第4話 海と夜空
「今日は、バス停に行こうと思う」
「バス停って?」
「バスが来るのを待つところだよ」
「面白い?」
「うん。バスに乗って海に行ってみよう」
「…おはよう、紺」
「おはよう」
今日は少し起きるのが遅い。だから、今日は少し長い夢を見ていたのだろう。
ということは今日は海に行っていた夢だったのかな。
「紺、今日は海に行こう」
「分かった」
僕は海が大好きだ。女の子はいつもと変わらない顔をしているが、僕はとても笑顔だと思う。それぐらい海が好きだ。
女の子も海が好きだって言っていた。
あいつがいたころはもっと笑って海を見ていたと思う。
「紺は、どうして海がすきなの?」
「きらきらしていて、夜空の星を集めたみたいだから」
「…そうなの」
「うん」
夜の空もたまに二人で見ていたらしい。僕も見る。けれど、二人が見ていた空はどんなだったのか、女の子に聞いてみた。
「明るくて、きらきらしていたわ。涙で見えなくするのはもったいないってよく言われていたの」
とても悲しそうな顔をして話すから、僕が泣いてしまった。
そして、いつも女の子は困ったように少し笑ってくれる。僕は夜空も好きだ。女の子が笑ってくれたから。夜空が好きだ。
これは、あいつにもない。僕とあの子の思い出。
ああ、今日も夜空がきれいだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます