第34話 炎獄の処遇
砦の中に閉じ込められた兵士たちは八大魔導がいるという声を聞いて奮い立ち、我先にと扉をこじ開けて砦から飛び出してきた。
「八大魔導様に続け!」
その言葉を合言葉にして兵士たちは息巻いている様子だった。
「行くぞおおお……あれ?」
先頭を走っていた男は砦の前にほとんど人がおらず、静まり返っていることにその勢いを止める。
「あー、あいつら出てきちゃったのかあ。まあいいけどね」
兵士たちが抜け出て来たのを見てもリョウカは気にしていない様子だった。彼女たちの実力であれば再度捕らえるのも容易なためだった。
「中に逃げ込んだ兵士たちか……そうだ、おーいお前ちょっと来てくれ! そう、一番前にいるお前だ」
ガレオスの呼びかけに自分のことかと再度確認した兵士は、渋々彼らのもとへとやってくる。
「な、なんでしょうか?」
「一つ聞きたいことがあるんだが、こいつは本当に八大魔導の一人なのか?」
確認のために呼んだ兵士は顔をあげると氷漬けになっているバーデルの顔を見て驚く。
「バ、バーデル様!? なんでここに、いや、なんでこんな姿に!」
兵士はまずバーデルがここにいることに驚き、さらに彼が氷漬けにされていることにも驚いていた。
「で、どうなんだ?」
彼の疑問に答える気はなく、先ほどの質問の答えを急かす。
「た、確かにこのお方は八大魔導のお一人、炎獄のバーデル様です。しかし……」
八大魔導といえば魔法王国の最大戦力であり、その彼らがいるからこそ兵士たちは戦うことができていた。
「まあ、こいつが凍っているのは気にするな。こいつより強い者がいただけさ」
ガレオスは確認がとれると砦に戻るように手で合図した。
「あんた本当に化け物ね。私たちが砦の中にいる間にあっさりと八大魔導の一人を倒すだなんて……しかも、これってまだ生きているんでしょ?」
氷漬けのバーデルはあくまで封印されている状態であり、封印が解ければ再び息を吹き返す状態だった。
「まあ、そうだ。だが扱いに困るな。一対一なら俺が負けることもないだろうが、下手なところで封印解除されてこいつが暴れたら、その場は恐らく炎の地獄になるぞ」
バーデルが使った魔法を思い出してガレオスは肩を竦める。
「それならば、隊長が管理するのがよろしいでしょう。ここだといつ新手が来るかわかりませんから、移動した先で一部封印解除しましょう。そこで彼から話を聞ければよし、聞けないならその場で倒す方向で」
フランの案にガレオスもリョウカも頷く。
「そうね、いざとなったら私が神速の一撃で倒してあげるわ」
自信に満ちたリョウカの言葉は慢心でも冗談でもなく、できる事実を口にしただけであり、ガレオスもフランもそれに疑問を持つことはなかった。
「あぁ、頼むぞ。それじゃあこいつを担いで戻るか。馬車が無事だといいんだが……」
かろうじて砦を確認できる位置で置いて来た馬車の無事をガレオスは祈っていた。さすがにガレオスでも氷漬けのバーデルを持って移動するのは大変だと思っていたからだ。
「とりあえず戻ってみましょう」
「あなたたちは好きにすればいいわ。私たちのことを上に知らせてもいいし、何がなんだかわからない内にやられたと言ってもいいし……ただ、次にあなたたちと私が対峙した時の結果は変わるかもしれないけどね」
リョウカは最後ににやりと笑って兵士たちにプレッシャーをかけていく。
「ひぃっ! い、言いません。我々は何もみなかった、それだけです!」
恐怖に震えたのち、背筋を伸ばして答える兵士にリョウカは再び笑って見せる。今度は恐怖を煽るものではなく、さっぱりとしたものだった。
「うん、いい返事ね。それじゃ、もう二度と会わないことを祈ってるわ。さようなら」
リョウカは彼らに手を振って、フランは一礼をして踵を返す。ガレオスは彼らとのやりとりは先ほどの八大魔導の確認の時だけなので、軽く手をあげるだけだった。
「あいつら信用できるのか?」
しばらく歩いた先でのガレオスの何気ない質問にリョウカは肩を竦めた。
「さあ、どうかしらね。一応プレッシャーはかけてみたけど、言いたいなら言えばいいわよ。仮に私たちの正体がばれたとしても、どこから来てるのかはわからないからね」
「そうですね、無抵抗の相手を殺すというのも流儀に反しますから、あれが最適だったと思います」
フランはリョウカの言葉の補足をした。
「二人がそう判断したなら構わんよ。あとはこいつ次第だな」
ガレオスが背中に背負っているバーデル。彼がなぜここにいたのかはわからないが、幹部である彼から情報を引き出せれば大きな戦果といえる。
しばらく歩いていると、馬のいななきが聞こえて来た。
「あ、よかった。いましたね」
フランは馬車があることを確認して、駆け寄っていく。そして馬が怪我をしていないか丁寧に確認し始めた。
「うん、何事もなかったみたいです。これで移動が楽になりますね」
「よいしょっと」
ガレオスは馬車の空きスペースに氷漬けのバーデルを置いた。
「それじゃ、砦から離れたところでこいつの封印を解こう」
ガレオスの言葉にフランは頷く。
「わかりました。それでは砦からの追手の恐れがなくなるあたりまで戻りましょう」
「それじゃあ、帰りも私が御者をやるわね」
既にリョウカは御者台に乗り込んでいた。
一行はリョウカの運転で修道院へと戻っていくが、念のため大きく道をそれた場所でバーデルの封印の解除を行うことにした。
「このあたりでいいか」
そこは周囲に木などはなく、荒野ともいえるようなところだった。街道からも外れているため、旅人と遭遇する可能性も低かった。
「いくぞ」
地面に降ろしたバーデルに向かって、ガレオスは大剣永久凍土を構える。
「封印、解除!」
解除量を調整して、頭部から首までの封印を解除した。
「う、うーん。俺はどうなったんだ……身体が動かない?」
解除されたバーデルはすぐに意識を取り戻すが、自分の身体の自由が利かないことに驚く。
「よう、目が覚めたか。少し聞きたいことがあるんで、答えてくれると助かる」
声のする方に目を向けると、先ほどまで戦っていたはずのガレオスがいたため、驚いたバーデルは目を見開いていた。
「お前は! くそ、燃えろ……魔法がでない」
バーデルは魔法を使ってこの場からなんとか逃げようとしたが、なぜか魔力が練られることがなく、また、魔法が全く発動しないことにさらに驚いた。
「悪いが、まだ封印は一部しか解除していない。まずは俺の話を聞いてくれ」
反論しようとしたバーデルだったが、ガレオス以外にもフランとリョウカがいることに気付いて観念する。
「はあ、わかったよ。それで何が聞きたいんだ?」
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