星の少女①
不覚にも人の前で寝てしまった敗北感に苛まれ、姫輝から距離を置く。
面白半分で近付いてくる姫輝を避けながら、佐世保軍港事務室の中を移動し続ける。
約二百年以上も前の姿のままを保った建物は、劣化している箇所が一つも見当たらない。
二百年前の名残が残った建物は、帝国軍人が前から歩いてきても違和感が全く無い。
廊下を歩いていると、外の庭で少女がひとり空を見上げたまま突っ立っていた。
星空が広がる下で、少女はぴくりとも動かない。
廊下を見回すが、庭に出る扉が無い為窓から庭に出る。
庭一面に広がる芝を踏み鳴らして、少女に近付く。
「少し良いか」
少女に言葉を投げると、顔をこちらに向ける。
「どうぞ」
短く返事をして、再び空を見上げる。
「空に何かあるのか」
「星」
当然の答えが帰って来て空を見上げると、当たり前に星が敷き詰められている。
暫く眺めていると、隣で芝を踏む音がした。
目で少女を追っていくと、突然視界から消える。
少女が消えた地点に行くと、大きな深い穴が地面に空いていた。
その下で尻餅をついている少女は、服に付いた土を払う。
「手助けは必要か」
穴の下の少女に問い掛けると、小さく頷く。
とは言ってもロープなど持っていない、助け出すことが出来るものを探すが、周りには何も無い。
「ELIZA。ディストーションは何処にでも展開出来るのか」
視界に人型のELIZAが出てくる。
「出来ます」
「何個まで展開出来る」
「縦横三メートルです」
「穴の左右に細長くして階段状に展開……」
少女の落ちた穴の右に足を着くと、足下の芝が陥没する。
体が穴に引き摺り込まれて、約五メートル落下する。
「貴方まで落ちたのですか」
直ぐ隣の穴から抑揚の無い声が聞こえてきて、状況を言い当てられる。
「ELIZA。足下にディストーションを展開、跳躍するからディストーションを同時に上げろ」
底に落ちていたロープを持って、穴から抜け出す。
「ディストーション解除します。彼女のデータが存在しました」
穴に落ちている少女のデータが表示され、ELIZAがその前に座る。
こてんと転がったELIZAは、出現させた布団にくるまる。
名前と所属、出身を確認して、穴の中を覗き込む。
「
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