織田信長……。


 この本、織田信長の本なんだ。


 日本の歴史に興味なんてない。

 織田信長の名前は知っているが、戦国武将の1人に過ぎない。


「俺、織田信長のこと調べてるんだ」


「名前そういえば似てるね。調べるためにこれだけの本を集めたの?」


「そうだよ。織田信長は尾張のうつけと呼ばれていたが、天下人になった。どうして本能寺で自害しなければいけなかったのか、どうして直臣が謀反を起こしたのか知りたくて」


「ふーん」


 ていうか、歴史に興味ないし。

うつけって何?漬け物かよ。それって美味しいの?


意味わかんない。


「その本、読みたければ貸してやるよ」


 歴史の本なんて、すでに拒絶反応……。

 難しい漢字が沢山並んでいて、そもそも漢字読めないし、頭が痛くなるだけだ。


 でも、この本を借りたらまたここに来れる。


「じゃあ、借りようかな」


 読む気もないくせに、信也に逢うための口実が欲しくて、興味のある振りをする。


「貸してやるよ。好きな本持って帰れ」


 今のあたしに帰る場所なんてない。いまさら、あの家には帰れないし、母や姉に頭を下げてまで帰りたくもない。


「あたし……帰るとこない」


「紗紅、俺の肉親はもういない。暴走族に入り暴れたこともあるけど、バイクをぶっ飛ばしても、空っぽの心は何も満たされない。命はひとつしかねぇんだ。紗紅もレディースなんかやめちまえ」


「あたしは……今さら抜けれねぇよ」


「俺が抜けろと言っても、出来ねぇのか」

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