第4話 海と夜空

「今日は、バス停に行こうと思う」

「バス停って?」

「バスが来るのを待つところだよ」

「面白い?」

「うん。バスに乗って海に行ってみよう」


「…おはよう、紺」

「おはよう」


 今日は少し起きるのが遅い。だから、今日は少し長い夢を見ていたのだろう。

 ということは今日は海に行っていた夢だったのかな。


「紺、今日は海に行こう」

「分かった」


 僕は海が大好きだ。女の子はいつもと変わらない顔をしているが、僕はとても笑顔だと思う。それぐらい海が好きだ。

 女の子も海が好きだって言っていた。

 あいつがいたころはもっと笑って海を見ていたと思う。


「紺は、どうして海がすきなの?」

「きらきらしていて、夜空の星を集めたみたいだから」

「…そうなの」

「うん」


 夜の空もたまに二人で見ていたらしい。僕も見る。けれど、二人が見ていた空はどんなだったのか、女の子に聞いてみた。


「明るくて、きらきらしていたわ。涙で見えなくするのはもったいないってよく言われていたの」


 とても悲しそうな顔をして話すから、僕が泣いてしまった。

 そして、いつも女の子は困ったように少し笑ってくれる。僕は夜空も好きだ。女の子が笑ってくれたから。夜空が好きだ。


 これは、あいつにもない。僕とあの子の思い出。


 ああ、今日も夜空がきれいだな。

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