11

 あたしは黒紅連合の総長になったばかり。対立する月華の総長と信也に、こんな過去があるなんて知らなかった。


 信也はあたしをベッドに押し倒した。

 ベッドがミシミシと軋む。小さなテーブルの上には2つのカップラーメンが仲良く並ぶ。


「信也……カップラーメン伸びちゃうよ」


「俺は、今、紗紅が抱きたい」


 さっきよりも激しいキスに、戸惑いながらも身を委ねる。


 信也をこんな風に駆り立てたのは、辛い過去を思い出したから……。


 まだ知り合ったばかりだけど、あたしはずっと前から信也のことを知っていたような気がする。


 出逢ったばかりのあたしたち……。

 でも、こうなることに抵抗はなかった。


 静かな室内で、唇が重なり合う度に小さな水音が漏れた。


 鼓膜に響く水音と、漏れる吐息に全身が熱を帯びる。信也はあたしにキスを繰り返し、洋服を脱がせ体を愛撫した。


「感じるままにもっと乱れろ」


 耳元で囁かれ、あたしは羞恥心を捨て本能のままに信也を受け入れる。


「……信也」


「さ……く……」


 あたしを抱きながら、『さく』と名を呼んだ信也。


 あたしは……

 信也に抱かれながら、閉じていた目を見開いた。


 信也はいま……

 あたしではなく、死んだ恋人を抱いているんだ。



 

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