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「……紅!?これは……血迷うたか!?」
「……上様、一大事でございます。於濃の方様が……」
「帰蝶がどうしたのだ」
明智光秀が謀反を企み、帰蝶がそれを阻止するために男装し安土城を出たとは、信長には言えなかった。
もし言えば、信長は直ぐさま追っ手をやり帰蝶を捕らえ、光秀を討ち取るだろう。
あたしと美濃が現世より戦国の世にタイムスリップしたと告白しても、信じてはもらえない。
――あたしは……
どうすればいいの。
一体……
どうすれば……。
「紅、やっと女として生きる決心をしたのだな」
あたしは首を左右に振る。
「これは於濃の方様がなされたこと」
「帰蝶がそなたに?」
「於濃の方様は全てご存知だったのです。俺が女であることも、上様の寵愛を受けていることも。承知の上で、俺に女に戻るようにと仰せになりました」
「……そうか。気付いておったのか」
「はい。上様、中国遠征の出兵を最後とし、俺は女に戻ります。最後のお願いです。上洛する際は、おともさせて下さい」
「……紅」
信長はあたしを強く抱きしめた。
女の姿で信長に抱かれるのは、初めてだった。
「帰蝶はどこに行ったのだ」
信長の低い声に……
信長の怒りが伝わり、体が震えた。
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