?そうだよ。ラーズ・ブルルガン。」

やはり女っぽくした方が良いのだろうか?

「ところで美海、俺は君の全てを見た。ああー暴れるな。下手には動かないさ」

「何が目的なの?」

あーあ、目が赤くなってる

「ホイホイその力を使ったらダメだからね」

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