第28話

【まさおの悲劇】



まさおは、目と指をつぶされた後も、電話がかかってくるたびに、“目と指が痛い”と相談客に言ってしまうので、ジジイは、まさおのために考えた。



口があるから、いけないのだと。




そして、まさおは、ジジイに舌も抜かれた。



なおも、痛がるまさお。



ジジイは慈悲を与えることにした。




肉体があるから、痛いのである。



詳細は省くが、まさおは、とうとう、脳だけにされたのだ。




ネオまさおの誕生である。




それを不憫に思ったジジイの嫁が、まさおに新しい肉体を与えた。


売れ残ったダッチワイフに、まさおの脳を入れたのだ。




新しい生命の誕生である。




次回からは、新展開、“ダッチワイフィーまさおの冒険”がはじまる。



もはや、これは、営業電話の達人への道、という書物ではない。




営業電話なんて、とれなくていい。



人とのコミニケーションが多少下手くそでもいい!



どんな形でもいい!まさおが、まさおが生きてさえいてくれれば!



これは、命の尊さを訴えかける魂の著書なのだ!





【最終章 ダッチワイフィーまさおの冒険】



ダッチワイフィーまさおは、久しぶりに家に帰ろうとした。




奥さんと娘に会うのは、久しぶりだ。




嫁の好きなケーキと、4歳の娘が大好きなアンパンマンの絵本を買って、ウキウキした気分で家路を歩く。



その足取りは、弾むようであった。





「ただーいま」





見慣れてはいるが、今は懐かしくも感じるチョコレート色の玄関を開けた時に待っていたのは、娘と嫁の見たこともない形相と悲鳴だった。





ぎゃあーっ!

ば!ば!ばけものーっ!







ダッチワイフィーまさおは、何がいけなかったのだろうか?




どうコミュニケーションをとれば、娘も嫁も驚かないですんだだろうか?




読者のみなさんが、ダッチワイフィーまさおの立場なら、どうしただろうか?




必ず、考えてみてほしい。




ダッチワイフィーまさおは、自分の嫁と娘によって、無残にも殺されてしまったが、死んだわけではなく、読者の心の中に生きているのだ。



もしも、読者が、ダッチワイフィーまさおのことを忘れてしまったら、その時、ダッチワイフィーまさおは、本当に死んだことになるのかもしれない。




だから、時々でいい。




ダッチワイフィーまさおのことを思い出してほしい。






命は、宝物だ。





(完)










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営業電話の達人への道 ハクション中西 @hakushon25

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