血が流れても地を這いつくばって虚ろな目で今度、また今度こそはって目の前にある光に手を伸ばしてさ
レントCV村瀬歩
本名、レント・エクレエイラ
年齢、14歳
白い髪に赤い目を持つチャイミーの実の弟
右目に眼帯を付けている。
契約者で魔法ーゼフォンー
チャイミーと同様の魔力を持つ
行方不明になった理由は強制的にダリウスの街から追い出されたからである。
そこから契約をした。
契約の力で病弱だった身体は完全に完治した
どこの軍にも所属していない。
契約者としての通り名は破壊神(シヴァ)
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タルタロスの振るった拳で粉々になったグソーの大地がショットガンのように二人に向かっていく。
二人はそのタルタロスの猛攻に対し防戦一方であった。
交わし、感情を持っているかのような大地の礫は容赦無く二人に襲いかかっていく。
礫がダイの足を貫いた。
カケルの腕を切り裂いた。
そしてショウは満身創痍の状態でよく息が出来ていることに自分でも奇跡に近いと思えた。
しかし二人はタルタロスを恐れずに戦っているのだ。
こんな光景を見て、戦わずには居られないとショウの体の本能が打ち震え、叫んでいた。その本能に応え、ショウも息が上がって絶え絶えなのに、タルタロスに負った傷が驚く程に深いのに........。
ショウは、立ち上がった。
「お兄ちゃん!?無茶だよ!今は動いちゃだめ!」
フラフラと歩き出すショウをハルベロス学園の講堂室で見ていたナナシは額に汗と涙が混じりあった様なものを浮かべていた。
「もしかしたら死んじゃうんだよ!?駄目だよ!お兄ちゃん.......ッ」
「俺には俺にしか出来ねえもんがあるってんだ。お前は黙って見てなよ、死なねえから、タルタロスっつー守護神にもお返ししなきゃいけないしな。」
痛みの山を通り越したのか、へし折られた脇腹を抑えて吐血する様子は見られない。
ナナシはそれに感服してほぼ泣いてるような声で応答した。
「分かった....じゃあ、絶対に死なないでね!」
「おう、最高の作戦通達、ありがとうな」
それだけ言い残して、ショウはナナシとの通信を真っ向から中断する、どんな事であれ、どんな危険な状況に陥っていても、戦闘には集中していたいというショウの変なスタイルからなるものだった。
「(絶対に死なないで、ねえ........)」
「いい言葉だな」
エダンにスイッチが入りほぼ瞬間移動に近いような速度で
、負傷しても尚戦うダイとカケルに駆け寄り、迫り来る拳を双剣で受け止め、弾く、もう慣れがついたのか、初め感じていた手の痺れは不思議な事に一切感じられなかった。
「ダイ!カケル!」
ショウの声に気づき、二人は整列を合わせる。
「遅いぞ、ショウ」
「悪いな、ちょっと悪い夢を見ててな。」
「なんだ、痩せ我慢か?」
「....ち、ちげえし!全然痛くねぇっての!」
ほらほらとショウはダイとカケルに見せつけるようにジャンプをしたり双剣を振り回したりする。
しかし脇腹の骨が軋み、呻き声を上げて少し横に傾いたのを見てカケルはショウの背中を押さえる。
ショウは予想外の痛みに少し額に脂汗を浮かべていた。
「ほらやっぱり、うちの隊長は戦いと“チャイミー”にしか興味が無いもんな。」
「う、うるせえぞダイ!お前だってルナといつも一緒に居るくせに!」
ショウがカケルに押さえられてギャーギャーと声を上げているがタルタロスを警戒していない事ではない。
タルタロスは何を思ったのか、もしくは微笑ましい光景を壊して、絶望へと誘おうとしたのか、蒼い鉄の様な拳を三人に振り上げてきた。
タルタロスの視界には確りと殴り殺す直前まで三人はいた。そのままの力で思い切り地面を揺るがし、ヒビを入れる。
やったかと思ってタルタロスは自身の拳で開けた穴を見て確認するが、そこには誰も潰れた跡や、内臓や血も一滴も滴っていなかった。
何処だ、タルタロスは首を巡らせて当たりを見渡すが誰もいなかった。
それもその筈。
今名前のない怪物の三人は上空で必殺技の体制に入っているのにタルタロスは気づいていなかった。
「ハハハッ!気づくのが遅えんだよ!守護神ッ!」
今放つ必殺技は名前のない怪物で一番の火力を誇る、所謂究極奥義の様なものだ。
ショウはヘルツインズを勢いよく引き抜き、魔力を高めた。するとヘルツインズの紅い刀身はみるみるうちに巨大で赤黒く染まってゆき、その赤黒いオーラがショウの背中に渦巻いた。
ーーその刹那。
耳もずんざくような羽がはためく音がし、よく見るとショウの背中には巨大な黒の翼。
ショウの通り名の堕天使はこの必殺技から来ているのだ。
「これが俺の力!血塗れの翼(ブラッディ・フェザー)だッ!」
ショウの翼は段々と禍々しさを増し、タルタロスを呑み込んでしまうような勢いの瘴気を纏っていた。
その血塗れの翼を纏ったままショウはタルタロスを一閃する、タルタロスはそれでも身体を傾けるが倒れなかった。普通なら巨大なアバターでもこの一撃で沈む筈なのに。
そしてタルタロスに紅いクロスの傷が付いたところでショウははためかせていた血塗れの翼をより一層巨大にした。
「滅亡波(グランド・ゼロ)」
するとタルタロスの傷から赤黒い光が漏れだし、真下に巨大な魔法陣が形成される。
その魔法陣からも赤黒い光が漏れだし、その光はタルタロスは愚か、タルタロスを援護しようと今駆けつけた兵士達数百人も巻き込んだ。
そして......。
タルタロスを巻き込み、イカロスの暗黒物質のような空間の柱がそそり立った。それはイカロスのよりもっと巨大で、グソーの建物も巻き込み、取り込んでいった。
ショウの滅亡波によって破壊し尽くされたグソーとタルタロスは原型を留めていない。
それほどショウの力が強大だったっという事だろう。
連合軍の兵士も数百人は愚か、グソーの中に収容されていた兵士、何万人もそれに巻き込まれて此の世から姿を消して行った。
赤黒い翼が徐々に消失していき、軈て翼は紅い光となってグソーの周辺を彷徨う。
それも完全に消えた時は、連合軍がグソーを諦め、名前のない怪物に降伏し、消え失せるだけだ。
ショウの滅亡波でグソーの7割が消失し、その周辺にいた兵士、約6万人も消失していった。
ショウはカケルに脇腹の手当てを受けながら暢気に話していた。
「いやー、やっぱり壊れたグソーを見ると、俺の滅亡波がどれだけ火力が高いかって分かるよね」
「痩せ我慢の分際で何言ってるんだか、脇腹痛かったなら三位一体の陣でも良かったのにさ。」
城壁によしかかって手当てを受けているショウはすこし笑って続ける。
「チャイミー達は上手くやっているかな、カケル、コスモに聞いてみたらどうだ?」
「俺は生憎、作戦中は自分から通信をしないタチなんでね。」
「それはタダの屁理屈に近いぞ、少しばかりはコスモの事も信用してやれ、折角名前のない怪物専属の諜報員の長と付き合えているんだから幸せだと思えよ。」
「ダイ、なんだそれは。」
カケルは少し目をぱちくりさせながら苦笑するという面持ちを見せた。
ダイは横目で亡骸と化したタルタロスを見つめる、光り輝いていた双眸も光を無くし、蒼い鉄のような身体も赤黒く変色しており見るからにしてもう死んでいるように見えた。
「(巨神兵と言われるタルタロスをショウは一撃で沈めてしまうとはな..........)」
カケルがショウの脇腹に痛み止めと簡易修復剤を脇腹に注射し、液体を注いでいく。
今のハルベロス国の科学の進歩は目覚しいものがある、もう今の時代となれば血液型を間違っていなければ傷だらけになっても消毒液をぶっかければ多少の延命が出来るほどに。
ショウの腫れ上がっていた痛々しい脇腹は徐々に腫れが引いていき、元の華奢な身体に戻っていった。
そうやって三人が寛いでいる今でも辛うじて生き残っていた敗残兵はグソーから大慌てで逃げ帰っていく、何故か三人は背を向けて逃げていく兵を殺す気には不思議となれなかった。
ーー背を向けたら一貫の終わり。それを知っているくせにどうして名前のない怪物の力を目の当たりにするとそうやって必死に逃げるのか。
三人はそれが不思議でならなかった。
ショウの防弾ポケットに収まっていたスマホがバイブ状態になり小刻みな動きをする。
伝令ではない、至って普通の電話だ。
チャイミーかと思い、ショウはスマホを耳に当てる。
「あ、ショウ....見てたよ、もう殆どの連合軍の兵がグソーから消えていったよね。」
ショウ「そうだね....でも君から電話してくるとは珍しいね、何か不審に思うことがあったの?」
そう言った直後、チャイミーは電話越しで押し黙っていることに気づく、ショウは頭に疑問符を浮かべていた。
「どうかしたの?もしかして敵が多すぎるとか?」
「ううん、そういうのじゃないの。」
チャイミーは耳からスマホを離し、赤い双眸でじっと奥を見つめた。
視界の先、イカロスとルナはそれを凝視し、身体をベタベタと触ったりしている、二人してこんなに物珍しそうに見るものは早々ないだろうと確信していた。
チャイミー、イカロス、ルナは余りにも奇妙な光景に遭遇していたのだから。
そこには無差別に殺され、肉塊となっていたハルベロス兵と連合軍の敗残兵の逃げ残り、グソーの道端でゴロゴロと大量に転がっていた死体は瞳孔を見開いて、血を大量に吐き出して生命を失っていたのだ。
単純計算で、約3000人
「連合軍とハルベロス兵が、無差別に殺されてるの........。」
「........は?」
思わず声を上げてしまった。
可笑しな点が幾つかある、ハルベロス兵と連合軍を無差別に惨殺するということはどこの兵にも所属していない1匹狼と考えられる。
しかしそんな大量の兵に気付かれずに殺害するということは有り得ることなのだろうか、ということは一番考えられるのは“契約者”名前のない怪物も凌ぐかもしれないほどの力を持つ。
「分かった、俺達は作戦が終了し、今帰還する。健闘を祈ってるよ」
「うん....。」
不安気な声をあげながら、チャイミーは自分のスマホの電源を切り、死体を見渡した。流石に鉄臭さが辺り一面に充満し、吐き気が繰り返し襲いかかってくるのを覚えていた。
しかしチャイミーもその死体を凝視すると“ある特徴”に気づいた。
よく見てみると死体の死因は首が吹き飛んだものや四股が全て飛び散っているものが殆どであった。
この死体はよく覚えている、それはチャイミーが外道強姦の影響で記憶が抹消して、自分を取り戻した時に何気なく牢屋から見た外だった。
そのダリウスの街は全てグソーの無差別殺人と同じ殺害の仕方なのだ。ーーもしかしてダリウスの街を滅ぼした犯人は此処に居る?
全てはチャイミーの力でダリウスを滅ぼしたのに、記憶がない為覚えていない、現実逃避とは言わないが、そう考えてしまうのも妥当だろう。
「もういいんじゃない?この死体は確かに妙だけど、今の任務はグソーにいる少量の兵士を殺さないと、ね」
「ダリウスの街でもそういうのはあったけど.....こんな大量に成し遂げられるのはチャイミー程の魔力がなきゃ出来ないよね」
チャイミーは死体を見たくないと思ったのか、指を鳴らし、死体を一瞬で消し始めた。
「完全消去(オールデリート)」
ベタベタとこびり付く血液は消せないが、大量の死体は消すことが出来た。
これで足を進めるのを妨げる障害は無くなった。
チャイミーは込み上げる嘔吐感を唾を飲み押し留めて、進み始める。
三人は何か、否ーー運命に導かれたようにグソーの兵士が模擬戦闘を行う為に作られた闘技場、特殊な照射機で形成された敵は、全てが忠実に再現された最新の未来型の4Dの様な物を導入していて兵士の訓練としては持ってこいということだ。
その照射機は完全に粉々に砕け散っていて無残に落ちている。
血に塗れていたグソーも、闘技場に入れば血が一滴も滴っていなかった。
まるで異世界の空間と思えてきた。
チャイミー達は程よく伸びきった天然芝に立った。
「今日は晴れているんだね」
おもむろに空を仰ぎ、呟く、今日は何故かと空は赤くはなく怠いくらいの日差しが名前のない怪物に突き刺していく。
しかし何故か妙なくらいに晴天なのに風が強いし冷たい。まるで嵐の前の日みたいだ。
そしてその風がチャイミー達の目の前に集まり.....。
芝を抉りながら、旋風を巻き起こした。
「うわぁッ!何?」
「これは旋風空間(ストームゾーン)?」
「........ッ」
余りにも力が強い旋風に目も開けられるのも困難で皆足で何とか踏ん張って武器を取り出して、敵(今はそう判断しておこう)の奇襲他襲来を待った。
皆を悩ませていた旋風(と言うより嵐だが)やっと収まり、舞っていた芝や地上にヒラヒラと落ちてきた。
そして気になっていた嵐の元凶となる男は段々とシルエットが見えてきた。
それは強大な魔力を持っている男というよりチャイミー達より一回り年齢が下の少年。
片目に眼帯を付けており、髪は白い。
そして肝心となる目の色は赤色。
これで誰だかは予想がついたかもしれない。
チャイミーはその姿を見て、驚愕の表情を見せずにはいられなかった。
その姿、その姿は正に........。
「......レン.......ト」
「やぁ、姉さん、久しぶり」
に向かって笑顔を振りまいているが、身体中は真新しい鮮血で染まっていた。ハルベロス学園の制服を着ているレントはベタベタとしている血液を指で触り、ペロッと舌で舐めた。
「アレが....レント」
イカロスはスマホとレントを順々にみて確認する
「顔の通りだ“レント・エクレエイラ”通称、破壊神(シヴァ)と言われている折り紙付きの国際指名で手配されている契約者らしいね」
レントの夥しいほどの血液量は恐らくあの大量殺人と合致しているだろう。
そう考えなければ辻褄が一切合わないからだ。
レントは赤い目をチャイミーに向けて不敵な笑みを浮かべながら言った。
「姉さん、僕敵として現れちゃった。ごめんね」
「どうして....?どうしてッ?」
「それは教えれないな、気がついたらみんなを殺さなきゃと思ってたんだよ。」
イカロスはチャイミーの顔を見る、華奢な顔は著しい程に青ざめており、落胆した表情でレントの方を見つめていた。
レントもこう見えて契約者だ。どこの兵にも所属していない一匹狼と考えられる。
もしここで生かしておいたらまた名前のない怪物の前に現れるだろう。
そんな事になったらハルベロス学園はまた破壊し尽くされるであろう。
レントの契約した物は余り記憶が鮮明ではないが。確か.....魔法。
“ゼフォン”と契約を契っていた筈だ。
ゼフォンもチャイミーのイヴと同様の力を持つ魔法契約。あの大量殺人もレントでは無かったら到底出来なかったであろう。
「レント.....君はどうして僕達の前に居るのかい?」
何故ってさ、と言って高飛車な声とはトーンを変えて空気も凍てつかせ、周辺の芝が凍てつき始めていた。
「君達に“絶望”を見せつけるためだよ」
“ねえ、今日は何処ですか
ねえ、昨日って何処ですか
ねえ、ミライって何処ですか
穢された日々を継承してみたりするけど
何もわかりゃしない。
何も掴めやしない”
「ねえ、コスモ、今の歌って何なの?」
作戦会議室を兼ね揃えた名前のない怪物の講堂でその歌を聞きかねたナナシはコスモに素朴な質問をする。
コスモの歌声は透き通っていて、まるで小鳥が歌っている様なものだった。
「これチャイミーが歌ってた歌なんだ、たまたま聞いて、いい歌だったから、つい、ね」
ふーんとナナシが物珍しそうに頷いてモニターを見る。
チャイミー達に立ち塞がっているレントの存在を気づいてはいたが、どれだけの脅威はまだ知らないのだ。
「レント・エクレエイラ、どれだけの脅威となるのか.....ね」
ナナシは吸い込まれるようにして巨大なモニターでレントの詳細、全てを洗いざらい調べ始める。
しかしレントの国籍と契約者としての経歴しか一切出てこなかった。
何故か意図的に全ての詳細が消去されているみたいだ。
「あれ?何でレントが分からないの?」
明らかに可笑しい、レントはナナシも知っている、しかしどれだけの脅威と成しているのかはまだ未知数なだけ。
どれを調べてもエラーの文字が大々的に表示されるばかりだった。
ナナシは少しばかり不機嫌な様子でマウスを動かしてレントの詳細を邪魔しているウイルスをカチャカチャと解読し始めた。
三分が経ち、漸くじれったかった解読を終了して、レントの内部を探ることに成功した。
椅子に座っているナナシの後ろにはルカとコスモが居る。
二人も真剣な面持ちでナナシを見守っていた。
マウスを器用に動かしながらレントの封印を紐解いていくと、そこには.....。
「え?!レントは数年前までは存在が確認されてなかった?」
「.........えッ?」
ナナシは焦っているのかかなり早口でレントを朗読し始めた。
「レントは昔病弱だったが契約の力で完治、しかしその力が抑えきれずに過去で大地震が発生、そしてレントの消息がたったと見られていたがここ近年になってレントの目撃証言があとを絶たず必ず見掛けるのが兵士と兵士が剣と涙と血を流して戦っている戦場、そこを中心として無差別に惨殺を繰り返してきた。
一説によれば、レントの負の力が濃密に溶けそれが“レント自身”となって発現したか、それとも地震の後に別の何かと契約して力を押さえ込んだか.....、現在、レントの呪印が残ったままでこの世を彷徨い、人という人を喰い尽くす確率も少なくはない、だから破壊神として名が付けられた。レントは星一つを破壊できる力を十分に所持しているため、国際指名手配を受ける超危険人物らしい、だって」
という事からナナシが言っていることをまとめると。
契約したが力が抑えられなかった。
負の力がレント自身となった。
もうレントは死んでいてこの世界を喰い尽くす怪物と成り代わっていること。
レントの呪印がまだこの世界にこびり付いている事。
ということはレントの呪印を完全に解放するにはレントの負の力を真の力に変えることが出来たなら、レントは完全に解放され、呪印も一切残らずに旅立てるだろう。
今は死んだ事が理解する事が出来なくて存在を証明するべく人を殺しているのだ。
何千人も最初は何も見えないまま近づき、そこで一気に殺すという事だったら理解が追いつく。
ここで気づいた。
レントは恐らくチャイミーよりも強いのかもしれない。
いまのレントではチャイミーや名前のない怪物でも止められないのかもしれない。
そう思えてくると背筋がゾクッとしてくるような気がした。
今のレントは負の力に取り巻かれ強大すぎる力を所持しているのだ。
それを知ってしまったナナシは、今立ち塞がっているレントの姿を見てどれだけ脅威でどれだけ歯が立たない相手なのかを今モニター越しでレントを見ながら感じていた。
でも死んでいるのなら国際指名手配を受けている事も可笑しいことだ。
そこの点はレントの呪印のせいでなっている事なのだと考えよう。ーーいやそう考えなければ世界は残酷だから。
「姉さん、僕は身体も治ったし、強くもなれたんだよ。僕と戦って強くなった所を見てくれないかな」
「.........ッ」
下唇を噛んで、声を押し殺した。
それでも私はレントを殺す訳にはいかないのだ。
何故かそう思ってしまう。
ーー何故?
ーー弟だから?
ーー嗚呼
ーー甘い
ーー情けない
そんな弱い心に取り巻かれているチャイミーは迷い迷っていて自分の心も決めることが出来ない意気地無さに叱り倒しそうになっていた。
どうしてだろうか。
どうして私はレントを前にしてこんなに怖がっているのだろう。
嗚呼、なぜか意味がわからないけど視界が霞んでいく。
いっそこのまま視界が一気に霞んで意識を失いたいぐらいだ。
レントが生き残っていて、そして敵として私の前に現れるなんて夢であってほしいと思っていた。
夢じゃないのに、夢であってほしいと思っていた私が一番不甲斐ないのだろうか。
どうしたらいいの?
どんどん視界が霞んでいくよ.....。
チャイミーは濁った双眸で、ユラユラ揺れた瞳孔で震える両手を意味もなく見続けていた。
私は.....私は.....。
“おやすみって、おはようって
そんな優しい事言うなら
そんな目で見ないで
私は悲しくなるから
悲しくて悲しくて仕方なくなるから。”
“嗚呼、朝が明けるよ
今日も私は私を置き去りにして
今日も私は祈ってる
嗚呼、夜が閉じるよ
今日も私は私を置き去りにして
今日も私は嘆いてる
嗚呼、今日も昨日も明日も
自分を殺し続けながら生きていくのだろう
おやすみ、サヨナラ”
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