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 まるで足枷をされたような重い足を引き摺り、ダラダラと学校に向かう。駅前の自販機でたむろしていた数人の不良が振り返る。


「総長、おはようございます」


「喜与、那知、璃乃、こんなとこで何してんの?」


 山下喜与やましたきよ岸本那知きしもとなち三上璃乃みかみりの、3人は同じ暴走族に属している。


 喜与は高校を中退し、今はアルバイト。

 那知は定時制高校。璃乃は私立高校に在籍しているが、あたし同様サボりがち。


「外で総長なんて呼び方やめてよ。あたしら中学からのダチじゃん」


「黒紅連合の総長にタメ口なんて言えねーよ」


「つうか、言ってんじゃん」


「ほんまや」


 3人はゲラゲラ笑ってる。

 どうやら昨夜から連んで遊んでいたらしく、朝から絶好調のようだ。


「あはは、冗談だよ。紗紅は紗紅。総長になっても、あたしらのダチ。総長が制服着て真面目に学校だなんて、マジかよ」


「美濃が煩くてさ」


「優等生の姉ちゃんか。そんなのほっときなよ。紗紅、学校サボって一緒に遊ばね?制服なんて紗紅に似合わねーよ。ロッカーに特攻服隠してんじゃん。着替えろ」


「ばーか。朝っぱらから、特攻服なんて着れねーよ」


「あたし、ロッカーに私服あるよ。貸そうか」


「喜与の私服かよ。ダセー」


「制服で補導されるよりマシじゃね?」


「だよな」


 あたしは駅のロッカーで喜与の私服を受け取り、トイレで着替え制服をコインロッカーに押し込む。腹ペコの喜与は、その隙にあたしの弁当を口の中に掻き込む。人目なんてお構いなしだ。


 紫色のジャンパーの背中には黒い昇り龍の刺繍。赤いレザーのミニスカート、想像を遥かに超えるセンス、ダサ過ぎてこれを着るくらいなら裸の方がマシなくらい。


「メイクも持ってるよ」


「早く言えよな。素顔でこの服装は罰ゲームじゃん」


「罰ゲームはねぇーだろ」


 ゲラゲラ笑いながら、駅のトイレでメイクし、あたしは唇に黒い口紅を塗る。

 

 鏡の中のあたし。

 アイラインでつり上がった目、桃色の唇が黒く染まり、さっきまでのあたしとは別人だ。





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