28 第三部 炎の魔人



 レミィを撃つことはできなかった。

 撃たなければあいつが苦しい思いをすると分かっていても、守りたい人間を自分の手で殺してしまう事に耐えられなかったのだ。


 遠ざかっていくレミィの姿を見つめながら倒れていると、目の前が赤く燃え上がった。


 炎だ。

 触れれば無事では済まない様な真っ赤な炎が、目の前の道を赤く燃え上がらせたのだった。


 ……一瞬前までそこにいた全ての人間を飲み込んで。

 レミィも燃やし尽くして。


「……っ」


 炎は、消えない。

 消えることなくその場で燃え盛り続ける。


 その中に、人影の様な物が見えた。


「ヨクモ……、アノコタチヲ、コロシタナ……」


 地獄の底から響いてきたかのような怨嗟の声が聞こえて来て、人影がこちらへと近づいてくる。


「アタシノダイジナ、コドモタチヲ……」


 炎がアスウェルの下へ迫る。

 熱がこちらへと押し寄せてくる。


 近づいてきた人影がはっきりと見える。


 いつもは頭の片側で結んでいる緑の髪がほどけて、黒い煤によごれている。

 踊り子の意匠は誰の血か分からないがところどころ、赤黒く染まっていた。


「キエテ、ナクナレ」


 その人物の正体に気づいた瞬間アスウェルは、迫りくる炎の波に飲み込まれていった。











 ロード機能を使いますか?

 一つ前のセーブ地点へと戻ります。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881718998/episodes/1177354054882740807


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る