SHOCK 6

美濃Side

58

 長い時間駕籠に揺られ、尾張国の織田信長に輿入れした私は、祝言にも拘わらず、そこに信長の姿がないことに驚く。


 信長は尾張の大うつけであると事前に聞かされていたが、噂以上のお方かも知れない。祝言には斎藤道三をはじめ小見の方、媒人である明智光安、そして光秀や斎藤家の親族、家臣も同席していた。


 一向に姿を現さない信長に、両家のいさかいが起き、気が短い家臣が刀に手を掛ける。


 だが、斎藤道三と小見の方にしてみれば、帰蝶の身代わりである私を嫁がせ和睦を結ぶことが目的。下手に騒ぎ立て、私が身代わりだと知れることを恐れ、それ以上ことを荒立てることはない。


 私もじっと座ったまま、夫となる信長を待つ。この祝言を無事に終えることが、私に与えられたお役目なのだから。


 織田家の家臣平手政秀により、祝言は行われないまま、祝宴となると思われていたが、突如襖が開き信長が姿を現した。


 白い綿帽子で信長の姿は見えなかったけれど、身につけている着物は見えた。祝言なのに、正装もせず腰に刀を差した信長。


 やはり噂通りの人物。


 信長は怒ったように言葉を吐き捨て、私の隣に腰を下ろした。指先で顎を持ちあげ、私の顔を確認し一瞬目を見開いた。


 私が帰蝶ではないと気付いたのだろうか……。


 鼓動がトクトクと速まる。


 光秀の優しい眼差しとは異なり、信長は鋭い眼差しで私を見据えた。


 恐怖を感じたが、今日から私の夫となるお方だ。


 三三九度の盃を交わし、私達は偽りの夫婦となった。祝宴は深夜まで続き、信長は煽るように酒を飲んでいた。


 祝宴を終えた私は花嫁衣装を脱ぎ、薄化粧を施され白絹の寝間着を着用し、寝所に案内された。これから始まる夜の営みを思うと、恐怖から足は竦む。


 でも逃げることは出来ない。


 私は……

 帰蝶なのだから。

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