13.学生の招集事情
「うんうん、2人とも揃ってるね~。早速だけどこれを進呈しよう!」
2人に手渡されたのは鈍く光る銅のバッチだ。ハヤテの方には短剣が描かれたバッチを、レナの方には杖の描かれたバッチを。それぞれギルドごとに描かれるものは違っていて、戦士ギルドなら剣、商人ギルドは袋、鍛治ギルドはハンマー…と言ったところだ。
「でも、勘違いしないで欲しいのは、これはあくまで仮合格って所だから」
「え、…あっそうか」
ハヤテやレナはまだ2年間課業を済ませていない。つまり、学園に所属する義務を果たしていない。しかし、このバッチは仮とは言えギルドで働くことも出来るし、研究の手伝いだって出来るから、ほぼ内定したと言っても過言ではない。
この2人の様に、先にバッチを貰い半分ギルドの所属になる者だっている。ギルドとは違うが、王国騎士がその例だ。───アストロ・ヴェンドール、推薦を貰ったその日から王国騎士として鍛錬に励んでいると聞く。また、3年目以降でバッチを貰えれば、課業に参加しなくてもいい、事実上の卒業と言うわけだ。
「言ってもまだ君たちは学業も残ってるし、おいそれとギルドに参加させる訳にもいかないのよね。───でも、今回は何と!2人とも課業をすっ飛ばしても良い依頼があるから大丈夫だよ!」
「それって…さっき言ってた?」
うんうんと頷くニーア。すると手に持っていた紙を広げる。
「こ…これってAランクの依頼!俺達みたいなのが参加できる…のですか?」
「冒険者ギルドのことなのに…私も参加して良いんですかね…?」
冒険者ギルドへは主に国民や他ギルド、そして王宮からの依頼がある。ランク分けがあり
、分かりやすいものだと討伐だろう。SS~Fランクがあり、強い魔物や被害が甚大になるほど報酬やランクは上がっていく。ちなみにハヤテの…赤目の少女が倒したゴブリンはアウィーナ国への一本道に現れ、それなりの被害があったためEランクと位置付けられていた。
「実のところ、この依頼は戦士ギルド、魔術ギルド、冒険者ギルドに出された依頼なんだよね~。ところが、これの主導は私たちのギルドって感じで…。人を募ってたんだけど…私が講師に着いているのを鑑みても、やっぱり人手不足は否めないかな~」
「で、俺達に白羽の矢が立ったってことですか…」
例外に討伐があるだけで、原則ギルドの依頼は所属しているギルドメンバーのみ受けることが出来る。即戦力…それほどに人が足りてないのは上辺だけでも理解は出来た。
「でも、私達に即戦力としての力が無かったら…?」
「うーん、その時はその時かな。こうして2人とは言え、動ける人間がいるんだから収穫だよね!」
ニコリと笑顔を見せるニーア。しかし、依頼内容はそんな優しいモノでは無かった。
『ナルタ国、アウィーナ国周辺における、オスレリア帝国の魔導兵器の殲滅及び術者の殺害』
それは帝国との水面下での戦争。現状、冷戦状態が300年程続いているが、今この依頼が出てきたと言うことは十中八九、帝国が何かしらのアプローチを仕掛けてきたとも取れる。
今でこそ偵察や索敵を繰り返すだけで、直近の隣国、ナルタ国への攻撃などは確認されていない。しかし…急を要する何かが起きたのだと勘ぐってしまう。
「主に私達前線のお手伝いって感じだから、そこまで気を張ることはないかもね~。魔導兵器にはそれなりの対処法もあるから君達はサポートに徹してくれたら良いよ!じゃあ、私は予定があるからこれで~」
「は…はい!」
これから起こる戦争にも似た何か。駆け足で去るニーア、その笑顔と裏腹にハヤテ達はやはり不安に駆られてしまう。作戦開始は三日後。
それまで装備を整えたり…母さんに一言伝えなければ…。あまり言葉を交わすことは無く、レナと帰るのだった。
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