二組織の対立①

突然のクイーンによる命令で日本に発ち、羽田空港の地面に足を付ける。

初めての日本に来て早々、俺は空港で質問攻めに受けていた。


原因は、持っていた銃や刃物のたぐいだった。

行政が政府である日本は、一般の国民が銃を持つのを許可しておらず、銃刀法とやらに引っかかるそうだ。


日本語を少しだけ喋れるから良かったが、喋ることが出来なければ即刻送り返されるだろう。

こう言う所は、全て自動翻訳されるASCが埋まっていない日本は、凄く不便だと感じさせられる。


「MI6。上の人間、そいつ分かる」


「現行犯なんだ、諦めなさい」


「日本の組織と連携しろって言われた、親睦を深めろっめ」


「分かったから、言い訳は辞めなさい」


何を説明しても、いつまで経ってもこの状態で、全く話が動く気配が無い。

昨日突然人の形をして現れたELIZAは、視界の端でうろちょろと走っている。


一昨日まで声だけだったが、本人曰く、この姿の方がキュートですから。らしい。

正直今は邪魔でしかない。てか消えろ。


「連絡が取れました、迎えの人は空港のエントランスで待っているみたいです」


「エントランス迎え居る、その人連れて来い」


警察官は疑いの目を向けながらも、無線を空港の職員と繋ぐ。

制府ではない日本は未だに無線を使っていて、少しだけ新鮮な光景を見る。


イギリスなど行政が制府の場合は、国民の中に機械を埋め込み、そちらで連絡を可能とする為、無線などの機械が必要無い。


「その人の特徴は?」


「データを事前に貰っています。特徴は黒い髪、長さはロング。性別は女性です。身長は182センチメートル、体重は……」


「辞めろ、この特徴で探してくれ」


「だそうだ、そっちは頼んだ、居なかったら連絡をくれ」


無線を切って椅子にドカッと座った警察官は、机の上にある没収した銃を弄る。

壁に向かって銃を構えた警察官は、引き金に指を掛けて撃つ真似をする。


背後のドアが3回ノックされると、手動の扉がゆっくりと開く。

少しだけ空いたドアから、部屋に顔だけを覗かせたのは、空港の職員である証の制服を着た女性だった。


「ひとり特徴と当てはまった人が居ましたが……」


「居たんなら連れて来てくれよ、一体どうしたんだ」


突然困った様に口篭る職員に、目の前の警察官が、また困った様に問い掛ける。


「それが……話し掛けただけで、凄く怖い人で」


「勘弁して下さいよ、ならこちらから行きます。ほら、立って」


机に置かれていた銃を全て回収して、コルトガバメントを左、ベレッタを右のホルスターに入れる。

最後にMP-433を腰に差して、脇のキャリーバッグを引く。


小さな部屋から20分ぶりに出てゲートを潜り、水平型エスカレーター、通称ムービングサイドウォークの上に乗ってエントランスに向かう。

暫く続いたムービングサイドウォークを下りて、エスカレーターで降りると、更に広いエントランスに到着する。


休息用や待機用の椅子が沢山並んでいる中で、一直線に歩いて行く職員の後ろを歩く。

広いエントランスの端に辿り着くと、先程の特徴と合致した女性が、気怠そうに壁にもたれ掛かっていた。


女性は接近する俺を含めた3人の姿を認めると、睨んで舌打ちをする。

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