初陣そして・・・

 うららかな土曜のお昼。


「おい! ゲートの方に反応があるぞ! 来たか、来た来た、遂に来た! 俺のこの手が光って唸る!」

 普段からテンションの高いウマだが今日はことさら声が高い。

 川平なんたら並みの異様なハイテンションだ。

「え、どうしたの? 腕が光る!?」

「おまちかねの戦闘だ! うひょー、もう10日もなんもねーから、ゲートの開き先を間違ったかと思ったぜ」

「ある意味、足立区は間違ったと思うけどね」

 ここはウマのテンションに乗ってはいけない。冷静に対応しないと痛い目をみるのは自分なのだ。

「足立を悪く言うな! タッチもみゆきも全否定する気か、オイ!」

「はへ?」

「んなこたぁどぉでもいい。こちとら江戸っ子でい。都下の地理には詳しいんでぇ!」

「うーちゃん、ほんとに違う世界からきたの? 妙に庶民的なんだよね。私の事騙してない?」

「おまえの小っちゃい脳みそじゃわかんねーんだよ。この世界のぺらっぺらな情報なんざ、水でも飲むように理解できらぁ」

「はいはい、でどうしたのさ」

「そう! ゲートの向こうに重力波反応が出てる。誰かが量子魔法を使ったんだ。たぶん向こうの魔女だ」

「魔女!!」

「そうだよ。お前が戦う敵だ。これでやっと魔法少女になった甲斐があったってもんだ。喜べ!」

「魔女と戦うの? 私が?」

 人差し指を自分の鼻先に突きつけて問う?

「そう言ったろう」

「魔女って響きからして、超怖そうなんだけど」

 魔女なんて聞いてなかった。なんか呪い殺されそうな恐ろしさに身の毛がよだつ。

「おまえの怖いなんて知ったこっちゃねー。さぁいくぞ、とっとと飯食って変身してこい!」


 無視。


「また私の気持ちもお腹も無視ってわけね」


 あまりの強引さに、背筋の冷たさも一瞬で消え失せてしまった。

 しょうがないなぁ。でもちょうどお昼の時間だ。ママが何か作ってるのだろう、一階からいい匂いがしてくる。


「ほら? おあつらえ向きに飯の用意ができてんだろ」

「お昼だからだよ!」

「焼きそばだろ。この匂い」

「うーちゃん鼻もないのによくわかるね」

「空気中にを漂う安息香酸を分析した。ちょろいもんだ」

「難しくてよくわかんないけど、ご飯は食べてくるよ」


 そう言って下に降りてママと一緒にご飯を食べる。

「あずさ、焼きそばどお? ちょっと味濃くない?」

「ううん、大丈夫。お野菜も一杯入ってておいしいよ」

 心配そうに私を見るママに、ニコッと笑って答える。

「そう、よかった。ありがとっ」

 向かい合わせに座ったママが頬杖をついて、私が焼きそばを食べるのを嬉しそうに見ている。

『こういう優しい時間っていいな。うーちゃんのせいで失いかけてたよ』

 と、半分くらい食べ終わった時、

「ねぇあずさ、なんかあなたの周りキラキラしてない? それとも私の目が疲れてるのかしら?」

「え?」

 箸をおいて自分の手のひらを見てみると、ぽぅと手の輪郭が光っている。そして次第に光の粒子が凝結し始めてきた。

『!?もしかして変身する。なんで? 今まで大丈夫だったのにっ。ていうかここで変身したらヤバいじゃん。なんて言い訳したらいいの。て、言い訳のレベルじゃなくて。恥ずかしくて死ぬ!』


「ママ! もうおなか一杯になっちゃった、二階に行くね!」

 そういうと跳び跳ねるように席を立ち、脱兎の如く階段まで走り出した。バネの様とはまさにこのこと。

「あずさ! どうしたの!?」

 急な事に戸惑うママの声を背に、二段飛ばしで階段を駆け上がり自分の部屋に転がり込む。


「うーちゃん、変身する! 変身しちゃうよ!!」

「おせーぞ飯食うの! やっと変身か」

「じゃなくて!!」

 言っている間に強烈な光があたりを満たし、あっというまに変身完了。


「わー! やっぱり変身してるしー! あぶなー!」

「変身するって言ってたじゃねーか」

「だって、急に来たんだもん。私の意志に関係なく!!」

「ああ、これから戦うって言ってたから意識したんじゃねーか。大方それに反応したんだろうよ」

「危ないよ! それ! よく今まで無事にご飯食べれたなぁ! もうっ」

「ちっちゃいこと気にすんな」

「ちっちゃくない! うーちゃんは何で大事なことは先に言わないの!」

「うるせーな、こんなところでダラダラ油売ってたら、いつまで経っても戦闘に行けねーじゃねーか。わかったよ、なんとかしてやるよ。なんか変身するキーワードでも用意しろ。パピプペポ的な呪文とか、ぷりちーな決めポーズとかよ」


「いっそう! 恥ずかしいわい!!」


「わかった、わかった、耳元で金切声をあげんな! じゃ、こうしよう、飯を食ったら大きな声で『変身!プリティープリズムあずさ!』と叫べ。それで変身するように設定してやっから」

「ぷぷぷりてぃー!? ひっ、人前でそんなの言えるわけないじゃない!」

「じゃ、どうすりゃいいんだよ。早くしないと量子魔法が蒸発するぞ! そしたらまた飯だぞ!」

「もう! じゃ、えーとえーと、そうだ写真撮るポーズみたいに、指をこうして『変身』って言うから、そしたらそれを合図で・・・・」

 人差し指と中指でVの字を作り右目の上にやる。よく女子高生がやってる写真のときのVサインだ。

「・・・お前、はずかしくねぇの? そのセーラームーンっぽいの」

「はずかしいわよっ! でも叫ぶよりマシでしょ!」

「いっそ、ふり付きで『お仕置きよ』もつけてやろうか?」

「いらんわ!!」

「わかったから怒んなって。ルナちゃんのかわいいジョークじゃねーか」

「ルナじゃなくてウマじゃない、もうバカにしてっ!」

「ハイハイ、ウマでわるうござんしたね。ほれ、設定しぞ。早くゲートくぐれって」


 長々と喧嘩した挙句にやっと二人はゲートをくぐった。

 出た先は人気のない駅の裏口。魔女といってもどこにいるのかも分からない。

「すごーい、ホントに足立区にきちゃった。やっぱ都会だなぁ、街中コンクリートで覆われてる」

「すごーい、ホント田舎もんのお登さんみたい」

「うっさいわね、このウマ!」

「お、肩上げも取れない小娘に罵られる感触もゾクゾクしますな」

 街の風景に感嘆するあずさが面白いのか、ウマがイヤらしい口調であずさをからかう。

「うぇ~、変態・・・・」

「いいから魔女を探せ」

「そんなこと言ったって、どうすればいいのよ。しかもこの格好で・・・・」

「何のための量子魔・・・・お前なんかおかしいな。インストールに失敗してんのかぁ」

「え?」

「いや、普通、量子魔法の知識が一緒にインストールされるはずなんだが・・・・、まぁ後でログ調べるからいいか。まず飛べ」

「飛べ!? 飛ぶって空を?」

「他にどこ飛ぶんだよ。それとも戸部って駅名だと思ったか?」

「そんな駅なんて知らないわよ。どこのローカル路線よ!」

「飛べるんだよ。魔法少女は。単なる投影次元なんだからY軸なんか関係ーねーの」

「言ってる意味もわかんないし、やり方もわかんない」

 そんなことも知らないのかという言い方にムッとして憮然と答える。

「んだよ、そのぶっきらぼうな物言いは」

「だって知らないものは知らないもん」

「はぁ~」

 肩から付いたような大きなため息をつき、しょうがないと言った口調で飛び方を教えた。

「あの空のどこかに移動しようと思え、そしてそこに向かって体を動かせ。それだけで飛べるはずだ」

「ホント? それだけ?」

「それだけ」

 言うとおりに意識して体を動かしてみると・・・・ほ、ほんとに飛べた! まるで歩いてるみたいに。なにこれ! 歩くじゃない。移動してるって感じ?


「すごーーー! 飛んでるよ! 私! 飛んでる! 見て! 見て見て!」

 さっきまでぶすっとしていたのがウソみたいにおおはしゃぎだ。

「きゃーきゃー騒ぐな。下のヤツが見えげたらパンツ丸見えだぞ」

「え!」

 急いで腰から出ているひらひらを抱えて、お尻を両手で押さえる。下を見ると幸いなことに誰もいない。

「はぁー、びっくりした。だから早くいってよ」

「気づけよ! お前、女だろ」

「そうだけど、嬉しくって」

「あと、周囲から気づかれなくする量子魔法もあるぞ。石ころ帽子みたいなやつ」

「また迂闊な! 小学館にみられたら半殺しだよ」

「たとえだ、たとえ。変身したら常に起動させとけ」

「はーい」

「さてと、魔女はあの高い塔のてっぺんにいるっぽいな。あそこを起点に重力波が出ている」

「そこに行けばいいのね」

「Yes,Ma'am」


 スカイツリーを視界に捉えて、スーッと飛び始める。

 飛行は思ったよりもスピードが出ているみたいで、カラスや鳩なんかより全然早い。

 風を切って走る感じが超きもちいい! でも耳が多いからか風切音がうるさい。耳をふさぐにも4つもあるからどれをふさげばいいのよもう! って感じ。


 飛行中は特にすることもないので、自分の姿をあちこち見てみた。

「この服、レオタードみたいな感じになってるのかな? 体にぴったりだし」

「この髪どめの羽飾りとかはちょっとかわいいんだけど。なんでツインテイルになってるんだろう。こんなのできるほど髪長くないのに」

「ていうか茶髪じゃん!? 今さら気づいた私ってバカ?」

ずっと独り言。


「おい、着くぞ」

「ひゃいっ!」

「なにすっとぼけた声出してんだ?」

 うーちゃんのドスの効いた声が現実に引き戻す。気が付けばあっという間にスカイツリーまで到着してたのだ。

 魔女がいるのは何処だろう? きょろきょろと辺りを見回す。

「どこにもいないじゃ・・・・」

「よけろ!!」

「うわぁ」

 一瞬空間が歪曲して目に見えない衝撃波が右脇をかすめる。

「なに? 上から」

 上を見上げて衝撃波が来たと思しき先を見やると、ツリーの中ほどのある展望台の上に黒い服を着た人影が!

「だれか居るみたい」

「あれが魔女だ!」

 その言葉に緊張が走る。心臓が急にドキドキいう。


「狙われないように反対から回り込んで一気に近づくぞ!」

「う、うん」

 言われた反対側に身をひるがえし、空を蹴るように上昇して一気に魔女の背後に回り込む。

 だが当たり前だが、その動き始めは相手にも見えている訳で、ぐるっと回ったスカイツリーの反対側で同じく切り返した敵と鉢合わせだ。

「わっ!」

 予想より早い敵のお出ましにビックリ! 想像してない事態に目を閉じてあわてて急ブレーキで止まる。


「あなたが敵ってわけね」

 黒服の魔女の大きな声がする。

 その声に目を開けると仁王立ちに腰に手を当て、右手の人差し指で私を指さした黒服の子供がちょこんとそこに。

「あれ? 子供? 子供じゃん」

「あんただって子供じゃない!!」

 ぽろっと出た正直な感想にカチンと来てか、すかさず反撃が返ってくる。

 

 どんな相手なのかと、その子の姿をじっくりみる。

 こちらを睨みつける黒目がちな瞳に、整ったタマゴ型の顔立ち。

 髪型は編み込まれた黒髪が耳から上げられ、頭の後ろで結ばれている。だが眉を出した前髪のせいで見た目が妙に子供っぽい。

 服はぴたっとした黒のベストにレースが付いたスリーブ。下はパニエか何かでピッと開いた膝上のスカートだ。

 そこから黒のタイツをまとった足がスッと伸びているのだが、その肉感のない細さが更に幼さを醸し出している。


「うーちゃん、魔女っていうからてっきりマレフィセントみたいなの想像しちゃったけど、子供じゃない」

「ああ、おもったよかちっけーな。お前よりちっこいぞ」

 実際小さい、身長は130cmはあるかないかだろう。

「だからっ、子供じゃなぁいっ!!」

 敵はその言葉に過敏に反応し、小さな体を目一杯使って否定する。むしろその姿がかわいい位だ。

「小2くらいかな」

「だな、ガキだガキ。ガキ相手だ楽勝だ」

「うん、心配して損したよ」

「何、私ヌキで話てんのよ! ガキガキって!? 私は小5よ。もう大人よ」

「え!」

 あずさとウマの声がそろう。めずらしく。

「私より年上? だって身長だって大分小さいし、胸だってペタンコじゃん」

「胸は言うなっ! ペタンコはあんたもでしょ!」

「だって、私まだ小4だもん。これから大きくなるんだもん」

「私だって、これから成長すんのよ」

「だって、もう大人だって・・・・」

「大人やめました! これから大きくなる子供なのよ! そんなことどうでもいいのよ! 戦闘よ! そのためにここに量子結果張ってるんだから!」

 そう話を区切ると、敵はあずさから視線を外さず、自分の肩の横のマスコットに向かって声をかけた。

「ミー、武器!」

「はい、ナナミさん」

 すると彼女の手元の空間に光の粒が現れ、それが剣の形に結晶化し始めた。

 それは細身の剣、レイピアだ。刃渡りは1m近くあり、そのしなりに合わせて刃先が閃光を放っている。

「あんたを倒して、ここを頂くわよ!」

「え、何? ここを頂くって? うーちゃん悪い人を成敗するんじゃなかったの?」

「なんか最初に言った気がするなぁ。もう忘れちまったよ。そんな過去のこと。若さゆえの過ちだな」

「うわぁー、やっぱりだましてた。詐欺師だよ!」

「何がそんなに気になるんかなぁ。こいつは。戦うに悪も正義もねぇだろよ。じゃ、お前の正義はなんなんだよ。言ってみろよ。それに答えれたら謝罪でも土下座でもなんでもしてやらぁ」

「う、正義。正義。正義・・・・。人をだましちゃいけませんとか・・・・」

 苦し紛れに、ぱっと思いついたこと口にする。

「それがお前の正義なら、ウソついたやつには鉄槌が下ってもいいってか? 皆殺しか? だいたいお前はウソをついたことがねーのか! 人を騙したことがねーのか、えっ? 人を救うためについた嘘はどうなる。薄っぺらい正義かざして人を責めるのは愚民の常套手段だ。そういう衆愚が国を滅すんだよ! 正義は無限にあんだよ! バカ野郎! 権力に反対すりゃ正義だなんてどこの新聞社だてめーは! バカ、出直してこい!」

「う、う、う、そんなに言わなくても・・・・」

「そら、どうなんだよ! お前の正義を言ってみろ! きっちり。俺にわかるようによ! あ? え?」

 声が怖いから、ほとんど恫喝だ。


「う、う、そんなに。うっ、う、うわーーん」

「ぶぁーーん」

 変に緊張の糸が切れたところに、ぎりぎりまで追い詰められたあずさは本気で泣き始めてしまった。


「あわーーん」

「うわーーん」

 あずさは、そのまま泣き崩れて、空気の抜けた風船の様にふわりふわりと地面に降りてくる。

 それを1人と2匹がバツ悪そうに遠目から見送る。


「・・・・」

「・・・・」

「・・・・」


「本気で泣かしちゃった」

「本気で泣かしちまったな」

「本気で泣いてますね」

 地べたにぺたんと座って両手を目にあて、わんわんと大泣きだ。

「どうすんのよ」

「どうもこうもよ」

「戦いになりませんね」

 呆れる二人と一匹。

「あなた子供相手に熱くなりすぎよ」

「いやぁ、つい」

「ナナミさんも、ときどき悔し泣きしてますし、同類相憐れむってやつですねー」

「余計な事は言わないの! もう今日はいいわ。一方的に私のロスだけど挨拶がわりに引き分けにしてあげる。あんた、この子に伝えておいて。次はそうはいかないって」

「はいはい、本来、俺が伝言するのはおかしいけどな」

「今日は全てあなたの責任ですからね」

「わかったよ。どうせ量子魔力もほとんどねーんだ。引き分けでも俺たちはプラスだからよ」

 そういうとナナミは量子結界を解いて、どこかへ消えていった。同時にあずさの変身もタイムオーバーで蒸発した。

 すべての量子魔法が解除されると、そこにはスカイツリーの真下でわんわん泣いている一人の少女がいるという構図となった。

 辺りにいる観光客が心配して声をかける。「お嬢ちゃんどうしたの」と。


 小4にもなって人前で大泣きとは自分でも恥ずかしい。

 泣きはらした真っ赤な目を隠して、もと来た量子魔法ゲートまでとぼとぼ歩いてたどり着き、ゲートをくぐって部屋に戻ってきた。

 泣きじゃくる姿をたくさんの人にみられたのが耐えられない。そのまま、ばふっとベットに突っ伏し枕で顔を覆い隠す。

「うーちゃんのバカ・・・・」

「すまんかった。久しぶりの戦闘で俺も舞い上がっちまってよ。つい本気で追い詰めちまった」

「いいよ、もう。私だって・・・・」

 私だって、乗せられてひょいひょい足立区までいって、空を飛べたとか大喜びしてたんだもん。悪とか戦うとか私もそんな風に考えてなかったんだし。

 でもそれは言わなかった。


 一階から「夕ご飯よ」と呼ぶママの声がする。

 あずさはベットからゆっくり起き上がり「もうご飯食べて変身はないから安心だ」とちょっと寂しそうに言って、振り返らずドアを閉めた。

「・・・・ああ」

 トントンという階段を下りる軽い音が小さくなっていく。

「・・・・正義なんてねーんだよ。俺もだ」


 あずさの家は三人家族だ。夕食は家族が食卓を囲んで食べるのが御子柴家のルールになっていた。パパがいつまでもそういう家族で居たいって言ったから。

 食卓には大皿に唐揚げが盛られている。私の好物。ママが私が元気ないの知って作ったのかな?

 大好きな唐揚げと、のほほんとした両親に間でご飯を食べていると、今日の失態も次第にやわらぎ、現金にも段々元気になってきた。


 テレビが今日のニュースを流している。

「次のニュースです。東京で撮られたこんな映像をご紹介します」

 テレビのアナウンサーが次のニュースを紹介している。

「あら、おもしろいニュースが流れているわよ」

「ん?」あずさも顔を上げてテレビを見る。

「へー、足立区の真中でコスプレ少女ですって。なんかあずさに似てるわね、この子」

「ぎゃーーーー!!」

 な、な、なんで私が映ってるの!!

「ち、ち、違うよ。こ、この子! わ、私じゃないよ! 私より太ってるし、そう、おなかのところとか私よりぷっくりしてるじゃん。ね、ね、ねっ」

「そんなに全力で否定しなくていいわよ。似てるだけなんだから」

 ママがどうしたのと不審そうな声をあげる。

「そ、そう・・・・だよね。あは、あは、あは・・・・」

「これ東京の話だよ。あずさ」とパパのフォロー。

「ですよねー。ごちそうさまー!」

 これ以上ここに居ては墓穴を掘りそうなので、と言うか余りの痛さといたたまれなさに急いで二階に駆け戻る!


 うーちゃんを問いたださなきゃ! 腕まくりしてドアを開け放つ。

「うーちゃん、全然バレバレじゃん! テレビに私映ってるし! いきなりパパとママにバレるところだったよ!!」

「あ、だれもカメラに映らねーっていってねーぞ」

 歯牙にもかけぬ態度が憎たらしい。人ゴトだと思って!

「なんのための変身よ! 匿名性の欠片もないじゃん!」

「変身の意味? んなもんかわいいからに決まってんだろ。かわいいは正義だ!」

「正義なんてねーって、言ったのお前だろ!! もう、うーちゃんのウソつき!」

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