番外編 QK(素数大富豪)の正式ルール

伊緒菜「それじゃ、改めて素数大富豪、通称QKの正式ルールを説明するわね」


みぞれ「お願いします」


伊緒菜「QKはトランプを使ったゲームよ。基本ルールは、『相手より強いカードを出して、最初に手札をなくした人が勝ち。ただし、出せるのは原則、素数のみ』」


みぞれ「カードの強さは、数の大小で決まるんですよね」


伊緒菜「そう。大きい数ほど強いわ。普通の大富豪だとKにAが勝ったりするけど、QKでは純粋に数の大小で強弱が決まる」


みぞれ「素数しか出せないとすると、出せるカードに限りがありますよね」


伊緒菜「そう。そこで、複数枚並べて大きな素数を作ることができる。例えば10とエースを並べて『101』としたり、クイーンとキングを並べて『1213』としたりできる」


みぞれ「カードの数を並べて読むんですね」


伊緒菜「そう、足すんじゃないからね」


みぞれ「そして、Aは1、Jは11、Qは12、Kは13と読む」


伊緒菜「ジョーカーは、0から13の好きな数として使える。ただし、一枚出しのときは無条件で最強のカードとして扱うわ。ちなみに、QKで使用するジョーカーは二枚よ」


みぞれ「一度に出せるカードの枚数には、制限があるんですよね」


伊緒菜「前の人が出したのと、同じ枚数でないといけないわ。ただし、自分が親のときは、好きな枚数で出せる。だからいかにして親になるかが、勝負のポイントになるわね」


みぞれ「枚数を決められる方が有利ってことですね」


伊緒菜「ゲームの基本的な流れは、①親が何枚かのカードを出す、②次の人が同じ枚数でより強いカードを出す、③全員が出せなくなる(パスする)までそれを繰り返す、④全員がパスしたら場を流し、最後に出した人が次の親になる、という四ステップよ。これを繰り返して、手札をゼロ枚にするのが目的のゲームね」


みぞれ「自分の手番のときにできることが多いんですよね」


伊緒菜「そう。QKではプレイヤーの手札のほかに、山札が存在する。自分の手番のときは、①パスする、②カードを出す、③山札から一枚引いてパスする、④山札から一枚引いてカードを出す、の四通りの行動ができるわ」


みぞれ「パスは、いつでもしていいんですか」


伊緒菜「ええ、もちろん。パスしても、山札から一枚引くなどのペナルティは一切ないわ」


みぞれ「山札山札と言ってますが、最初にプレイヤーへ配る枚数は何枚なんですか?」


伊緒菜「何枚でもいいけど、七枚か十一枚でやることが多いわね。これはまた今度、本編で触れる予定よ」


みぞれ「本編?」


伊緒菜「メタ発言はスルーしてね」


みぞれ「は、はい」


伊緒菜「普通の大富豪に『8切り』や『革命』があったように、素数大富豪にも特殊なカードの出し方が存在する。それがグロタンカットとラマヌジャン革命よ」


みぞれ「二枚出しで『57』を出すとグロタンカットになり、四枚出して『1729』を出すとラマヌジャン革命が起こるんですよね」


伊緒菜「グロタンカットが出ると場が強制的に流れて、グロタンカットした人が親になる。またラマヌジャン革命を起こすと、カードの強弱が逆転する。つまり、小さい数の方が強くなるの」


みぞれ「大きい素数ばかり覚えていてもダメってことですね」


伊緒菜「どうして『57』と『1729』なのかは、それぞれ本編の第2話と第12話を読んでね」


みぞれ「ええと」


伊緒菜「スルー」


みぞれ「はい」


伊緒菜「続いて合成数出しの説明をしましょう。QKでは単に素数を出すだけでなく、複数の素数を捨てて、その積を出すことができるわ。これが合成数出しよ」


みぞれ「つまり、2と3を捨てて、積の6を出すことができるんですね」


伊緒菜「出した数を合成数、捨てた素数を素因数と呼ぶわ。そして素因数には、指数を乗せることができる。例えば2と3を捨てて、8を出すことができる」


みぞれ「2の3乗が8だからですね」


伊緒菜「指数を含めた上で、さらにかけ算しても良い。2の3乗にさらに3をかけて、24として出すこともできる。ただ注意しなきゃいけないのは、素因数に使えるのは素数のみということ。例えば4を素因数として出すことはできない。4は素数じゃないからね。でも指数は合成数でも良いから、2の4乗とかはありね」


みぞれ「合成数出しの場合は、何枚出しの扱いになるんですか?」


伊緒菜「場に出たカードの枚数だけカウントするわ。だから、2の3乗で8を出した場合は、一枚出しの扱いになる」


みぞれ「一枚出しなのに三枚も消費できてお得ってことですね」


伊緒菜「さて、次はペナルティについてね。間違って素数でない数を出したり、合成数出しで計算を間違えたりした場合は、ペナルティを受けるわ。出した札を全部手札に戻して、さらに山札から出した枚数だけ引かないといけない」


みぞれ「三枚出しで間違えたら山札から三枚、四枚出しなら四枚引くんですね。合成数出しのときは?」


伊緒菜「素因数の枚数も含めて引くわ。だから、2と3を捨てて5を出した場合、山札から引くのは三枚よ」


みぞれ「たくさん出したら、その分たくさんリスクを負うんですね」


伊緒菜「だから例えば、初手で手札を全部出すという戦略も、まぁアリといえばアリだけど、普通はあまりやらないわね。リスクが高すぎるから」


みぞれ「確かに最初に全部出してそれが素数ならその時点で勝ちですけど、滅多に成功しなさそうですね」


伊緒菜「QKのルールは以上よ。

一、基本ルールは『相手と同じ枚数で、より大きい素数を出していき、最初に手札をなくした人の勝ち』。

二、複数枚のカードを並べると、その並べた数を出したことになる(n枚出し)。

三、自分の手番のときは、パスするか、カードを出せる。山札から一枚引いてから、これらの行動をしてもいい。

四、ジョーカーは0から13までの好きな数として使える。一枚出しなら最強のカードとなる。

五、57を出すと強制的に場が流れる(グロタンカット)。

六、1729を出すと数の強弱が逆転する(ラマヌジャン革命)。

七、素因数を捨てて、その積の合成数を出すことができる(合成数出し)。

八、出す数を間違えたときは、ペナルティとして、出した枚数だけ山札から引く」


みぞれ「素数大富豪という名前ですけど、元の大富豪とはだいぶ違うゲームになっていますね」


伊緒菜「そうね。だから正式名称は素数大富豪だけど、QKという呼び方を気に入っている人も多いわね。私もその一人だし。……さて、他の二人は、何か質問ある?」


津々実「じゃあいくつか細かいことを聞きたいんですが、ジョーカーは0として使っても良いんですよね」


伊緒菜「ええ」


津々実「それじゃ、例えばジョーカーを頭につけて、『017』として17を三枚出しする、とかはありなんですか?」


伊緒菜「それは明確に無しと決められているわ。一番上の桁は必ず1以上の数でないといけない決まりよ」


津々実「じゃあ、合成数出しで、指数に0や1を使うのは?」


伊緒菜「それも無しとされているわ。ただ、もちろんAとジョーカーを並べて『10』として使うことは認められているわ。『2』『A』『ジョーカー』で2の10乗としたりね」


津々実「グロタンカットの57や、ラマヌジャン革命の1729にジョーカーを使うのはありなんですか?」


伊緒菜「それはもちろんアリよ。例えば5とジョーカーを出して『57』とするのはOK。ただしジョーカーは0から13までの数にしかできないから、一枚だけ出して『1729』とか言うのは無しよ」


慧「私からも良いですか? 57も1729も合成数ですが、これらを合成数出ししても良いんでしょうか。例えば3と19を捨てて57を出したりとか」


伊緒菜「それは可能よ。ただしその場合、それぞれの特殊効果は発動しないわ。つまり、3と19を捨てて57を出しても、グロタンカットにはならないってことね」


慧「山札がなくなった場合、ペナルティはどうなるんですか?」


伊緒菜「その場合は、『ペナルティの枚数だけ、相手がカードを捨てる』というルールよ。そして捨てられたカードは、即座に山札となる」


慧「一枚引きたいときに、山札がない場合は?」


伊緒菜「それは残念だけど、諦めてもらうわ」


津々実「そういえば、場から流されたカードは、山札に戻すんですか?」


伊緒菜「ええ。流した順番通りに、山札の一番下に入れるルールよ」


みぞれ「上がり方の禁じ手はあるんですか? 例えば普通の大富豪だと、ジョーカー上りや8切り上りが禁じられているルールもありますけど」


伊緒菜「それはないわ。最後にジョーカー一枚で上がっても良いし、グロタンカットで上がってもいい。革命上りも認められている。上がり方に禁じ手は一切存在しないわ」


慧「一枚出しでジョーカーが出された場合、それにカウンターする手段はあるんですか?」


伊緒菜「ないわ。ジョーカーは二枚あるけど、ジョーカーはジョーカーに勝てないルールだし、普通の大富豪みたいにスペードの3がジョーカーに勝つようなルールもない。だから誰かが一枚出しジョーカーを出したら、その時点で強制的に場を流すルールよ」


みぞれ「普通の大富豪には『イレブンバック』とか『縛り』とかありますけど、QKにはないんですか?」


伊緒菜「正式ルールにはないわね。ただローカルルールとして、『双子素数縛り』とかはあるみたいね」


みぞれ「トランプにはスート(マーク)がありますけど、QKではそれは一切関係しないんですね」


伊緒菜「そうね。それを使うようなローカルルールを考えてもいいけど、少なくとも正式ルールでは使わないわ」


津々実「最後に基本的な質問ですけど、これは普通のトランプでやるゲームなんですよね?」


伊緒菜「ええ。世の中には『素数トンランプ』とかいうものがあるらしいけど、QKで使うのは百均でも売ってるようなごく普通のトランプよ」


津々実「プレイ人数は、何人なんですか?」


伊緒菜「二人以上、六人以下くらいかな。トランプはジョーカー二枚含めても五十四枚しかないから、あんまり大人数でやると山札がなくなるわね。ちなみに正式ルールじゃないけど、どうしても大人数でやりたいときは、トランプを二組以上用意するという手があるわ」


津々実「トランプが増えても、ゲーム自体はできるんですね」


伊緒菜「何人でやっても楽しいけど、私がオススメするのは二人プレイね。戦略性が一番高くなるような気がするわ」


みぞれ「それにしても、難しいゲームですよね。何かうまくなるコツはあるんですか?」


伊緒菜「それは今後、本編で少しずつ解説していくから、気になる人はぜひ本編を読んでね」


みぞれ「ええと」


伊緒菜「スルー」


みぞれ「はい」

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