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――“信忠は江北攻めで初陣して以来、信長に従い石山合戦、伊勢長島攻め、長篠の戦いと各地を転戦する”。紗紅は信忠の口添えで、信長の反対を押し切り転戦に同行した。
光秀は私との秘め事を悟られまいと、信長の重臣として忠義を尽くした。心の中で信長に懺悔していたのかもしれない。
私は光秀と暮らしたあの月日を、後悔などしていない。
光秀は私を生き返らせてくれたのだ。
あの暴行事件で心は死に、その身を生かすためだけに呼吸をしていた私を、人として生き返らせてくれたのだ……。
女として息を吹き返し、愛されることの悦びを教えてくれたのは……あのお方なのだから……。
一生添い遂げることが出来なくても、私の愛する人はただ一人……。
あの穏やかな光秀が、信長に反旗を翻し謀反を起こすとは、到底思えなかった。
歴史書にもきっと誤りはある。
光秀が信長を裏切るなんて信じられない。
◇
――元号が元亀から天正へと変わり、もはや誰も信長の勢いを止めることは出来なかった。
信長は野望のためなら、兄弟をも殺め自害に追い込み、お市の方の嫁ぎ先である浅井長政をも執拗に攻めた。
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