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救護所に
「殿!小谷城はさらに火の海。お市の方様と姫君を救い出さねばお命が……!」
信長は秀吉に冷たい視線を向けた。
「死にたい者は死なせておけばよい」
「殿!お市の方様は殿の妹君ではありませぬか。3人の姫君は織田の血を引く姫君であらせられますぞ!どうかご慈悲を!」
秀吉はお市の方と3人姫君を救うべく、必死に命乞いをした。
「紅が、お市とともに清洲城に戻ると言うのなら、お市の命を助けてやってもよい」
あたしが清洲城に戻ることが、お市の方の命を助ける交換条件……。
それならば……
致し方ない。
「わかりました。お市の方様と姫君とともに、必ずや清洲城に戻ります。殿!一刻も早い決断を!」
「皆の者!浅井長政、浅井久政の首を打ち取るのだ!
まだ幼き万福丸まで討ち取れとは……
信長はもはや正気の沙汰ではない。
目の前にいる信長は……
鬼だ……。
地獄絵図の中でメラメラと燃え盛る……
赤鬼だ……。
お市の方と3人の姫君(
“浅井長政と浅井久政は自害し、
あたしは信長との約束通り、お市の方と3人の姫君とともに清洲城へと帰還する。
信長は半月の間に、長島周辺の敵城を次々と落とし、その勢いは留まることはなかった。
◇
―清洲城―
(紅、よくぞご無事で。傷の具合は如何ですか?)
地獄のような戦場から帰還したあたしは、帰蝶の優しい笑みに荒んだ心が救われた。
「於濃の方様、無様な姿をお見せし、申し訳ございませぬ」
(何を申す。もう十分尽力されたではありませぬか)
帰蝶の優しい眼差しが、姉と重なる。
家族の元に帰ったような、あたたかな温もりに包まれ、合戦で疲れた身も心も穏やかになれた。
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