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城主は意を決したように、私を見据えた。
「そなたに頼みがある。そなたは我が姫、帰蝶に生き写しじゃ。帰蝶はそなたより年下ではあるが、尾張国の織田信秀の嫡男、信長と婚儀が整ったばかり。
だが、大病におかされ輿入れどころではない」
尾張国の……信長!?
「輿入れを断ると、織田のことだ。いらぬ詮索をし、黙ってはおるまい。和睦が成立したというに、婚儀を破談にするわけにもゆかぬ」
この城主が言っていることが本当であるならば、斎藤道三とは
尾張国の信長とは……
あの織田信長!?
ここは、死後の世界?
それとも、現実世界……!?
「明日をも知れぬ帰蝶を、大うつけと名高い信長の元に嫁がせるわけにはいかぬ。婚儀を延ばし帰蝶が回復したとて、この体では信長の正室は到底務まらぬだろう」
斎藤道三は私の顎を指先で持ち上げた。
「まことによく似ておる。素性もわからぬそなたの命を助ける代わりに、帰蝶の身代わりとなり信長の元に嫁いではくれぬか。1年婚儀を引き伸ばし、そなたを斎藤家の名に恥じぬ姫として指南致す。今宵よりそなたは帰蝶の影となるのだ」
この私が、帰蝶の身代わり!?
私は首を左右に振る。
私が帰蝶の身代わりとなり織田信長に嫁ぐなんて出来るはずはない。織田信長に私の素性が知れたら、きっとその場で殺されてしまうだろう。
「そなたの指南役は
小見もそれでよいな。この者が信長に嫁げば、帰蝶を織田にやらずともすむ。大切な娘を織田の人質にせずともよい。織田が裏切ることあらば、この者が信長の寝首を掻くことも出来るであろう」
城主の眼差しに、背筋がぞくっとした。
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