紗紅side
70
「さむっ……」
早朝、身震いがし目覚めると、掛け布団がなく、乱れた寝間着姿のままだった。
「うわ、わわっ!?」
あたしは人の気配を感じ、枕元の刀を掴み飛び起きる。
「朝っぱらから騒々しいぞ。静かにせぬか」
「の、の、信長様!?」
「
信長に静かにしろと言われ、小声で問いかける。
「どうして、俺の布団で寝ておるのですか。昨夜は於濃の方様と寝所でおやすみになったはず」
「敵を欺くには、まず味方からと申すであろう。平手に『子をなす』と宣言したからには、何もせずすごすごと部屋に戻るわけにはいかないからな。紅、わしは寝所で帰蝶と夜を明かしたと、平手や侍女には申し伝えよ。よいな」
「だからって、俺の布団で寝なくても。於濃の方様の隣でやすめば宜しいではありませぬか」
あたしは寝相が悪い。
就寝中は気を抜いているし、爆睡していたため、寝間着の前は
まさか……
信長は、あたしが女だと気付いたのでは!?
「紅は、綺麗な肌をしておるな。脚に臑毛も生えておらぬとは。まるで女のようだ」
信長はあたしの脚に、すっと手を伸ばす。
「うわ、わ、信長様!俺の脚を見たのですか!人の布団に潜り込み、体を盗み見するとは、それが一国の殿様のすることですか」
「何を騒いでおるのだ。見たくて見たわけではない。乱れた寝姿ゆえ、薄明かりの中、目に入っただけだ」
胸に晒しは巻いてある。
だけど……。
信長に背を向け、胸元を確認し寝間着の乱れを直す。どうやら女だとバレてはいないようだ。
「信長様、差し出がましいようですが、どうして於濃の方様を抱かれないのですか?美しい於濃の方様のどこが気にいらないのか、俺にはさっぱりわかりませぬ」
信長は布団に横になったまま、あたしに視線を向けた。
信也……。
信長の眼差しと、記憶の中にある信也の眼差しが重なり、鼓動がトクンと跳ねた。
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