SHOCK 4

紗紅side

37

 ――信長様?


 年配の男性が、生意気な男をそう呼んだ。


 信長と呼ばれた男は、威張りくさっているが、まだ少年のようにも見える。


 一体、幾つなんだろう。


 テレビでも映画でもないとしたら、これは何なの?


 髷を結い、腰に刀を差した男達。

 女だとバレると、何をされるかわからない。


 ――「そなたは黒き紅をさしておるな。女か?女ならば、わしが鳴かせてやろう」


 鳴かせてやろう?

 ガキのくせに。

 あたしがお前を泣かせてやるよ。


 あたしは咄嗟に男だと嘘を吐き、自分の身を守るために性別を偽った。


 一刻も早く、このイカレタ男達から逃げ出したい。これが映画の撮影でないのなら、頭のおかしい連中に付き合っているほど、あたしは暇じゃない。


 美濃や仲間を早く捜さないと。


 月華に暴行され傷付いた体に追い打ちを掛けるように、倉庫崩落の衝撃で怪我を負った足はズキズキと痛み、歩く度にポタポタと血が滴り落ちた。


 ――「異人の女ならば抱くもよしと思っておったが、男であるならばわしと勝負し、この信長を負かすことが出来たなら、家臣にしてやってもよい」


 このあたしがコイツの家臣?

 それって、下僕げぼく?パシリッてこと?


 誰がこんな奴のパシリになんか、なるものか。


 畳の上に転がされた木刀を掴み、信長を追い庭に飛び出す。


 黒紅連合総長、斎藤紗紅。

 喧嘩には自信がある。

 こんな奴に負けたりはしない。


 痛む体を庇いながら、小雪の舞う庭で、あたしは信長との戦いに挑む。

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