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――その時、突然襖が開いた。
そこには
「これは、これは……。明智殿が於濃の方様にお目通りしていると伺い、ご挨拶にと参上つかまつりましたが、お邪魔でしたな……」
「こ、これは違いまする。誤解されるでない!」
光秀は狼狽え、声を荒げた。
「明智殿ほどのお方が狼狽されるでない。上様のご正室であられる於濃の方様にそのような振る舞い、ご乱心にもほどがありまする。このことは上様には申しませぬゆえ、すぐにお引き取り下さい」
「わかり申した。於濃の方様、失礼つかまつりました。達者で過ごされよ」
光秀は顔を伏せ立ち上がり、私に視線を向けることなく立ち去った。
秀吉は私を見つめ不敵な笑みを浮かべた。悪意に満ちたその眼差しに、背筋も凍る。多恵が部屋に戻り、秀吉はそのまま無言で立ち去る。
「帰蝶様、どうされたのですか?羽柴殿と何やら揉め事でも?」
(多恵……。光秀殿と寄り添っていたところを羽柴殿に見られたのじゃ)
「なんと……!?」
(疾しいことはしておらぬ。光秀殿とお別れをしていただけじゃ。それなのに誤解を招いたようじゃ……)
「上様のお耳に入れば……恐ろしいことが起きましょう」
多恵の言葉に胸騒ぎがした。
光秀の言葉に嘘偽りはないはず。
私の軽はずみな行動が、光秀を窮地に追い込むことになるなんて……。
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