どんな小さくて、世界に貢献していないと思っていても、どんな事でも、失敗しても明日の道になる、貴方にそう教えられたから




駆け出して行く。契約者たちは皆悲しい過去を持っている。悲劇の全てが契約とは言わないがでも悲しい事はあった。ショウは雄叫びを上げて銃を向けた敵兵を一刀両断、切り伏せる、胴と首を切り離す。ショウは二重人格者、その名をエダンという。それには自分の存在意義、防衛本能。殺害本能が紙一重に揃ったら時に解き放たれる力。

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ショウ・タチバナ

年齢18歳、契約者全員同年齢である。

ハルベロスの最南端の村、ユピテルで生まれる。彼が生まれつき契約者だった理由は両親共に契約者の夫婦だったからだ。両親は名の知れた契約者でその2人だけは迫害を受けずに育っていた。

しかし悲劇が訪れる。

両親がいつまで経っても帰ってこない、親だけが生きがいだったのに謎の死を遂げていた。その直後に村の人間の態度が一変し酷い迫害を受けるようになった。黒い鉄格子にいれられ、暴力を受け他人のエゴに汚されていた。その時ショウは死にたくないという負の感情が芽生え始める。それと同時に人を殺したいという殺害本能も芽生えている。それが“もう1人のショウ”エダンの始まりだった。孤立していった人生もエダンに任せればみんなみんな殺して無かったことに出来ると考えて戦闘の時はエダンに身を任せている。しかし夢を見る時がありその夢の正体がチャイミー。チャイミーに出会ったことで運命が変わっていく、そして最強の契約者と言われることになる。チャイミーが傷つけばエダンとなり人を殺戮し尽くした。ショウはエダンのことを認識しているようでもう1人の俺と偶に言うことがある。今はコントロール出来るようになりエダンが出る時、ショウの時と使い分けることが出来るようになった。

殺した人間の数は百万にまで上る。世界を正すために、正義のために、平和のために殺戮を止めない

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「どうしたよ!俗物ども!もっと俺を楽しませろ!」

兵士がショウを撃とうとしても打たれる前に殺される。飛ばされた胴には腸が垂れ下がって中に舞う。僅か数十秒でショウは死体の山を作り出していた。ショウの顔は狂気的で双眸は血を映し出している。これが幾千の悲劇を乗り越えてきた契約者、この命が終わるまで止まることは無い。やがてショウの目付きはいつものにもどって狂気的な声、様子はいつものショウに戻っていた。ーーやっぱりカッコイイ、とチャイミーは不意に思ってしまう。ショウに戻ってもショウは殺戮を止めない、高速な動きで敵を切り伏せていく。

負けていられないし、私もやらなければと思った。

私は両手を伸ばし、力を集中させる。すると緑色の巨大な魔法陣が浮かび上がる。魔法陣には多大なるエネルギーが中央に形成されている。そしてチャイミーはその魔法陣に向かって飛び上がり、踵落としを炸裂させる。

「魔法破(マジックアンプ)ッ!」

そういった直後、形成されていた緑の光線が巨大に膨れ上がり極太の光線となり兵士に襲いかかっていく。それをモロに食らった兵士は何事も無かったのように塵と成し粉々の骨に形成された。

チャイミーもハルベロスで最強と謳われていた契約者だ。自分から血が流れなかったら街一つ、否、国一つを滅ぼすことが出来る力を有している。ショウの次に恐れられる存在、チャイミーの過去もショウと似て美貌に惹かれた男豚にぐちゃぐちゃにされているのだ。男のレールに強制的に歩かされて、最悪の行為をされた。チャイミーの過去、これはエゴだ、エゴなのだ。そんな思い出したくもない過去はチャイミーは知らない。その“最悪で人間ならざる行為”はチャイミーは覚えていない。チャイミーが覚えているのは親と弟、そして物心ついたら街の人間はみんな肉塊と化していたことぐらいだ。

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チャイミー・エクレエイラ

ハルベロスでも由緒が有り掟に厳しいダリウスの街に生まれる。生まれつきにあらゆる言語、問題、魔法をマスターし天才少女と賞賛された。しかしその美貌に取り憑かれた男達はエクレエイラ一家に押し入り奪おうとする日も少なくなかった。その震えるチャイミーを支えたのは弟のレント・エクレエイラだ、生まれつきあまり体が強くなく、寝込む日も少なくは無かったが震えるチャイミーには一時も話さずに寄り添った。

しかし学校から帰ってきた時のことに悲劇は起こった。

15歳の時家から帰った時に唯ならぬ異臭を感じ、慌ててドアを開けると両親、父ドロル・エクレエイラと母エミリー・エクレエイラが、惨殺されていた。しかしレントは不思議なことに行方不明で何処にも居なくなっていた。涙乍に警察に電話しても動かない、それもそのはずだ。この殺人は警察も繋がっていてダリウス全体で計画させられていた殺人、それを知った時に多大なる憎しみが魔法に変わったが魔法封じの呪いにかけられ男達の思うがままになってしまう。そしてチャイミーは記憶にないが契約者の間で語られる強姦事件通称外道強姦が起こる。その外道強姦は一年もの間続けられた。

魔法が解けダリウスを滅亡させた後は記憶が抹消している為、覚えていない。ただ、赤い瞳は危機に陥ると濁るという後遺症が残った。

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魔法破は自由に動かす事ができる為、敵の気配を感じたら躊躇いなく兵を塵にしていく、ーー死にたくない。今チャイミーの頭の中はその言葉で占めていた。

壊して、壊される前に殺すのだ。銃弾の雨も魔法破で消し炭と化していく、それを掻い潜った銃弾がチャイミー火照る頬をかすった。ーー無論痛みは感じない、魔力が溢れ出ているから血だらけになっても痛みが感じない自身がどこからかあった。その理由は探しても探しても見つからないけど。

「ショウッ!カケルッ!」

チャイミーが二人に合図を取る、すると二人が待っていたように陣形を取る。

カケル「分かってるって!」

カケルが剣に冷気を込めて居合切りの体制をとった。そして目を閉じて瞑想を試みる、兵士は魔法破のお陰で近づくは愚か、隠れることしか出来ないからだ。

カケルはカッと目を見開いて剣を握る手に力を込める。すると刀身が蒼く染まり周囲の地面をビキビキと音を立てながら凍てつかせている。

その剣で虚空を切り裂き、剣を投げつける。

「白の疾走弾(ホワイトストリーム)」

静かにつぶやくと虚空から剣銃のように無限に放たれる。それは兵士.....ではない。

チャイミーが放っている魔法破に交わった。すると緑の色は青と緑が融合したように色が濃くなり威力も各段に増したように見えた。建物を破壊していき、破壊した建物はカケルが放った白の疾走弾の効果で凍り付いていく、もうモンスは氷の世界と成していた。炎が舞い上がり、氷の山が創り出され、これが契約者の力と見せつけているようであった。兵士は臆すること無く襲いかかってくるのだがそれを塵にした直後に凍らせてその凍った塵が力無く落ちていく。

カケルはショウに続く剣術の達人で世界中にいる契約者でも上位の契約者だ。本当は契約者になる運命(さだめ)では無かったのに、“あの男”が元凶となる事件が無かったら本当は悲劇に見舞われずに済んだのに。神様なんかいないと何度も思ってしまっていた。ーーホントは神様を信じているノニ.....。

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カケル・キュウスイ

ハルベロスの首都、ネオの郊外で生まれた大富豪キュウスイ家の御曹司として生まれた。なにも不自由な事などなく、愛を貰って、自由を貰って生きていた。キュウスイ家は酷くキリストを信じていて毎日の日課はキリストに祈ることだ。そのために家に態々きょうかいをたてた。しかしハルベロス国でキリスト教は禁止宗教ということを知っていたから地下に建てられていた。しかし見つかってしまう。第三次世界大戦を引き起こした、元凶となる男

“ノエル・B・スリード”という男に脅迫されてキュウスイ家は集団自決をせざるを得なくなった。

そしてキュウスイ家の滅亡、ニュースではキュウスイ家の全員が死亡と書いてあったがカケルだけは生き残っていた。それが契約者の力の発現である。死んだと思ってとぼとぼと歩き、自分の存在証明をするかのように剣ーダイヤモンドダストーと契約を契った。沢山の人間を凍て殺して力尽き倒れるがその倒れた家がショウ、チャイミー、その他3人が住んでいた隠れ家の前であった。

それでもう一回神様を信じてみることにした。しかし集団自決の悲劇の後遺症に寄って

黒の目は片目が金になるオッドアイとなっている。

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やがて兵士はいなくなり、3人の契約者の周囲は凍り付いて天変地異に緑見舞われた如く冷気に満ちていた。

「あーぁ、やりすぎちゃったかなあ」

「まあいいでしょッ、街を一つ救ったことに変わりないし。」

「早く行こうよ!ねぇ.. ショウ?」

不意にチャイミーに抱きつかれる。ショウの頬は火照っているのが分かった。

確かにこの地区の兵士は制圧したが援軍が来てしまうとかなり厄介だ、疲れてはないが銃弾が所々掠りそこから血がタラタラと流れている、そのためにもここでじっとして時間を潰して居ることには行かなかったと思っていた矢先に防弾ポケットにしまい込んでいたスマホのバイブが鳴り振動を繰り返している。スマホに手を伸ばし、電話のボタンを押して、耳に当てる。

「お兄ちゃん!援軍は来ないからゆっくりハルベロス学園に向かっていいよ!でも逃げ切った兵が残っている可能性も有るからそこは注意しながら進んでね♪後“あの人達”の作戦は順調に進んでいるから心配しなくてもいいからねん!ハルベロス学園の近道は階段を登ってエレベーターに乗ったら直ぐにハルベロス学園にたどり着くからね!健闘を祈ります♪」

「分かったよ、あの人たちは死なないから心配はしてないしね。」

「あはは!そっかあ!そうだよね♪じゃあバイバイお兄ちゃん!」

ツーツーツー

通話が途切れる、現在の時刻を確認した後電源を切った。

不意にショウは空を仰いでみる、到底昼とは思えないでいた。空が赤いなら尚更に。核兵器の力による天変地異が生じた後遺症なのかと考えてみる。怪訝な顔をして空を仰いだ。

「早く行こうぜ、ハルベロス学園に行って休めたいし。」

ショウは静かにうなずき足を進める。チャイミーもショウを離さずに進んでいく、ショウの腕にチャイミーの胸が当たっていたがチャイミーは全くと言っていいほどに気にしていないがショウは気にしていてしょうがなかった。心臓が早鐘を打っている。

階段をゆっくりと登って辺りを見渡すが兵士はいない、ただ凍った建物に血がこびりついているだけだった。そう確認した後にエレベーターに乗り一時の休憩を要していた。

チーンと無機質な音が響き重い扉が空いた、直後であった。1人の兵士が待ち構えていて銃の柄をチャイミーに向かって振りかざしていた。

「死ねぇえええええッ!!終焉の使者(ジ・エンドメッセンジャー)!」

その攻撃をかわしきれずにチャイミーの頭に火花が散った。頭からドクドクと血が流れる。

「いやぁッ!」

頭には痛みが感じたようでエレベーターの壁に激突し喘いだ、壁に激突した衝撃で少量の血を吐く。

「チャイミーッ!」

兵士に目を向けた瞬間には兵士はもう死んでいた。カケルがチャイミーに攻撃した直後に串刺しにして即死させていたからだ。助かったとカケルに言い、カケルがどうもとお礼をした、そのやり取りでも本当の絡みがあればたくさん話すものだ。

因みにチャイミーに向かって言っていた終焉の使者とは連合軍が言うチャイミーの呼び名でありそれぞれの契約者に呼び名は異なるのだ。

ショウは堕天使(ロストエンジェル)

カケルは凍てつく闇(フリーズダークネス)

チャイミーから流れる血は止まる兆しがない、今はここで応急処置を施すしか無い。チャイミーは魔力は溢れ出ているのだが自分の傷は治すことが出来ない。不死身の人間では無い限り驚異的な自然治癒力は得られないのだ。弱点は頭に魔力が通っていないこと、身体は痛みは感じない、しかし頭は例外、痛覚が露わになっている為に殆どの連合軍の兵士は頭をロックオンしてくる。チャイミーは流れ出る血を手で押さえ悲痛の痛みで喘ぎっ放しだった。

「ぅ...あ、あぁ....」

「チャイミー、待っててよ、今手当するから。」

ショウは優しい手つきでチャイミーの傷口に触れる。

「うぁっ!」

痛覚は頭に集中しているようで人間以上の痛みを感じるようだ。この聴きたくない声に顔を歪めた。

「まず包帯で手当するしかないから、我慢しててくれないかな?」

チャイミーは涙目で、火照った頬で小さく頷いた。ショウはチャイミーの痛覚を刺激しないように細心の注意を払って包帯を巻いていく、痛みにビクッと体を跳ね、少し声を上げるが必死の我慢が叶ったのか、包帯を巻くことに成功した。

瞬く間に巻いた包帯は紅く染まっていた。最初に赤かった訳じゃない、流れ出る血で白い包帯が紅く染まったのだ。

グズッと鼻を啜ってチャイミーはショウに柔らかい腕で抱きつく。

「ショウッ........ありがとうッ....」

「うん、お構い様だよ」

「うんっ......うんっ」

そんな微笑ましい光景を壊すかのようにカケルが割って入る。

「はい、立てるか?ハルベロス学園に急ぐぞ、もうすぐ“アイツら”はどうなってるか知りたいしな」

チャイミーにはまだ立てる力は残っているみたいだが偶に痛みで顔を歪める場面が有るからショウはチャイミーをお姫様抱っこしながらハルベロス学園に通じている大路地をコツコツと靴に音を立てて歩いていた。力を失ったハルベロス兵は大路地の横に横たわって絶命している様に倒れ込んでいる。否、本当に絶命しているのかもしれないが。

大路地の床には赤黒い鮮血がノリの様にこびり付いていて正直気持ちが悪かった。よく見てみると内臓が破裂した跡や人間の消し飛んだ親指、腕などがゴロゴロと転がっていた。カケルは何も躊躇いもなく改造されたブーツで内臓と血が混じりあったようなモノをぐちゃぐちゃと踏みながら進んでいく。その光景には少し険悪感を覚えた。いくら契約者でも人間の臓器には躊躇いを持った方がいいと不意に思ってみた。

でも、カケルはカケルで俺は俺だ。何かに一々首を突っ込む場面ではない。

チャイミーは目を確りと閉じて、しなやかな手でショウの手を握っていた。ショウ手がチャイミーの太ももに触れるーーだってお姫様抱っこしているのだから当たり前な事なのだけど。

チャイミーは異常に柔らかい、ほかの女性とは比べ物にならないほどに。理性を正すべく1度大きく深呼吸を吐いた。吐息がチャイミーに当たって赤い双眸を開いた。慌ててショウはチャイミーから視線を逸らす、それを何故か首を傾げ、不思議に思っていた。

気がつけばもうすぐそこに来ていた。ハルベロス学園は傷ついた兵を癒すのに精一杯のようでハルベロス学園の生徒総動員で治療を施していた。

空を見てみると戦闘機と戦闘機がドッグファイトを繰り広げていた。

ハルベロス学園の象徴とも言える聖母マリア像が立つ噴水に辿り着く。此処がハルベロス学園。まるでサクラダファミリアのように高く、白黒の無機質な色が象徴的だ。ハルベロス学園がハルベロス国で最も発達している魔法学園。

それがハルベロス学園なのだ。治療している人間にチャイミーを預けて、ショウとカケルはハルベロス学園の中に入っていく。ーーアイツら、あの人達はきっともうすぐやって来る。そう信じて入っていく。

ショウは何気なくスマホを見て死傷者の人数を確認してみる。カケルも吸い込まれるようにショウのスマホを見た。

ハルベロス軍

死者12万5千人

負傷者25万3千人

かなりの損害だと2人は思った。やはり契約者がいなければ今頃どうなっていたかと思う。世界は終わらせない、歪んで、血塗れで、穢れているけど滅びてはいけない。





そして、違う地区でもそう思っている一心で、鎌を振るい続けているのだろう。



「頑張れよ、“イカロス”君が死ねばゲームオーバーだよ。」






ショウは天井を仰ぎ、言った。

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