18

「黒紅連合の総長は、そうでなくちゃね」


 あたしは3人とゲーセンに向かった。学校をサボった罪悪感なんてない。ただ仲間と一緒にいたいだけ。


 口煩い姉や臆病な母。ガミガミ怒鳴るだけのセンコー。ウザい大人達から逃れ、早く自由になりたい。


「紗紅、信也とうまくいってんの?」


「まぁね」


「いいなぁ。信也さ、昔、龍刃連合にいたらしいよ。知ってた?」


「うん、信也から聞いた」


「相当派手に暴れてたみたい。周囲から赤鬼って呼ばれていたらしいよ。今から想像つかないくらい、かなりの暴君だったみたいだね」


 赤鬼?暴君?

 まるで、織田信長みたい。


「手がつけれなかった信也が、運命の女と出逢って変わったんだって。あっ……こんな話しヤボだったね」


 喜与は申し訳なさそうに、ペロッと舌を出した。


「それって、さくって人でしょう」


「なーんだ。紗紅知ってたの?」


「信也から聞いたの。喜与、よく知ってるね」


「あたしのカレ、龍刃連合だから。信也の武勇伝とか、元恋人の事件とか、色々聞いてるんだ。信也は人望あったしリーダーシップもあった。恋人が死んで族を引退したけど、その時、後輩は皆男泣きして引き留めたらしいよ。けど信也の決心は変わらなかった。

今は真面目に働いているんでしょう?」


「うん」


 あたしの知らない信也を、喜与の彼氏は知っている。荒れていた信也を鎮めたのは、『咲』という名の恋人。その恋人の死は、龍刃連合にとってもそれほどまでに衝撃的な事件だった。


 どう足掻いても、あたしは元恋人には勝てない。


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