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光秀を京都の御馬揃えの運営を任せたほどの重要な地位におきながら、その根も葉もない噂話に翻弄され、信長は再び鬼と化した。
光秀に対する怒りに満ちた目は、謀反を企んだ信勝を殺した時と同じ目をしている。
赤き血に染まった信長の、鬼のような形相が脳裏に蘇る。
このままではいけない。
信長をこれ以上怒らせてはいけない。
「上様がそのようなたわいない噂話に翻弄されるとは、何事ですか。明智光秀殿は上様に忠義を誓い、数々の功績を上げ尽力してこられました」
「紅は明智光秀の味方をするのか?わしと紅のことも単なる噂話ではない。本当のことだ。ならば帰蝶と明智光秀のことも真実であろう。いまだにわしの目を盗み情を通じておるとは。不義密通で死罪とならぬだけよいと思え」
「……それでは於濃の方様が。お願いです。この俺に免じて、重臣と争うことだけはお止め下さい。そのようなことをしても、天下統一を成すことはできませぬ」
「紅、そちも偉くなったものだ。このわしに指図するとはのう」
「上様……」
あたしはただ……
あなたに生きていて欲しいだけ。
『本能寺の変』の正確な年月日は記憶していないものの、信長と光秀の険悪な状況から、その日が近いことを予感し体の震えが止まらなかった。
――1582年(天正10年)
甲州征伐。
「
「父上、この信忠にお任せ下さい。必ずや武田氏一族を討ち取り勝利致します」
“信忠は武田領の攻略に連合軍を配置し、兵数10万の大軍で攻めるとの策略を練る”。連合軍の活躍により、織田軍は優位に立つ。
「上様、連合軍は武田側の城を次々と占領。本拠である甲府を占領し、
信忠や連合軍の功績に、信長は満足げにほくそ笑む。“武田氏一族はついに滅亡し、織田軍と武田軍の長き戦いは終結した。”
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