第4話「TSしちゃった!」

この先だって?


そんなの体験しちまったら


いったいどうなっちまうんだ!


この俺は!?


 と、思った海は、はたと気づいたことがあった!


「てか、俺ってVRをつけたまま動いてるんだよね?」


「まあな!」


 兄貴は海の問いに、ニヤニヤしている。


兄貴が笑ってる!!だよなあ。と、いうことは!?俺がエロエロな行動をしている動きを、兄貴はニヤニヤしながら見てるって事か!?早く言えよ!!


「それじゃあ、俺のエロ行動が丸分かりじゃん!!」


 海が猛然と兄貴に抗議した!!


「まあ、まてまて!いい話をしてやる!!なんか気づかないか?例えば、遊園地で結構な距離を歩いてよなあ?実際に部屋の中で歩いていたとしたら、いったいどうなると思う?」


 兄貴にそう言われ、部屋の中を見渡す海。


あれっ!?この狭い部屋の中を俺は歩いてたのか?いったいどうやって?VRの中で歩いた距離は実際には歩けないよな!?


「気づいたか?」


「いや、分からん。どうやってるんだ?俺はそうとう歩いてたぞ!本当だったら、部屋の壁にぶつかって、それ以上は歩けないはず!!」


「じゃあ、種明かしな!……そのVRには、空間認識センサーが入っているんだ。VRをつけて本当に歩けば、ぶつかってしまう距離でも、センサーが距離を測っていて、歩く距離を調整してるんだ。つまりは夢の中で歩くのと一緒だな!実際には歩いてないけど、歩いたと脳に錯覚させているんだ!!」


 兄貴は自慢げに海に言った。


「スゲーな!!でもVRでは、現実に歩いた疲労があったぜ!」


「それも錯覚な!そう、脳に認識させているだけなんだ」


どこまでスゲーんだ、VRは!?


 と、思って海は改めて兄貴に尋ねた。


「じゃあ、俺のエロエロ行動は!?」


「大丈夫!そういった行動については、現実の行動に反映されないようになっているんだ!もし外で、大事な所がテント張ったら大変だろ?」


「ああ!マジでやばいぜ」


「あと、パンツが汚れても大変だろ?」


「ああ、それも勘弁だな!」


「夢の中でトイレを済ませても、漏らしてないだろ?それと同じ、脳の迂回回路を刺激して、体に反応を出さないようにしてるんだよ!だから、イカ臭いなってないだろ!!」


 兄貴に言われて、海はイカ臭くない自分に改めて気が付いたのだった。


「しかし、スゲー技術だな!!」


「ああ、でもまだまだ、これからだぜ!」




―――ゴクリ!


 海は兄貴の言葉に唾を飲み込んだ。


「さてさて、今のより先に進むまえに」


 兄貴は、人差し指と中指の間から、親指を出すという、怪しいグーを海に向けながら言った。


「今のより先って!?」


 海は兄貴の言葉に物凄く反応した!!


「良く聞けよ!!先に行く前に、もっとVRでなければ体験出来ないことをしようじゃないか!ってことだ!!」


「VRでなきゃ、体験出来ないこと!?」


今より先に行くよりも、それは良いことなのか!?


 と、海が思っていると、兄貴はニヤリと笑って、またもや外側にある液晶画面をいじり、体験内容を変更し始めた。


「でっ、次ぎはどんなの!?」


「まあ、スイッチを入れれば分かるさ」


 兄貴はもったいぶって言ったのだった。


―――カチッ




 海は目が覚めた。


ここは、どこだ?


 見ているそれは、知らない天井で、そして、かけているそれは、知らない布団だった。


「んっ!」


 朝特有の体のだるさを感じた海は、布団の中で背伸びをした。


「よいしょっと!」


 そして、勢い良く体を起こし布団をどける海は、着ている服に違和感を感じた。


あれっ!これって?


 いつものパジャマと違う、長いすそ。着ている服はワンピースのようなものだった。


 ふと、めくってみた。


「えっ!?」


 それは、どう見ても女の子のパンツだった。海は自分が履いている女の子のパンツをマジマジと良く見た。そして、重大なことに気が付いた。


「えっー!?」


 それは、いつも見慣れた膨らみが、股間に存在してなかった驚きだった。


「えっーー!?」


 それは、もしや!と思って自分の胸を触ってみたら、膨らんでいたことへの、ちょっとした喜びだった。




―――もにゅっ!!


「はう!!」


 自分で揉んだ胸の気持ち良さに、海は声をあげてしまった!!


俺、女の子になってるううう!!!


 海はそう思いながら胸を、また揉んだ。


モミモミモミモミ


まさにこれは、俗に言うTS(transsexual=性転換))っていうやつじゃないかああああ!!!


 海の手は止まらない。


自分の胸


自分のおっぱい


おっぱいなのに




スゲー!気持ちいい!!


 海は自分の手の平の心地良さと、揉まれることでの心地良さのダブルイリュージョンを体験していた。


モミモミモミモミ


 海はひたすら自分のおっぱいを揉んだ。


モミモミモミモミ


ヤッベー!!これなんなんだ!?


「くっーーーー!!!!」


 ひとしきり揉んだところで、布団に突っ伏した海は、手の平にコロコロと当たるものに気づいた。


 それを優しく手の平で転がすと、胸の先っぽから、ジーンとした快楽の波が、海の背筋を駆け抜けた。


「あんっ!!」


 海の口から、女の子の声が出でしまった!!


なんで変な声が俺からでるんだよ!!


 海は慌てて、声が出ないよう、自分の口を押さえた。


ヤッベー!やべーよやべーよ、なんなんだよこれ!?まだ服の上からなのに?てか、女の子って寝るときはノーブラなんだな!!


 海は、自分の胸をわしづかみにしている自分の両手を見た。


ノーブラ


ノーブラ!


ノーブラ!!


てか、この体は俺の体!!!


 海は、意を決した。


良し!俺は俺の、おっぱいを直接触るぞ!!


 そして海は、服のすそから手を入れた。




―――もにゅっ!!


「はうーっ!!」


なまちち!ヤッベー!なまちち!!柔らかくって、とろけそうだ!!!


 海は自分の胸を触り布団の上を行ったり来たりゴロゴロした。




―――もにゅっ!!


――もにゅっ!もにゅ!!


 自分で自分の胸を触るため、快楽の極限まで握ったり揉んだり出来た!


「はあ、はあ、はあ」


ダメだ!まだ、おっぱい揉んでるだけなのに、意識が飛びそうだー!!


 でも、海は強い興奮に突き動かされ、次の行動に移った。


こっ、コリコリ




―――ゾクッ!!


「うあああっ!!!」


 海の背筋がピンとなった!


先っぽ、つまんだだけなのに!?こんなになるのか!!


 快楽のシビレが、海のつま先まで駆け抜けた!!


やべーよ!頭が変になっち……まうよ!!


コリコリ、コリコリ


 無意識に指がつまんでいる。


「はうっ!」


 指が動くたび、腰が無意識にむずがゆくなり、ムズムズと勝手に前後に左右にと動いていた。




―――キュッ!!


 強くつまんだ!


「あーっ!ダメ!!」


 気づくと海の目に、涙がたまっていた。


自分でやってて、ダメ!!ってなんなんだよおおお!!自分がバラバラになって、頭の中が真っ白になる。なんなんだ!これは!?


「はあ、はあ、はあ……」


 海は手を止めた。快楽の余韻が身体中に広がり跳ね返って来た。


「はあぁあああ、おかしくなりゅうぅううう!はあ、はあ、はあああああ」


 海は自分の息が荒いことに気づいた頃、さらに意を決して行動することにした!


こっちは


いったい




どうなっちまうんだ!?


 快楽への知的好奇心?それとも本能の大興奮なのか?海は、片手でおっぱいを握ったまま、もう片手の手を、少しずつ下にずらしていった。


「くっ!」


 自分の体をはう自分の手に、感じてしまう海。


 手がヘソを通過する。




――ツンッ


 と、指先がパンツのフチに当たった。




―――ゴクンッ


 海は唾を飲み込んだ。


行っけー!俺!!







“男”になるんだ!?


 いや、女か!?と、最後の言葉に自分でツッコミを入れたまま、海は強い想いで自分のパンツの中に手を入れたのだった!!!


◇◇◇


「どうだった?」


 兄貴は海に聞いた。ゴーグルを外した海は、顔を真っ赤にしたままだった。というか、立ってられなくて、女の子みたいにペッタン座りだった。


「どうだった?」


 兄貴は再び聞いた。


「もお、気持ちよすぎてぇ、良く分かんないよおお」


 海にはまだTS体験の余韻が残っているようで、女の子のような言い方になっていた。


「それに腰が抜けて立てないよおお」


 もう、恥ずかしくて仕方ない!そんな感じだった。


上手く言えない。上手く言えないけど


「女の子の体は、頭がおかしくなるくらいに気持ち良かった」


 そう言う海の口からは、ヨダレが垂れまくっていた。


「快楽の神経、A10神経をピンポイント刺激だからな!それも半端なく!!それが女の子の快楽らしいよ!!男の快楽とは別だよな!!!」


 兄貴は同情のような言い方をしていた。


「てか、TSしての生活はどうだった?」


 兄貴はニヤニヤしながら聞いた。


「ああ、TS生活かあ。まあ、とにかく、トイレが参ったよ!男はブンブン振ってお終いだけど、オシッコのあとはちゃんんと拭かないと、痒くなるんだな!!」


 兄貴は海の言葉に深くうなずいた。


「それに、あの日の辛さも分かったよ!今、納得したけど、だから女の子って血に強いんだな!!改めて分かったよ。でも、冷えとかストレスって大変だな、スゲー!腰が痛かったし

。てか、俺……







 レバー食えるか心配だあ」


 女の子の秘密を知ってしまった海は、少し遠い目をしていたのだった。


つづく


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