第4話

 一同風呂を諦め、吟が持ち込んだ人生ゲームをちゃぶ台に広げる。

 人生ゲームはルーレットを回してコマを進めるだけのゲームではない。紙幣や特殊カードなどを用いる。カードを用いる以上俺の強運は適応されるため、大した人生を歩んでいないのに莫大な富を築き、例えビリでゴールにたどり着いても金額一位で勝ってしまう。

 こうして夜が更けていき、気がついたら撫子と薫は遊び疲れて寝入ってしまった。

俺と吟は人生ゲームを片付け、ちゃぶ台の足を畳む。布団を敷き撫子と薫を布団に寝かす。

「吟、電気消すぞ」

 俺が天井から垂れる照明の紐を掴む。

「ふふふ、なんだか本物の家族みたい」

 本物の家族、か。

吟と薫にとって日常的かもしれないが、俺たち兄妹にとって遠い昔の日常、非日常である。

「あたしらは宛ら夫婦ってところかな。あたしが奥さんで大和がお父さん」

「黙れ吟。シバくぞ」

 まあ、十中八九返り討ちにあうのは目に見えているけど。

 紐を引き照明を消して布団に横になる。撫子と薫を俺と吟で挟むように雑魚寝をする。

台風のピークが過ぎたのか、雨は止み静寂な夜に強風だけが残っていた。

「大和、起きてる?」

「……まだ横になったばかりなのだが」

 その突っ込みに吟は反応しなかった。

「大和……明日、誕生日だよね?」

「そうだよ」

 今更何を。お前が、吟が俺の誕生日を忘れたこと無い癖に。

「……いくつ?」

「お前と一つ違いだぞ。それくらい引き算しろよ。……十五だよ、十五歳」

「明日凄いプレゼントあげる。……放課後駅前で」

「毎年毎年ご苦労さま。いつも通り大したお返しはできないけどな」

 吟からの返事はなかった。

「吟?」

 上体を起こし暗闇の中、向こう側の吟を見る。

「……調子いい奴め」

 吟は寝入っていた。

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