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 ――その頃、“明智光秀は挙兵のために一旦坂本城に戻り準備を整え出立、丹波亀山城に入る。亀山城を出陣し、羽柴秀吉の毛利征伐(中国攻め)に向かう途中、沓掛で休息、重臣を集め反旗を翻した。”


「殿、どうされましたか」


「毛利征伐には向かわぬ。皆の者!敵は本能寺にあり!」


「な、なんと……!?」


 “雑兵達は君主織田信長討伐とは知らされず、織田信長の命で徳川家康を討伐するものと思っていた。”


「二手に別れ桂川を越え、本能寺を包囲せよ!」


「「おおー!」」


 夜明け未明、本能寺周辺を明智軍が包囲する。


「殿、本能寺には一体誰がいるのですか?」


「殿、我らの敵は誰でございますか?」


 光秀は雑兵の問いには一切答えず、無言で本能寺を見据えた。その気迫に満ちた眼差しに、重臣の誰もが息をのみ口を噤んだ。


 “明智軍は13000の軍勢、織田軍は僅か100の軍勢”。向かう相手が天下の武将織田信長であろうとも、力の差は歴然。


 勝敗は戦う前からわかっていたといっても過言ではない。


 まさに……

 合戦の火蓋は切られたのだ。



 ――あたしは夜通し馬を走らせ本能寺に向かう。


 美濃が光秀の謀反を食い止めてくれると信じていたあたしは、信長がすでにそのような事態に陥っているとは、想定外の出来事だった。


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