10
信也の唇があたしの唇を塞いだ。
不意打ちのキスに、あたしは持っていた本を床に落とす。パラパラとページが捲れ織田信長の姿絵が現れる。
大きな手があたしの前髪を掻き上げ、息もつけないほどの激しいキスに動揺している。
「……っ、信也」
「ごめん。俺、暴走したみたいだな。カップラーメンしかないけど、食うか?」
信也はあたしから離れ、床に落ちた本を拾うと、本棚の上に無造作に置いた。
「……うん。ねぇ、信也。居酒屋でのことなんだけど。あざみって、
「ああ、そうだよ」
「
カップラーメンにお湯を注いでいた信也の眼差しが、一瞬鋭くなる。
カップラーメンの蓋をし、煙草ケースから煙草を取り出し口にくわえたが、火を点けずそのまま灰皿に置いた。
「
「……信也の彼女」
「
「……信也」
「
苦悩に満ちた顔……。
あたしは信也に抱き着く。
信也が抱えている心の闇。
その消せない過去に、今も苦しんでいる。
「だから……族を引退したのね」
「そうだよ。紗紅、お前ももうやめろ。もう誰も失いたくない」
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