それでも私は歩いていく、そんな世界でも一欠片の希望があると信じて

ノエルCV山寺宏一

本名ノエル・B・スリード

年齢、35歳

30代とは余り思えない顔立ちで目は黒く瞳は赤い

あらゆる契約者を絶望へと追い込む行為を行っている張本人、契約者滅亡派のリーダー

軍人であり、連合軍の指揮官

頭脳明晰で契約者を滅ぼすならどんな手も厭わない邪知暴虐で知られる。

昔から親に契約者を滅ぼせと頭に叩き込まれていたのでその精神は根付いている。

ルナの両親の殺害、キュウスイ家の滅亡

ショウの両親の殺害等の犯罪を繰り返してきた。

腰に軍刀と拳銃





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




ノエルはハルベロス国のユピテルの村に構える作戦会議場の様なもので椅子に腰掛けていた。

予想どうりに名前のない怪物は動いてくれたという報告を受けて少し安心感を覚えていた。難攻不落の要塞グソーに足を踏み入れたという知らせを受けたなら尚更に、これで名前のない怪物を殺し、契約者達に大いなる絶望を見せ付けることが出来るチャンスなのだから。

縦長のテーブルに地図を広げチェスの様なものを連合軍の兵と仮定して今後の侵攻を考えながら情報を待っていた。


ここでガタッ、と扉が動き軈て扉が開いた。開けた主は金髪に少し小太りな身体、目付きは少し悪くきちっとしたスーツを来ている人間、ノエルはその人物を見て愛想笑いなのか少し微笑みながらどうぞ、と言った。その入ってきた主は







現アメリカ合衆国大統領

“ドナルド=トランプ”

トランプは用意された椅子を全体重を乗せて座る、少しギシ、と椅子が軋む音がしたがそれはノエルもトランプも気にしてはいない。



「今の連合軍の現状はどうなんだ?劣勢か?それとも優勢なのか?」

ノエルは顎に手を当て少し悩んだ素振りを見せたが直ぐにトランプの質問に答えてくれた。

「どっちかっていうと、今はこっちの優勢ですよ、大統領閣下」

そう答えたらすこし微笑んで気分を良くしてくれたようだ。やはり機嫌取りは難しい。

「名前のない怪物とか云う規格外の戦闘能力を持った人間達はどこに向かったんだ?滅ぼせるんだろうな?」

「左様でございます、名前のない怪物はハルベロス国屈指の難攻不落の要塞グソーに向かっております、これで全滅できる確率は少しは上がるかと。」

その言葉を聞いた瞬間、脂汗を垂らして机を力任せに叩く、何故か名前のない怪物の話題になると物凄く気分を害してしまうようだとノエルは思い自分の頭にメモしてインプットした。

「確率の問題じゃないんだッ!私が求めているのは“確実な滅亡”なのだ!分かるか?私は契約者を恐れている、もしかしたら人間以上の力を持ち世界を思うがままにしてしまう気がしてならないんだ!!その為にどれだけ核兵器を使い、名前のない怪物を誘き出したと思っているのだ!もうこれ以上核兵器を使ってしまったら世界が壊れてしまう!これ以上使いたくない!兎に角!この第三次世界大戦で必ず名前のない怪物を滅ぼし、契約者に絶望を見せつけるのだ!いいな!」

そんな長く、利口主義のような大統領の言うことなんか半分も聞いてなく聞き流していた。しかし名前のない怪物を滅ぼすのは決定事項だからその要望には応えよう。

しかし毎回ここでトランプの嗚咽を聞くなんて本当に面倒臭い、ーー嗚呼、忌々しい、腹立たしい、今宵、ノエルの頭の中はその言葉だけで薄まいていた。

ノエルは面倒臭いのは嫌いで、嫌なことは最初に移すのがクチだった。ノエルはおもむろに立ち上がってトランプの前に立った。

「なんだ?何なんだお前は?何がしたいんだ!?」

ノエルはトランプの言動を無視して懐に手を突っ込んだ、そして取り出したのは....。



拳銃、それはトランプを簡単に殺す事ができる凶器であった。

トランプは意気消沈し何も言葉を発することなく身体を震え、怯えていたが何のためらいもなく拳銃をトランプのおでこに当てた。



「サヨウナラ、大統領閣下」



銃声が、響いた。

トランプは頭から血が噴水のように吹き出し、そのまま彼は、動かなく、なっ、た

そのトランプの躯に背を向け扉を開ける。

「これで賽は投げられた、漸く私の計画は成功する。」

扉の隙間から差し込む光に目を細めながら、呟いた。








そして難攻不落の要塞、グソー。


グソー郊外の鬱蒼とした森林地帯はナナシの予想どうりに連合軍の兵士は存在していなかった。ここだけは守備は柔らかいのかも知れない、しかし“人間ではない”何かがいた。

その何かはイカロスが逸早く気づき殺しているがその何かを凝視すると人間ということに気づいた。

「やっぱり、ねこれは連合軍に強制的に契約させられた人間だよ。」

契約は限られた人間しか契ることが出来ない、力ない人間に契約すると力が抑えきれずにこのような人外になってしまうのだ。血だまりに沈む五体ほどの契約者の狼のような顔を見ればすぐに分かることだ。

「酷い.....そこまでして私達を殺したいの......?」

ーーこんなの

ーーこんなのあんまりじゃないか。

確かに連合軍は第三次世界大戦で勝利したいのは分かる、確かに幾度となく国に核爆弾を落として国を滅ぼしてきた。でも、そこまでして名前のない怪物、ハルベロス国に勝利したいからって態と契約をさせた普通の兵士も契約に巻き込むなんてどれだけ犬畜生にも劣る真似をして何がしたいのか、そこまでして得た勝利になんの意味があるのだろうか、そんなことは名前のない怪物全員が思っていることなのだろう。

「しかし、な」

血だまりに沈む契約者を見つめ、言った。

「こんな事で立ち止まっていたら、このまま死んでしまうだろう?今は前を見るしかない、そうだろう?」

「そうだね.....私達はこれを踏み台にして、世界を変えなきゃ、いけない。」

「俺達の生命を賭しても、救わなきゃいけないものがある、それはみんなが思っているし、世界中の契約者は愚か、世界中の人間が望んでいることなんだ。」

そんな暗い話をしていたら耳元の小型通信機が反応を示した。ナナシだ。名前のない怪物は耳に手を当て、通達を確認する。

「はいはーい♪ネガティブな話の途中に失礼しますッ、今回のグソーの作戦は二チームに分かれてもらいます♪まず一つ目はグソーの作戦会議室を制圧する事に適した人間、ダイ、カケル、お兄ちゃん、そしてもう一つは回り込んで敵兵に奇襲をかける班、ルナ、チャイミー、イカロスです!作戦を開始してください!ルナ班は回り込んで、お兄ちゃん班は真っ直ぐ特攻みたいに出撃して下さい!健闘を祈ります♪」


陽気な笑い声が強かに通信機越しから響いた後に音通が途切れる、次は敵を皆殺しにした後に作戦の通達を聞くだけだ。

「よし、じゃあ俺達はグソーを滅茶苦茶にしてくるから君達も頑張ってね。」

ショウはそう言い残して颯爽とこの場から去り、カケルとダイはショウの後を追う、それをチャイミーは赤い瞳で眺めながらショウとは真逆の方向に走っていった。

この鬱蒼とした密林地帯にどんな敵が潜んでいるか心配だが、もう堕ちた契約者の襲来も耐性がついた。こうなれば普通に殺せるだろう。

「(確かグソーには守り神がいる筈だ、ショウ、もし遭遇したら逃げる事だけを考えてくれ......)」






密林地帯を抜けて直ぐにグソーに突入する門が見えた。

ハルベロス軍も進め!という隊長の合図で一斉に軍が動く、グソーの門に差し掛かって、漸く連合軍の動きも変わったみたいだ。巨大な城壁から銃を打ち放っている者や門で待ち構え、伏せながら機関銃を構えている者、ハルベロス軍はそれを魔法の結界で防ぎながら撃退していく、名前のない怪物も機関銃を人間ではない様な動きで無数の銃弾の中を掻い潜り惨殺していく。

門が開きアバターも現れる中、カケルの白の疾走弾をサポートとし、ダイとショウが白の疾走弾でたじろぐ兵士を切り伏せ、突き殺していく。

「ハハハッ!やっぱりお前達は俺らに殺される運命だったって訳だ!なぁ!ダイ」

「あぁ。」

何発撃っても当たらない、寧ろ連合軍の方が損害が出るばかりであった。アバターも瞬時に破壊され、獣(契約させられた契約者)も胴と首を切り離され、ダイの天空落としで大地を抉りながら何十人という兵士が一瞬で亡骸と化す。

恐れをなした兵士は逃げ纏いながら「化け物!化け物!」と叫んだ。ーーいいじゃあないか、化け物で。とショウは返り血を浴びながら思った。

グソーの内部以外は全て制圧し、辛うじて生き残っていた兵士も今では降伏し、両手を上げて銃を落とした。

ガシャンという音を立てるが、もう兵士達は銃をもう一回拾い、騙し討ちをしてくる素振りも見られない。

名前のない怪物に恐れをなしてもう勝てないと判断したのだろう。

この瞬間で後は残っているのは内部のみ、いま外にいる兵士は全て敗残兵と化した。

「よし、後はグソーの中を制圧すれば良しだね、チャイミー達は上手くやっているか心配なのだけど。」

カケルはそんなチャイミー達の現状を気にもせずに前を見据えていた。

「そんなことは気にしなくていいさ、あいつらは死なない、チャイミーがいるなら尚更にな。」

「今ここで話している時でも、あいつらは人を殺しているだろうな。」









とここでグソーの大地が唸りを上げて揺れる、それに逸早く反応した三人は武器を構え、地震が起こってもバランスを崩さないように両足を広げて、異変の進展に身構える。すると内部へと続く門に何やら巨大な魔法陣が描かれており、前まではこんなのはなかった筈、誰もが異変を感じていた。魔法陣はチャイミーが出す魔法破よりもう一回り大きい巨大な物。

連合軍はこんな事を予想しといたのかグソーの深層部に眠られていた守護神(ガーディアン)を目覚めさせていたのだ。名前のない怪物に完全なる敵意を持った守護神は魔法陣からゆっくりと姿を現す。

連合軍が目覚めさせたのなら守護神は命令をインプットし従うのみ、命令は契約者の殲滅である。今、グソーの中にいる連合軍は作戦会議室のモニターで戦闘風景を見ているのだろう、守護神は素晴らしいとか、やっと化け物が死んでくれるみたいな事を言っているのだ。

姿を現した守護神は四股はしっかりとしているがなにかが違う、蒼くて、巨大で光る双眸はショウ達を見つめ、完全に睨みつけている様であった。蒼い腕っ節は酷く太く、もろに直撃したらたまったもんじゃないだろう。戦闘続行は不可能に近い、或いは内臓が潰れて.....。

ショウの耳元に緊急通信伝達が入る、ナナシはかなり焦った面持ちで言っているのが分かった。

「お兄ちゃん!逃げて!早く!この守護神には名前のない怪物でも敵わないの!だから!」

ショウは城壁に囲まれた大広間を出ようと目論んだが魔法陣の影響でその城壁は念動して城壁で大広間から出るライフラインを塞いでしまったのだ。

ーーもう逃げ場はない。戦うしかないのだ。

グソーが難攻不落だと最も恐れられている理由。それはこの守護神にある。前までは戦争に明け暮れておらず平和だった為長い間封印されてきたがこの時代になり戦乱が渦巻いた為守護神を解放することにした所連合軍の奇襲に遭い、守護神の封印は連合軍が解いた。

そのグソーの圧倒的な存在であり、最も恐怖とされている守護神。否、巨神兵








“タルタロス”が契約者の殲滅という真逆の目的に取り憑かれた守護神として名前のない怪物の前に立ち塞がってしまったのだ。

「(マズイ......まさかとは思っていたけどタルタロスが敵で現れるなんて予想街だったよ。)」

そう考えているのも束の間、上の空のショウに目掛けてタルタロスの拳が飛んできていた。

「ショウ!上を見ろ!」

言われなくても分かっている、ショウは目を見開き、目つきを一瞬で変える。

そしてエダンとなったショウはタルタロスの巨大な拳をヘルツインズで受け止めた。

何とか弾く事に成功したものの、タルタロスの拳の衝撃で手が強烈な痺れに侵された。

本来なら此処で折れてしまうのに折れないとは流石契約の武器だと改めて関心の意を示した。

「チィ....ッこいつ、俺達を殺すこと以外に目がねえじゃねえかよ。」

「お兄ちゃん........ッ」

クソッとショウは吐き捨て、飛び上がりタルタロスの頭上に飛んだ、上から見たらかなりショウが小さく見えたがそれをタルタロスは許さなかった。





ショウに気づいたタルタロスは飛び上がるショウを薙ぎ払うように片手を振り回す。それが不幸な事にショウの脇腹に目掛けて命中し、ベキバキボキィ!という脇腹の骨が軋む音は周辺にいる名前のない怪物全員が聞いた。通信機越しのナナシにもその音は鮮明に聞き取れていた。

上手く身体を流せず直で命中してしまったショウは堪らず鮮血を吐き出して大地を抉りながら転がりタルタロスの気が散らない所まで吹き飛ばされてしまっていた。ナナシの悲鳴が遠いのだ。

ショウは吐血した事だけは鮮明に覚えていたが、それ以外(吹き飛んだこと)の現状は把握出来ていなかった。

しかし流れ出る血と脇腹の強烈な痛みが吹き飛ばされた現状を物語っているのが分かった。

「.......ガハッ......」

もう一度痛みが走り堪らず血を吐き出す。

頭から流れ出る血と脇腹の強烈な痛み、こうなれば満身創痍なのかもしれない。しかしタルタロスはこっちを向く素振りも見せないでダイとカケルに向かって拳を振るっているのだ。





これは正に絶体絶命、誰もが満身創痍の状態と見ても不思議ではなかった。

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