時代トリップ少女

三雲 泣ユタ

第1話 全ての始まり

「みぃーん、みんみんみんみぃぃいん」


「みぃーん、みんみんみんみぃぃいん」


初夏だというのに蒸し暑い中、ミンミンゼミが鳴いていた。



「んぁー、うっさいなあーセミ!」


田舎に住む高校生の夏希は、五月蝿い蝉の音に苛立ち、髪をわしゃわしゃと掻いた。

もうすぐ3年生を迎えるというのに、学校生活の中でこれといった楽しい出来事はなく、委員会入らず、部活なんかさぼりっぱなし、係の仕事だけしっかりやるぐらいである。だが特別成績が悪い訳ではなかった。といっても、優等生という訳ではない。


「そんなイラついてっと、白髪増えるってのー。蝉ぐらいいいじゃねえか、鳴いてるだけだし」


夏希のすぐ隣の席で流行りのスマホをいじりながらだらだらと喋るのは猛。小学校から夏希と同じクラスで、家も近いので母親同士仲がいい。


夏希「鳴くだけが嫌なのよぉー!みんみんみんみんさー、虫なんだし普通に暮らしてりゃいいのにさー。あんたの赤い頭もどーにかしなさいよねー、暑苦しいのよ…」


すぐにぐちぐちと文句を言いながら力強くシャーペンでプリントの数学の式を解いていく。今日は月1回の定期小テストの日。その対策プリントは今日が提出日になっている。


猛「うわ、お前それまだ終わってねーの?まぁた山川先生に叱られるんだなー。先生がイケメンだからって叱られに行ってんのは知ってんだぞ?な、幸助。」


夏希「そ、そんなことないわよ…!」


高速ペン回しをしながらまだ三分の一も埋まっていない夏希のプリントを見ながら、もう1人の幼馴染みである幸助に話しかけた。机にもたれ掛かりながら、自分の鞄からプリントを出して幸助がやって来た。


幸助「そうか?山下先生って性格いいんだかわかんないしよ、夏希が先生好きになるとかはないだろうよ。…ほら、俺のやつ。早く終わらせろよ。」


夏希「おおー、ありがと幸助!やっぱ猛とは違うわー。」


猛「幸助と比べんじゃねーよ!あいつはお人好きなだけだっつーの!タイプが違うだろーが。」


夏希「あと頭の良さもねー。にひひひ」


そんな言い合いを続けていると、時計はもうホームルームの時間に迫っていた。小テストはホームルームの後すぐらしい。


夏希「うわああ、やばやば、もう始まっちゃうじゃん!」


猛「だから急げっつったんだろーが。帰りは幸助も一緒だからな、宜しく。」


夏希「ぁーい!」


返事を適当に返して猛が行ったのを確認して夏希はプリントを猛スピードで終わらせた。

時は飛んで放課後…。





夏希「はぁーおわったあー。」


「夏希、今日出欠表持ってってねー!」


夏希「あれ、私だっけー?わかったぁー…。」


先程去り際夏希にめんどくさい頼み事をしてきたのは実咲。学校で1番可愛いと人気の生徒会役員。勉強も出来て料理も出来る。まさに男子からの的である。


夏希「はぁーめんどくさぁー…。」


2階の職員室の前で担任の先生に出欠表を渡すと、さようならぁーと独り言のように呟くと、隣の倉庫の妙な光に気付き、恐る恐る、こっそりドアを開けてみた。


夏希「誰かいますかー?」


返事はなかった。勝手に入るのはいけない事だが、後で適当に言い訳でも作ればいいだろう。


夏希「早く返事をー……あれ、なんだこれ。」


光の正体は歴史書だった。だが、歴史書にそんな光が放たれるなんて非現実的な事はないはずだ。


恐る恐る開くとそこには…



夏希「うわああああ!」




つづく。

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時代トリップ少女 三雲 泣ユタ @iseuko29

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