36
「暴れるなと申したであろう。貴様、我らの言葉がわかるのか?」
異人はわしを見据えたまま、コクンと頷いた。
「理解出来るのだな?貴様は何処から来た。南蛮か?」
「南蛮?日本人に決まってんだろ!ここは何処だよ!映画の撮影か!ふざけた真似しやがって、いい加減にしろ!」
「生意気な口がきけるではないか。映画の撮影とは何のことだ?そもそも映画とは何を意味する?みなは知っておるか?」
「さて、映画とは何ぞや。初めて耳にする言葉ございまする」
家臣は不思議そうに首を傾げる。
「そなたは黒き紅をさしておるな。女か?女ならば、わしが鳴かせてやろう」
男か女かわからぬ異人をからかうと、異人は
「お……俺は男だ!お前みたいな奴に抱かれてたまるか!」
「男とな。奇妙な
「俺は東京から来た」
「東京とな?はて、そのような国が日本国にあるのか?」
家臣に問うが、首を捻るばかりでこの男の言葉の意味が理解出来ない。
「信長様、この者をどうなさるおつもりで」
「異人の女ならば抱くもよしと思っておったが、男であるならばわしと勝負し、この信長を負かすことが出来たなら、家臣にしてやってもよい」
その場にいた者達が、一斉に声を上げる。
「な、なんと!このような素性も知れぬ野犬を家臣とな?信長様、戯れが過ぎまする」
「わしに勝てばの話だ。この信長に勝てるはずはない」
わしは奇妙な形をした男に、木刀を投げる。刀を鞘に収め、もう一本の木刀を肩に担ぎ裸足で庭先へと飛び出す。
薄らと雪の残る中庭。小雪が寒風に巻き上げられ庭を舞う。男は痛めた足を引き摺り、わしを睨みつけ木刀を構える。その様はまるで狂犬だ。
双方の木刀が、激しく音を鳴らし
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます