第33話 真実(1)
とりあえず店に入った以上、何か注文しないと店の人に悪いよな。睨まれるじゃん。居心地悪くて話どころじゃなくなるし。そういうこと母さんは気にしない人だけど、俺は気にするの。ってか気になるじゃん。やっぱ悪いって。気にしない母さんや
晩飯抜かれる
まだまだ育ち盛りなんで、晩飯抜かれるのは地味にきついんだよな。だから母さんを怒らせたくなくて、ここは黙っておく。
テーブルについてすぐ携帯電話で会社に連絡していた母さんは、すぐ出社しないといけないとか時間がないとか言ってたくせに、ちゃっかりコーヒー頼んでやんの。サービスの水で十分とかとんでもなく神経図太いことを堂々と言ってたくせに、俺より先に注文してるし。だから俺も、ここは母さんの奢りってことでコーヒーを頼んだ。
別に格好をつけるつもりとかないけど、こういうところでコーラとか頼むとストローで飲まなきゃならないじゃん。俺、嫌なんだよね、ストローで飲むの。グラスの
資源の無駄
女の人みたいに、化粧の口紅落ちるのが気になる人は仕方がないといえば仕方がないし、俺だってそんな細かいことにまでごちゃごちゃいうつもりはない。だからストローを使う人まで否定するつもりはない。いや、色々いっちゃったけど。
使う人はさ、ほら、マイ箸みたいにマイストローも持ち歩けばいいじゃん。ストローもさ、使い捨てにしないで洗って再利用!
エコでお願いします
通勤時間帯の今は客が多いらしく、店員は大忙し。なんかマジ、顔とか引き攣ってる感じがする。でも逆に客は余裕があるというか、優雅というか。俺だったら、この優雅なコーヒータイムも睡眠時間に充てるんだけどな。
「で、なに?」
コーヒーなんて簡単なオーダーだったからすぐに来たのはいいけれど、母さんは有無をいわせず俺の分まで砂糖を奪い、当たり前のように自分のカップに入れる。ちょっと入れすぎじゃありませんか? 糖尿病とか、大丈夫ですか? 母さんももう若くな……ゲフンゲフン……なんでもありません。
「
母さんは砂糖たっぷりのコーヒーをスプーンで混ぜながら、ちょっと急ぐみたいに早口に切り出してくる。ミルクを入れてないから、一見すると格好良くブラックコーヒーを飲んでいるように見えますが、これ、砂糖二人分入れてますから。物凄く甘い、激甘コーヒーですから。
まぁ本当にブラックコーヒーなら、スプーンでかき混ぜる必要はないんだけどさ。
「母さん、
「知らないわよ。警察で聞いただけ」
ちょっと驚く俺に、母さんはコーヒーを飲みながら応えてくれる。もちろん会ったこともないし、声すら聞いたこともない。つまり電話で話したこともない、ともね。
「雪緒ちゃんっていうの?
なんか今、サラリと核心を突いてきましたよ、母さん。今、サクッと核心を突きましたよね?
「航平さん?」
「お父さんの弟よ」
まるで知ってるでしょ? と言わんばかりの母さんは、澄ました顔でコーヒーを飲む。ちょっと格好付けているように見えますが、甘くないですか、そのコーヒー。凄く甘くないですか?
「いや、名前は知ってるけど……でもさ、もう1人いるじゃん」
親父は三つ子だ。弟は2人いる。なんで航平さんって、あたかも当然のことみたいに確定してんの? しかも自信たっぷりっていうか、それしか答えがないって感じがする。
「なに言ってるの、
亡くなってるの? 庸平さんはもう亡くなってるの? しかも母さんの話じゃ、親父より早く亡くなってるって……そりゃ航平さんしかいないわけだ。
これはもう間違いないよな。疑いようがない。親父の免許証を持って 「
「あんた、航平さんと庸平さん、勘違いしてんでしょ。
なんでここで清隆が出てくるわけ? 関係ないから。今、清隆君は関係ないから出さないで。また話が脱線するから。
直進してください
母さんの話では、やはり結婚前に親父が養子だったことや、三つ子だったことは聞いて知っていたらしい。俺の予想通り、弟のどっちかが 「穂川周平」 を名前で運転免許を取得していたことも知っていた。
そういえばじいさんが言ってなかったか? 親父は結婚前に、母さんには養子だって話してるはずだって……。
「航平さんはね、一番最初に引き取られたのよ。結構お金持ちのおうちって聞いて、一番乗り気だったんですって」
三つ子の中で一番最初に引き取られたのが、三男の
【後書き】
ひょっとして、しばらくおっさんたちの話か?
ってか、ここを省くと話がわかんないよな。解決にならないもんな……面倒だけど……
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