127
「紅と初めて逢った日も、寒き夜であったな」
「上様、覚えていて下さったのですか」
信長は口元を緩ませ、あたしを見つめた。
「紅は礼儀知らずのじゃじゃ馬であった」
「じゃじゃ馬とは……」
「男か女かもわからぬ、黒き
「……上様」
「その唇に、赤き
信長はそう囁きながら、あたしにキスをした。酒の味が口内に広がり、あたしの頬をほんのり赤く染めた。
16歳のあたしは、大人が大嫌いだった。
大人に反抗し、暴走族に入り総長となり、法に背き人を傷つけた。
言葉の暴力を、弱い母に浴びせ、1人で生きていけると強がっていた。
でも……
あたしは1人では生きられなかったよ。
この時代にタイムスリップしても、していなくても、あたしは1人では生きられなかった。
その証拠に、あたしはいまだに信長の庇護を受け生きている。
――母さん……
母さんに逢いたいよ。
「紅……」
重なる唇が、甘い水音を奏でる。
幸せであればあるほど、その甘い水音が、波紋を広げる破滅のカウントダウンに聞こえてならなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます