「かくれんぼ」をしよー

@TTT

「かくれんぼ」をしよー

「余ったのです」


「余りましたね」


 テーブルにはこんもりと山がひとつ。


「ただ配るだけでは面白くないのです」


「では、どうするのですか、博士?」


 コノハ博士は偉そうに答えました。


「かくれんぼ大会で決めるのです」





「というわけなので」


「すごーい。楽しそー」


 サーバルはぴょんぴょん跳ねています。


「この戦い、勝つのはアライさんなのだ。ジャパリまんをたくさん食べるのだ!」


「頑張ろうね~、アライさ~ん」


「私達も参加するわよ」


「ギンギツネ、ボクも出たい。ジャパリまんの山、欲しい」


「あんた昨日遅くまでゲームしてたでしょ。大丈夫なの?」




「あの~」


「なんですか? かばん」


「誰が見つける役なんですか?」


 かばんの鋭い指摘にみんながハッとなりましたが、博士は自信満々に言いました。


「もちろん、考えてあるのです。我々は賢いので」


「賢いので」


「かばんが決めるのです」


「決めるのです」


「えっと、ぼくが決めていいんですか?」


 かばんは不安げな表情です。


「良いのです。我々が許可するのです」


「許すのです」


「わかりました。…………こうしましょう」


 かばんはみんなに説明しました――。





「この名探偵アミメキリンの圧倒的な推理力を発揮する時が来ましたよ、先生!」


「わたしもくじ引きで決める、に賛成だ」


「先生!?」


「くじ引き、で問題ないのです」


「ないです」


「じゃあ決まりだね。えっと……」


「くじ引きで見つける役を決めて、それ以外の人は隠れるんだよ。サーバルちゃん」


 よくわかってない顔をしているサーバルにかばんが説明します。




 即席で作った葉っぱのくじを参加するフレンズが順番に引きました。


「誰が見つける役になりましたか?」


 きょろきょろするフレンズたち。


「せ、拙者でござるよ」


 パンサーカメレオンが手を挙げます。その手には“ほらーたんていぎろぎろ”のイラストが描かれてた葉っぱがありました。アミメキリンは悔しげな表情です。


「隠れるのは得意でござるが……」


「大丈夫だよ。隠れるのが得意ってことは、見つけるのも上手かもしれないよ」


 サーバルが励まします。


「では始めるのです」


「です」


「じゅう、きゅう、はちーー」


 博士たちの合図を聞いてパンサーカメレオンが数え始めます。


「わーい、隠れろー」





「ここなら見つからないのだ。アライさんは天才なのだ」


「横になれば外からも見えないねー」


 アライさんたちは観覧車の中に隠れるようです。




「先生! どこに隠れましょう」


「そうだな……あのコーヒーカップの中はどうだろう。屈めば外からは見えないはずだ」


「名案です。先生」




「ねぇ、キタキツネ。ここ、外から丸見えだと思うんだけど」


 ギンギツネたちはメリーゴーランドの馬車の中にいました。


「ここ落ち着くんだよねぇ……うん……」



 

「とりあえず、あの岩の陰に隠れるわよ」


 PPPたち五人が少し遠くにある岩まで走っていきます。




「私たちはどうしよっか」


「あの草むらはどう?」


 サーバルたちは草むらに身を潜めます。




「我々は高みの見物なのです」


「まさか飛んでいるとは思わないでしょうね」




「みんなぁ~頑張ってぇねぇ~」


 参加しないアルパカや他のフレンズは紅茶を飲みながら観戦です。





「探し始めるでござるよー」


 数え終わったパンサーカメレオンがゆうえんちを探索します。




 走っていたPPPはぎりぎりで岩の陰に入りました。


「よし、これでジャパリまんは私達のものね」


「そうだな」


「そうですね。プリンセスさん」


「あれフルルは?」


 フンボルトペンギンだけがいません。


「はやいよぉー」


 遅れていたフンボルトペンギンが岩の陰に飛び込みます。


「あっ」


「おっと」


 列になっていたPPPは順に倒れ込んで――。


「あっ! PPPの皆さんを発見したでござる」


 五人全員、見つかってしまいました。


「もう~、この子ったら……」


 キングペンギンは頭を抱えました。




「ねぇキタキツネ。やっぱりここ、外からまる見えだと思うんだけど……ねぇ聞いてるの?」


「……お腹ぁいっぱい…………」


 キタキツネは寝ています。


「もー、だから早く寝なさいって言ったでしょ!」


「ギンキツネ殿、見つけたでござるよ」


「しまった!」


 そのまま寝ぼけてるキタキツネも見つかってしまいました。




「……アライさんは待ちくたびれたのだ。ちょっと様子を見るのだ」


 アライさんは観覧車から外を眺めます。


「お、カップにキリンが隠れているのだ。手を振るのだ」


「アライさ~ん、あんまりはしゃぐと見つかっちゃうんじゃないかなー」


 観覧車が一周して扉が開くとパンサーカメレオンが待ち構えてました。


「アライ殿。見つけたでござるよ」


「わわ、なんで見つかったのだ!」


「アライさ~ん。あれだけ騒いでいたら見つかるよー」


 フェネックは見つかっていませんでしたが、アライさんと一緒に出てきました。


 


「退屈ですね。先生」


「待つのも良いことだよ。作品のアイデアを考えるだってできる」


 隠れることに飽きはじめたアミメキリンが外をぼんやり眺めていると、観覧車から手を降っているアライさんが見えました。


「私の推理力から判断すると、これは危険を知らせる合図! 先生、ここは危険です。逃げましょう」


 早とちりしたアミメキリンは飛び出していきます。


「そういう遊びじゃないんだがー」


「大丈夫です。先生、周りには誰もいませんよ」


「そこのお二人、見付けたでござるよ!」


 突然パンサーカメレオンが出てきて二人はびっくり。


「ああああああああああああああああああああ」


「驚いたな」


 パンサーカメレオンが景色に同化して隠れていたのでした。




「ここなら見つからないです」

「そうですね、博士」


 慢心しきった博士たちに手を振るフレンズがいます。


「まさか……さすがの視力です」


「……なのです」


 パンサーカメレオンのところまで降りる博士たち。


「空を見上げたら博士たちが見えたでござるよ。なんで隠れなかったのでござるか?」


 パンサーカメレオンの質問。


「ハンデというやつです。我々は賢いので」


「賢いので」


 ちょっと悔しそうに博士たちは言いました。




「かばんちゃん、誰か近づいてくるよ」


 耳をぴこぴこさせるサーバル。なんだかそわそわしています。

「サーバルちゃん、じっとしてないと――」


「うみゃみゃああー!」


 つい飛び上がってしまったサーバル。パンサーカメレオンの背後に着地しました。


「今、サーバル殿の声が聞こえたような……?」


「サーバルちゃん!」


「お、かばん殿でござったか」


 草むらから出てきたかばんをパンサーカメレオンが見つけます。


「これで後はサーバル殿だけでござるよ、どこでござるかなぁ……」


 辺りを見回すパンサーカメレオン。


「ええ、私見つかってないの?」


 やってしまったと、石のようにじっとしていたサーバルが言いました。


「サーバル殿! いたでござるか」


「さっきからいたよー」


「拙者、動いてないものは苦手なのでござるよ」


「へぇー。あっこれ私が最後に見つかったんだよね」


「そうでござる。ジャパリまんはサーバル殿のものでござる」



 見つかった他のフレンズたちが集まってきました。


「おめでとうサーバルちゃん」


「意外なのです」


「やりますねぇ」


「うう、アライさんも食べたいだ。お腹が空いたのだ」


「ボクもー」


「大丈夫。大丈夫。カメレオンも他のみんなも一緒に食べようよ」


 結局、ジャパリまんは山分けされてみんなで美味しく頂きました。


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