16

 テーブルの上には、夜食のお皿とペットボトルがそのまま放置されている。


「ぎゃんぎゃん喚くなら、片付けてくれればいいのに」


 お皿を掴み部屋を出て、キッチンのシンクに置く。ダイニングテーブルにはトーストと目玉焼き。お皿の横にはいつものように1枚のメモ用紙。


【紗紅、遅刻しても学校には来なさいよ。】


 また姉だ。

 ていうか、マジでウザイ。


 あたしはメモ用紙を丸め、ゴミ箱に放り込む。ゴミ箱の中には丸まった数枚のメモ用紙が溜まっている。


 姉に行動を見張られているような気がして、苛ついたあたしはガシガシと頭を掻く。


 気分をスッキリさせるために浴室で頭からシャワーを浴び、胸の膨らみに残る赤いキスマークに気付く。


 ――『さ……く……』


 信也の苦悩に満ちた切ない声が鼓膜に蘇る。


 信也の過去を知り、触れてはいけない傷口に触れた気がして、心が燻っている。


 シャワーを浴びたあたしは制服に着がえる。淡い水色のブラウス、青と白のストライプのリボン。紺色のブレザーに紺色のプリーツスカート。ブラウスは3タイプあり、その日の気分で自由に選べるが、どこにでもあるようなありふれた制服。


 リボンをつける気にはならず、丸めて制服のポケットに突っ込む。


 この制服に、中学の時は憧れていた。

 受験に合格した時、母と姉はあたしよりも喜んでくれた。


 でも今は……

 あたしが問題を起こすたびに、母は泣き姉は謝罪する。あたしにその理由を聞いてはくれない。


 朝食を食べ時計に視線を向ける。午前10時過ぎ、弁当を学生鞄に突っ込み徐に家を出る。


 学校なんてかったるい。

 休みがちなあたしは、授業のスピードについていけない。


 入学した時から、ずっと落ちこぼれだ。

 こんなことなら、進学しなければよかったと、今更ながら後悔している。





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