番外.戦士の選抜事情
「うらぁ───!!!」
シルバは剣を振る。だが、相手は受け流そうと剣を構えるが、力押しでねじ伏せられた。すかさずとどめを刺そうと刺突を試みたところで声がかかる。
「そこまで!勝者…シルバ!」
「───!…ふぅ、何とか勝てたか」
ここは学園内の修練所。今まさに、合否をかけたトーナメントが行われていた。戦士ギルドの人数は16人と他ギルドよりは少ない。上位2人が合格と中々狭き門である。ついさっき上位4人が決定したところだ。勝敗は至ってシンプル、審判である戦士ギルドの講師が止めるまで打ち合う。なお、例によってレプリカの刀剣を用いる。
シルバ、メイリン、ダンチ、ムドウ。以上が今残っているメンバーだ。次のシルバとの対戦相手は戦士ギルド志望の中では紅一点のメイリン。女性ながら実力はあり、技術ではシルバも劣っている。それでも、この一戦に勝てば合格となるので気は抜けない。
しかし、シルバはそれともう一つ気になることがあった。トーナメント向かい側のムドウと言う男。ここまで残ったダンチもシルバと同じく力の上では良い勝負をしているのだが───ムドウは格が違う。アウィーナ国独自の剣法・柔破一刀流の道場で育ったそうだ。戦士…と言うよりは剣士と言うのが正しいだろう。
…と、そろそろ始まるようだ。
「これより、ダンチ対ムドウの試合を執りおこなう。両者前へ」
「おうよ!俺ももう3年目、てめぇを倒して速攻ギルドに入ってやんよ!」
「────うるさい、さっさと始めるぞ」
「はっ!気圧されたかぁ?いいぜ、一撃で沈めてやんよ!」
「…はじめっ!」
「────っあぁぁ!!」
先手、ダンチが大きく振りかぶり斜めに振り落とす。この男、タッパがあるため驚異的な速度、リーチで今まで2戦を対戦相手に隙を与えず屠ってきた。そして…一撃は振り切られた。しかし、ムドウは一歩も動いていない。
「なっなんで──!!」
剣を軽く振るムドウ。まるで蚊を払うように…ただそれだけの一振り。
「この程度造作も無い。少し力を加えるだけで軌跡は我を避けていく。その太刀筋、2回も見ればもう見破れる道理。よもや、それで終わりなのか?では、次は我だ…、いつもの刀では無いのが癪だが仕方あるまい…─柔破一刀流・風切り─」
異様な気配を感じ取ったのかダンチは距離を取る。ほぅ…と息が漏れ、目が薄ら開く。腰に剣を差し最速で射抜く居合いの構え。さっきの2戦は相手の剣技を躱してカウンターを入れていたのだが、ムドウから攻めるのは初めてだ。
「その直感はよし。だが──それではまだ我の射程内だ」
ムドウの動きを見て剣を振るうダンチ…。しかし、それでは遅い──すでに懐に潜り込んだムドウの一閃は軌跡を見せること無く振り切られる。ムドウの二回りは大きいダンチは宙を浮き、地に墜ち、巨体は音を響き渡らせる。
「そ、そこまで───勝者ムドウ!」
白目を剥き泡を吹くダンチを何人かが引きずっていくが、それを見ること無くムドウは下がっていく。しかしシルバの前で立ち止まった。
「……お前と戦えないのは残念だが致し方ない。いずれ相まみえる機会があれば剣を交えようぞ」
そのままムドウは修練所を出て行くが、答えることなくシルバはただ見送ることしか出来なかった。
(何だよあれ…同期とは思えない強さじゃねぇか。クラスが違うから気付かなかったが…。なんであんな奴が戦士ギルドにいるんだよ、騎士の推薦が無いのがおかしいくらいだぜ)
「続いて…メイリン対シルバ。両者前へ」
「はい」
「おう…。さて、ここは勝たねぇとな。くくく…あいつらより先に内定が貰えたなんて聞いたら悔しがるだろうな───」
1人でほくそ笑むシルバ。それを見かねたのかメイリンが声をかける。
「あら、もう勝ったつもり?悪いけど、ここは勝たせて貰うわよ」
「あぁ悪い悪い。そうだな…メイリンの胸を借りるつもりで戦うさ」
「それ、女性相手に言う言葉じゃないわね…」
2人は話ながらも所定の位置に着く。シルバは剣を左下に構えるスタイル。一方のメイリンは正面に剣を構える。
「では……はじめっ!」
剣戟は中心で交わり覇気が修練所に広がっていく。それをその場にいるものはただ見入るしか無かった───。
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