第7話

 源太がここにいることを確かめるように、キスを続ける。源太の身体をもっともっと感じたくて、成隆はキスしながら身体のラインをなぞった。力仕事の多かった源太の身体は引き締まっていて、細いけれど確実に筋肉がついている。入院して少しそれが衰えたような感じはするが、それでもすべすべできれいなラインに、触っている成隆の方がうっとりとなる。


「……成隆っ、やめて……」


 源太が小さな声で抗議する。


「何で?」

「……なんか、ヘンな気分になる」

「いいよ? 変な気分になっても?」

「ダメだって……壁、薄いし……きこえる」

「いいじゃん。聞かせてやろうよ? 俺、源太が世界一好きなんだって全人類に叫び回りたいくらいだし?」

「成隆……言いながら変なところっ……んぁっ……触るなよ……」


 いたずらをする子どものように、知らんふりをしながら、成隆の手が源太の太股を撫で回す。時折、形のいい指が付け根を触っては逃げていくのに、源太の息が上がっていく。ゆるゆると足と足の間が広がっている。


「源太、怪我まだ直りかけだし……だから、ちょっとだけ、ね?」

「ちょ、ホント、だめだってば!」

「全部、欲しいんでしょ? 俺も源太の全部が欲しいんだけど……ダメ?」


 ここで目をそらしたら、以前風呂の中でやったおふざけの続きになってしまう。そう感じた成隆は、まっすぐ源太の目を見つめる。逃げ場を失い折れたのは源太の方だった。ふっと諦めにも似た息を吐いたが、その中には既に色欲が混じっている。手を伸ばし、成隆に抱きつくと、耳元で囁く。


「……いい、よ?」


 低く甘やかな響きを持った、世界一の言葉。

 成隆の下半身から、脊椎を通って、全身へ拡がっていく。脳味噌に届いたとき、最後の理性がぶっ飛んだ。

 下半身をまさぐっていた指を止め、腰が跳ねた瞬間を狙って短パンをずり下ろす。しばらくは素肌を楽しんでいたが、やがて下着をずらして中に入っていく。既にゆるりともたげていたソレをゆっくりと滑らせずらし、下のぷくぷくとした玉を揉み込むように触っていく。

 源太の背中に回していた反対の手をそっと抜き取ると、こちらはTシャツの下から中へ進入していく。源太が腰を浮かしていたので背中から乳首の方まで隅々と堪能する。源太の肌はすべらかすには本当に気持ちがいい。めくれ上がったシャツからちらつくきれいな牡丹色の乳首をくるりと回すように摘むと、源太の口から甘さを含んだ息が漏れて、もっともっとそれが見たくなり、夢中で手を早める。


「全部脱がせるよ?」


 源太の返事を待たずに、腰が浮いている間に下着も脱がせた。上はシャツを着ているのに、下は何も着けていない羞恥からか、源太は成隆に抱きついて見ようともしない。


「源太、ちょい、離して? これ、脱がすから」

「……恥ずかしい」

「恥ずかしくしてんの。エロい源太が悪い」

「俺、エロくないよ?」

「何言ってんの、ココ、こんなにさせといて?」


 下着を取り払うと、源太のモノが完全に勃起しているのがわかる。


「バカ、言うなって!」

「何回でも言うよ? だって、大好きな人が俺に感じてくれてて、気持ちいくなってくれてるんだよ? ほら、見てみなって、ビンビン」

「バカー!」


 わざと言葉にして煽る成隆に、源太がぽかぽかと胸を叩くが、恥ずかしさが上回っているせいで何のダメージにもなっていない。それどころか可愛すぎて成隆の血圧を上げていることすら気付いていない。


「触るよ」


 成隆だって、恥ずかしい。気持ちが通じあったセックスが、こんなにも嬉しくて恥ずかしくて気持ちいい。自分の中の爆弾が、何回でも爆発する。起爆剤となって、行為の原動力となる。

 触れるだけのキスをしてから、成隆の舌が下に下に移動していく。首筋、鎖骨。源太は自分のものだと、源太にも他人にもわからせたくてがりりと痕を付ける。


「あうっ、あっ……」


 気持ちいいところを成隆の指がかすめる度に、源太が耐えられなくなり声を出す。風呂でのセックスのときは声を漏らすのを我慢していたらしい、その痴態の変わりように、成隆までが煽られる。自分の下半身がむくむくと芯を持つのを感じた。


「気持ちいい?」

「んっ、なるたかぁ、もっとぉ……」

「うん、覚悟しろよ?」


 腹に移ったキス、それと同時に下半身への刺激も開始する。同時に与えられる快感に、源太の腰が若鮎のようにぴくんぴくんと跳ね出す。


「おいしそうに立ち上がりました。いただきます」

「へ? あ、ちょっ……! くち!」


 成隆がためらいもなく源太のモノを口に含んだので、源太は焦ったが、骨折した身、そんなに激しく動けるわけでもなく、されるがままにくわえられてしまった。

 上下に絡みつく舌。源太に感じてもらえている。


「ぁあっ、ね、出るっ」

「いいよ」

「だ、だめだって……あっ、ちょっ、離して! マジで、出るから! ね、っ……!」


 源太は抵抗を続けたが、裏筋を撫でられた瞬間、白く濃い液をびゅくびゅくっと溢れさせてしまった。成隆はこくこくと喉を鳴らしそれを飲み込む。


「……よかった?」

「飲んだ!」

「当たり前だろ? 源太のだぞ? 一滴だって逃さねぇよ。俺のだからな」

「バカー!」


 信じられないといったふうで、源太がバカバカ繰り返す。


「バカバカ言うなよさっきから」

「だ、だって、そんな、飲んだ!」

「何ならお裾分けしようか?」


 言うなり、成隆が口付けて舌まで絡ませた。精液の青臭い味が源太にまで伝わって、動揺しているようだ。それでも、柔らかいところを何度も舐めると、またおかしな気分になってきたらしい、さっきまで怒っていた目がとろんとしてきた。


「ね、源太。後ろ、初めて?」

「……うん」

「初めて、俺にちょうだい?」

「……うん。いいよ」


 キスの後、目が合って。肯定されると、もう。成隆の手はもう止まることなどできなかった。

 成隆は一度ベッドから降りると、ごそごそと鞄をあさり、ゴムとローションを取り出した。


「ちょ、何で持ってんの!」

「男のたしなみってやつですよ?」

「……誰かとやってんの?」

「まさか! 初めてだよ。なにもかも、源太としかしてないよ」

「あ」


 成隆の言葉で、以前風呂の中での行為を思い出したらしい。そういえばキスは今日が初めてだと、今になって気が付く。


「ファーストキス、ファーストえっち、全部今日です」

「マジでか!」

「源太は? って、ダメだ、落ち込むから言わないでくれ」

「……はじめて、だよ?」

「……マジで?」

「うん、俺も、成隆とが、全部、初めてだよ」


 天にも昇る気持ちだった。全部、初めてをもらえる。これからも、源太は成隆しか知らないし、成隆は源太しか知らない。本当の意味で独占できた気がして、とても嬉しかった。


「だから、優しくできなかったらごめん」

「ううん、だいじょぶ」


 腹ばいの格好でお腹の下にまくらをつめこみ、お尻を差し出す格好にさせる。源太がなんだか変な気分だと呟いたのに、くすりと笑う。


「冷たかったらいってな?」


 ローションを穴に垂らす。そして、滑りを使って、指を挿入させる。


「痛くない?」

「ん、だいじょぶだよ」


 ネットで見た知識を元に、俗に言う「いいところ」を探す。ぎゅむーぎゅむーと押していくと、ある一点で源太の息づかいが変わった。


「あ……そこ、ヘン……」

「ここ?」

「あんっ、ああっ……なるた、かぁ……おかしくなっちゃうよぉ」

「おかしくなっていいよ。一緒に気持ちよくなろう……?」

「ぅんむっぅっ……」


 何度も押していると、源太の声が大きくなってくる。ここが前立腺というらしい。バックだから源太のモノは見えないが、恐らくは立ち上がっている……といいなと思う。


「なんか、ヘン……ふち、ヘン!」


 指を増やし、中をほぐしていく。ピンク色に染まった双丘が誘うように蠢いていて、我慢が出来なくなる。成隆はズボンを下ろし、ゴムを装着する。


「入れるよ? いい?」

「うん、たぶん、大丈夫」

「そっと入れるからな……」


 ただでさえ激しい運動はできない源太に挿れることに良心が痛むも、燃え上がった身体を沈めるなど、ここまできたらできそうにもない。後は中に入るだけなのだ。先端を宛がうと、自身をゆっくりと中へ進めていく。


「う、きつっ」

「は、ああっ……! な、るたかぁ、はいっ、た?」

「入ってるよ、もう少し、待って」


 慎重に進めていく。全部入るまでにかなりの時間を要したが、全てを入れることができた。源太の中は暖かくて、普段何かを入れる場所ではないそこは異物を排出しようと蠢いていて、それが何度も成隆にからみつき快感の波を生む。


「はいった、よ……?」

「成隆、きもちい……?」

「うん、気持ちいい。スゲーいい。最高だ」


 ゆっくりと腰を動かす。ただ、激しくは動かなくても、源太の動きに昇天させられそうだ。先ほどの場所を、押し込むようにすると、源太の息も色が付いてきた。それを何度も何度も繰り返すうちに、頭が真っ白になってきて、もう出すことしか考えられなくなってきた。


「源太、出すよ?」

「ぁっ、へんだよ、なるたかぁ、俺も……もっかい出るぅ」

「いいよ、出そう?」


 成隆がゆっくりと出たり入ったりを繰り返すうちに。互いの快感が頂点に上り、成隆は源太の背中めがけて、源太はまくらの下に入れたタオルの中に、それぞれ吐き出した。

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