あなたに届いてほしい。

「楽、いた?姫様。」

「有、いない。姫様。」

「もしかしたらメカ軍団についたかもしれねぇーな。」

自動操縦にしてある船。皆が動き始めてる。

「光兄さん、帰れるよね?みんなで。」

「あぁ、俺らは代々姫様を守る役目があるからな。そうやすやすとラニアに渡せねぇ。」

黒い髪の少年と白い紙の少年を引き連れて歩く彼はサメのように予測ができない目をしていた。



「あ、ああ、べー、タさんは?」

「えっと、大丈夫だから、ね?こっちにおいで。」

割れながらとてもひきった笑顔だと思う。

アルファお兄…いや兄さんはなだめる様に背中を撫でていた。

「美海、さっきも言ったけれど僕は皐月。まあ、アルファとも呼ばれているよ。少しお話しよう?」

「あなたは?私は?お兄様は?ベータは?」

パニックになってる。気持ち悪いくらいに美形な彼を思い泣く。

「僕は皐月。本当はアルファって言うんだ。君は忘れてしまったかもしれないけれど、僕はムール帝国の王子。そして君の婚約者だったんだ。」

「はっ?なにそれ初耳!」

なんか悔しい。美海はパニックだし。

「あれ?でも、国なくなった…?」

「うん。そうだよ。君の国は今、完全では無いけれど壊れてしまったんだ。」

美海が泣いた。一つ一つ記憶を思い出してゆくように。

「お兄様は?お兄様は無事なの?」

「…そうだね。これに関しては僕からは何も言えない。」

そっとアルファ兄さんが美海を抱き寄せた。

「でも、大丈夫。僕が守るから。ね?」

海の秘宝と愛でられた姫。アイスラリマーの精霊と呼ばれた王子。

なんか浄化されそう。

「クラブは?クラブもクラブじゃない名があるの?」

「…えーっと。2つほどありますね」

でもどっちが本名だ?

「彼は僕の兄弟の、一応本名はガンマ。でも彼的には蒼氷って呼んでもらうと嬉しいみたいだよ」

蒼氷色の目。ベータはこの目を見て蒼氷と名付けた

適当に考えた「クラブ」という名よりはずっとマシだ。

「蒼氷という名はベータがつけてくれたんだよ。アイスブルーダイアモンドって知ってる?その宝石がこの目なんだよ」

目を目当てに売られたかと思ってたけど、誰も目当てにしてくれない。

自分とベータの目は宝石で出来ている。

宝石というものは原理は知らないが新たな生命体を生み出す際、使うと動くそうだ。

「宝石…?あれ、私、誰かに、宝、石。」

バタッと、彼女は倒れてしまった。





「……!セイ」

俺が守らないと…!

エンジンルームもすぎたからそろそろかと思ってたけど

まさか資料室前とは…

「お兄ちゃんが守ってやるからな」

あぁ、血が熱い。

どんなに美しいと言われても、この穢れたゲッカジンは、消えることは無い。

この、美しく荒れた海を直せるのはセイと俺だけだから




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