そして始まるギルド課業
07.学生の課業事情
王立サクセス学園──この学園には最低2年通う義務があるが、入れる年齢指定は特にない。また、1年目はブロンズ、2年以降をシルバーとして腕にそれぞれの色つきバンドが巻かれる。ちなみに教員はゴールドのバンドと一目瞭然だ。
課業の内容として、1年目は座学などでギルドや王国建国の歴史等を勉強する。2年目になると最初のうちは1年目の復習…そして適性検査となるのだが、そこから希望職種、つまり選択したギルドの課業となる。しかし、適性検査を受けた上で選択できるギルドは決まっているのだ。
魔術適性のある者は魔法の使える云々ではなく、後に伸びる可能性のある者が魔術ギルドへの志願が出来る。
戦士適性のある者は適性検査の一定値クリアにより戦士ギルドへの志願が叶う。
他にも適性検査によってはアウィーナ国の鍛治ギルドだったり、ルーシア国の僧侶ギルドへの志願が可能となる。
一方で平均的、それ以下の者はもれなく冒険者ギルドもしくは商人ギルドへ志願を余儀なくされる。
逆に優秀な成績を修めた者は王国騎士へ推薦される。年に3人も選ばれれば良い方で、今年は1人推薦されたようだ。
大抵は2年でギルドへ雇用される形になるのだが、冒険者ギルドの課業を行い、次の年の適性検査で戦士ギルドに移るなどはさほど珍しくはない。よって2年目以降は自分より歳が下でも3年通う者もいたり、年齢が上でも同期という者もいるのがこの学園の特色でもあるだろう。
ちなみに2年間の学費は王国からの助成金制度により実質タダだが、3年目からは1年辺り100万Gと少々お高め。
───場所は変わって講義室。今日の課業は先ほど終わったようだ。
「そう言えば、ハヤテは冒険者ギルドに志願したんだっけ~?」
「あぁ、商人か迷ったんだが、ロマンと言うか何というか…」
「ははっ、お前はロマンって柄じゃねぇだろ。…こうして今は顔つき合わせて話しているが、来月から専門課業が始まるしあんまり会う機会はないだろうな」
「そう…だね…」
「…一緒に入った1年目もあっという間だったし、やっぱり名残惜しいな…」
なんとも言えない空気が漂う…。この3人は学園以前から知り合いで、幼い頃からの腐れ縁だ。レナもシルバも、ハヤテの家庭事情はよく知る仲。ギルドは違えど会えると言うのは分かっていたつもりだったが……。3人の沈黙を破るように放送が響き渡る。
『シルバークラス、アストロ・ヴェンドール。至急学園長室まで来て下さい──』
アストロ・ヴェンドール──今年の適性検査で唯一王国騎士として推薦された、名家ヴェンドールの嫡男だ。王国騎士として推薦されるだけあって、魔術適性や戦士適性は同期の中ではずば抜けている。そして家柄も良いため、選ばれたのは妥当だろう。恐らく説明で呼ばれたに違いない。
「はぁ、王国騎士か、遠い世界だよなぁ」
「そりゃあハヤテの適性値を倍にしたような化け物だからな」
「選べないギルドは無いって言うから凄いわよね~。ハヤテと違って」
「だな、ハヤテと違って」
「ち、ちくしょう…反論できないのが悔しい……」
しばらく談笑───。やがて時計を見ると思ったより時間が経っていたため家路へ着く。
…先日の件、レナは自分の事のように心配をしてくれ、シルバは励ますようにからかってくれる。起こらないに超したことはないが、それでもタイミングが良かったのかもしれない。
──冒険者ギルド、様々な奴が集まる中でハヤテは少しずつ期待に胸が膨らむのだった。
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