麗しのアクアリウム
僕が8歳の時に、妹が生まれた。
赤ちゃんの頃からとても美しい顔立ちだった。
優しいクリーム色のお揃いの髪。
僕は妹のことが大好きだった。
いや、今も大好きだ。
妹の名前は、アルテミス=ルーナ=アクアリウム
海鳥に乗る前はアルテと呼んでいたが、今は皆に合わせてセイと呼んでいる。
ああ、ちなみに僕の名前は
ワタツミ=アトランティス=アクアリウム
僕らの名前は昔滅びた国の人が信じていた神様らしい。
父さんと母さんが昔の国が好きだったから、この名をもらった。
幸せだった。
しかし僕が18、アルテが10歳の時に事件が起こった。
僕達兄妹が、とんでもない力を手にしてしまったからだ。
それと同時にムール帝国アルファ王子が行方不明。
ザハール大国の、ラニア、奪が、両方当主となった。
また、サイール王国では、ドラゴンの血が無くなり、アンダー一家も同時に逃走。
国が動き始めた。
母さんはザハール、父さんはサイール
の国王であった。
アクアリウムとは二人の結婚から作られた国だ。
両親は一時帰国。僕達はアクアリウムに残った。
しかし両親の帰国が良い方向に向かわなかった。
サイールの事件はザハールが、ザハールの事件さサイールが仕掛けていた。となった。
2人だけになってしまった城で僕達は海と月に何度も祈った。
しかし僕らの親はまず、僕らを狙った。
両軍の兵士から僕らは小さな国の中で逃げ回った。
その時、アルテは兵士に、胸を切り裂かれてしまった。
そして、回生の泉にたどり着いた。
道中、何度も転び、何度も切られかけたせいで、ほぼ全裸状態だった。
回生の泉でも水は冷たい。しかし傷を塞ぐためには浸からなくてはならない。だから僕達は抱きしめたまま水の中に入った。
その日は僕らが体験した初めての覚醒月だった。
気持ち悪いくらいに美しい月が水面に照らされる。
その月を見た瞬間僕は目の前が、真っ白になった。
「あなたは、その子を、護りたいのですか?」
真っ白な空間から聞こえた優しい声に僕はうなづいた。
「それなら、この空間から目が覚めた時、私が言ったことを必ず行いなさい」
妹を助けられるなら。その一心で話を聞いた。
それは、アルテの中に僕が入り僕の月下人の力、海の加護を与えることだった。
そして一時的にサイール王国側に預け、美海という名で生活させることだった。
サイール王国は、漢字という文字を使う名前が多く、この名が適切と言われた。
しかしこのことをほかのものに伝える際は、美海としてではなく、ザハール側の国籍で、セイレーンと名乗るようにさせた。
しかし、海鳥女狩り隊には意味がなかった。
結局母さんに捕まった。
海鳥はサイール側の船ではない。ザハールの船だ。
今まで海鳥が帰ってこなかったのは、ザハールに全てを奪われていたからだ。
だけど、今回は。
せめて、アルテミスだけでも……!
「今日も月が赤い。きっと明日も赤いのよね。」
荒れた海を眺めた。
「ごめんね、蒼氷、アルファ。でも、私もこの海鳥として動くことが出来るの。」
今は遠い故郷を眺めた。
「……わたしが、終わらせなきゃ。」
もう一度月を見て、手をかざした。
「もう、いいよ。私のお月様。私を、覚醒させて。」
そう言うと月の光は私を包み込んで行った。
あぁ、血が熱い。
あぁ、なんて綺麗な月。
あぁ、なんて美しく荒れた海。
あぁ、なんで消えたの私の国。
あぁ、もう、トメラレナイ
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