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「あたしの彼氏が驚いてた。信也はもう恋人なんて作らないと思ってたって。あんなことがあったんだ。無理もねーけど。

 黒紅連合の総長と付き合うなんて、信也もやるね。けど、元恋人と同じ名前だなんて、微妙じゃね?しかも、紗紅と似てるって噂だよ」


 あたしが……

 元恋人と似てる?


 だから……

 あたしと付き合ったの?


 あたしは……

 信也の恋人なのかな?


 信也はあたしを抱きながら、亡くなった恋人の名前を呼んだ。あの時、口から無意識にこぼれ落ちた名は『紗紅』ではなく『咲』……。


 切ない声が……

 今も鼓膜から離れない。


 体が繋がっても、心は繋がっていない。


 それでもいいと思ったから、あたしは信也に抱かれたんだ。


 でも……

 なんかスッキリしない。


「どうしたの?紗紅」


「何でもねーよ。何かムシャクシャしねぇ?今夜ぶっ飛ばそうぜ」


「そうこなくっちゃ。でも、今夜は月華が埠頭で集会する日だよな。ヤバくね?」


「月華なんてカンケーねぇよ。あたしらはやりたいようにやる。公道は月華の所有物じゃねぇ」


  黒紅連合は数年前に出来たレディースで平均年齢16歳。まだメンバーも少ない。都内一の人数を誇り、この界隈で恐れられている月華とは比較にならない。


 でも今のあたしには、縄張りとか、他の族なんて関係ない。


 あたしは走りたい時に走る。

 月華も警察も怖くない。


 


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