第5話 魔術
「魔術ってどう使うんだ?」
「あん?」
何もない街道歩いていると突然アルヴァが訪ねてきた。
「なんだお前、仕組みも知らないのか」
「周りにそういう人がいなくて」
「んじゃまあ見てろ」
そう言って手のひらを上に向ける。そして頭の中で『詠唱』を行い手のひらに意識を集中させる。するとそこにぼんやりとした光が浮かんだ。
「これが《日光》の魔術だ。まあ見ての通り光をだす魔術だ」
「すごいな」
アルヴァはまじまじと明かりを見ている。俺はそれを鼻で笑った。
「すごくねえよ。《魔弾》の次には初歩的な魔術だ。魔術師なら使えて当然だ」
「どうやって発動しているんだ?」
言われて俺は自分頭を指で叩いた。
「頭の中で……まあ口に出してもいいんだが、ともかく呪文を唱える。後はその魔術ごとにコツがあるんだが、そっちは話すと長すぎるからやめだ」
「俺でもできるのか?」
「魔術書があればな。あれに呪文とコツが書かれてる。習得できるかは別の話だが」「なるほど」
アルヴァは次に俺のつけている手袋を見た。
「それ、触媒か。そういうのもあるんだな」
「ああ、普通は杖とかのが一般的だからな」
明かりを消し、手袋を翻してみせる。
「手袋系の触媒は効果は低いが詠唱からの発動が速い。加えて手を塞がないから、ああいう稼業してた時にはこっちのが便利なんだよ」
ふとあることを思いつき、着けていた手袋外す。
「ちょうどいい、ちょっとこれつけてみろ」
「え?」
真顔で驚愕するアルヴァを無視して手袋を放り投げる。アルヴァは慌てて手袋をキャッチする。
「俺は魔術使えないぞ」
「使えなくていい。お前にどんくらい適正があるか調べる。手を開いて地面につけろ」
言われるがままアルヴァは手袋をつけて下に向ける。
「魔術っていうのは努力が3割、才能が7割だ。魔力の量自体は努力で何とかなるが、魔術との親和性だけはどうにもならん。だからこそエルフが魔術師としてあんだけ幅聞かせてんだ。」
「よくわからない」
「要は、樽にどれだけ水があってもそれを酌みだす桶が小さけりゃ一回で大した量はでない。これから測るのはその桶の大きさだ」
人間の体には魔術を通す目には見えない管のようなものが流れている。その管が太ければ太いほど、魔術を使った時に効率が高まる。
「地面に魔力を流し込め、限界までな。その時の光具合で判断する」
「どうやって?」
「体の生気とかそういうもん全部流し込む感覚でいけ。なに、そんな難しくはない」
アルヴァは目を閉じ、意識を集中し始めた。すると地面青く青白く発光する円が現れた。円は大きさを増し、一部屋分ほどの大きさまで広がった。
「おお」
俺が感嘆の声を漏らすと、魔力が切れたのか光が急に途絶える。アルヴァ息を切らし、地面にへたり込んだ。
「お疲れさん」
「ハァ……ハァ……どうだった?」
アルヴァは大汗をかきながら俺に訊ねる
「悪くない。いやかなりいい」
俺は率直な意見を伝えた。
「魔力は並みたいだが、お前の桶はかなりでかい方だ。人間の中じゃ相当上位だ」
さすがにエルフほどじゃないが、とは言わなかった。エルフと人間を比べるのがそもそも間違いだ。人間を池と水路とするなら、エルフのそれは湖と川だ。
「しかしまあ惜しいな。魔術師として訓練しときゃあ大成したかもしれないが、剣を持ってちゃ杖も握れないだろ。どっちにしろ今は魔術を覚える時間もないが」
「まあ考えておくよ」
アルヴァはふらつきながら立ち上がった。足元がおぼつかない。魔力を扱うのに慣れてないせいだろう。
こりゃ今日は町までたどり着けないな。そんな事を考えながら、俺は野宿できる場所を探すことにした。
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