08.学生の選択事情
汝、この国では自由であれ───
全ての国民はがんじがらめの法に縛られる事無く、自由に生きて欲しいという初代国王の熱意だと言われている。
汝、この国では対等であれ───
全ての国民は等しく一個人としての尊厳が保たれるべきだ、差別や迫害されることが無いようにという初代国王の意思だと言われている。
汝、この国に忠義を尽くせ───
全ての国民はこの国にて生きることを誇りに思ってもらい、国の発展に尽力して貰いたいという初代国王の願いだと言われている。
「───と言うことを1年間習いましたが、この三大国法はギルドに入ってからも忘れないようにしましょう!私は冒険者ギルドから派遣されて来ました、講師のニーアです!よろしくお願いします」
ぺこりと頭を垂れる講師のニーア。スレンダーな肢体とハツラツとした態度は非常に好感を覚える。
今しがた、派遣…とあったが、1年目に講義をしたハワード先生は学園に所属している教師だ。しかし、2年目以降は各ギルドから講師として派遣されてやってくる。専門的な事を教えるため、本来なら少し歳のいった方々が来るのだが、冒険者ギルドのこのニーアと言う女性はいささか若く思える。
「本当なら先輩が来る予定だったんですが、急な依頼が入ったみたいで、代わりに私が戻ってくるまでの間、しっかり教えますので!でも、抜かりはありません。スパルタで冒険者の心得を仕込んでいきますよ~!」
とのことで、代役としてイレギュラーで入ったようだ。
ゴブリンの件から一ヶ月が経ち、左腕から身体に至る痛みは完全に消えた。そして森には近づかないように薬草採集なども再会したころ、ギルド別の専門課業が始まった。戦士ギルドなど、他のギルドは専門の技術が必要だ。しかし、冒険者ギルドは職種が多岐にわたるので、この1年で適性を見極める講義が多くなる。
「…やっぱり命の危険がある魔物討伐系が一番羽振りが良いな」
と言っても、トーラム王国の鍛治ギルド等の他のギルドでも、冒険者ギルドに所属しているため依頼は受けることが出来る。それでも仕事の片手間にする者は少ないため、二足のわらじを履くのは相当難しいと言える。
「と言うわけで、これから早速講義に入りますが、みんなで近くまで移動します!」
えぇーとの声も聞こえるが、実地訓練は手っ取り早くて助かる。…あの時は赤目の少女を庇ったため遅れをとったが、判断事態は間違ってなかったと思う。これから1年で戦う力を養い、借金を……いや、女手一つで育ててくれた母さんを助けてやりたい───。
学園を出て志望者総勢40人程で外へと歩く。何人かニーア先生に声をかけたり、鼻の下を伸ばしたり…。そうこうしている内に目的地に着く。そこは……ゴブリンと対峙したあの森だったのだ───。
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