17
まるで足枷をされたような重い足を引き摺り、ダラダラと学校に向かう。駅前の自販機でたむろしていた数人の不良が振り返る。
「総長、おはようございます」
「喜与、那知、璃乃、こんなとこで何してんの?」
喜与は高校を中退し、今はアルバイト。
那知は定時制高校。璃乃は私立高校に在籍しているが、あたし同様サボりがち。
「外で総長なんて呼び方やめてよ。あたしら中学からのダチじゃん」
「黒紅連合の総長にタメ口なんて言えねーよ」
「つうか、言ってんじゃん」
「ほんまや」
3人はゲラゲラ笑ってる。
どうやら昨夜から連んで遊んでいたらしく、朝から絶好調のようだ。
「あはは、冗談だよ。紗紅は紗紅。総長になっても、あたしらのダチ。総長が制服着て真面目に学校だなんて、マジかよ」
「美濃が煩くてさ」
「優等生の姉ちゃんか。そんなのほっときなよ。紗紅、学校サボって一緒に遊ばね?制服なんて紗紅に似合わねーよ。ロッカーに特攻服隠してんじゃん。着替えろ」
「ばーか。朝っぱらから、特攻服なんて着れねーよ」
「あたし、ロッカーに私服あるよ。貸そうか」
「喜与の私服かよ。ダセー」
「制服で補導されるよりマシじゃね?」
「だよな」
あたしは駅のロッカーで喜与の私服を受け取り、トイレで着替え制服をコインロッカーに押し込む。腹ペコの喜与は、その隙にあたしの弁当を口の中に掻き込む。人目なんてお構いなしだ。
紫色のジャンパーの背中には黒い昇り龍の刺繍。赤いレザーのミニスカート、想像を遥かに超えるセンス、ダサ過ぎてこれを着るくらいなら裸の方がマシなくらい。
「メイクも持ってるよ」
「早く言えよな。素顔でこの服装は罰ゲームじゃん」
「罰ゲームはねぇーだろ」
ゲラゲラ笑いながら、駅のトイレでメイクし、あたしは唇に黒い口紅を塗る。
鏡の中のあたし。
アイラインでつり上がった目、桃色の唇が黒く染まり、さっきまでのあたしとは別人だ。
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